11月号の特集は、「ワーク・フロム・ホームの生産性」となっています。特集は6本、翻訳論文が5本、そのほか、となっています。

 

★翻訳論文の5本目です。「トラウマを乗り越えて成長する方法」です。副題は「困難な状況からポジティブな変化を引き出す」となっています。

前文には「新型コロナウイルス感染症の大流行によって多くの命が奪われ、世界的な景気後退が各地に深刻な影響を及ぼしている。キャリアにおいてもプライベートにおいても、危機的な状況に陥るとネガティブな感情に支配されがちだが、そうした状況でも我々はポジティブな変化を遂げることができる。心理学の世界で「心的外傷後成長」と呼ばれる現象だ。

本稿では、成長を促進するための5つのステップを提示し、具体的にどのような成長の可能性があるかを例示する。」となっています。

では、本文です。

 

〇ネガティブな経験から成長へ向かう

・我々はネガティブな経験がきっかけとなり、個人的な強さの認識や新たな可能性の発掘、人間関係の改善、人生への感謝の深まり、精神的な成長などポジティブな変化が起きることを学んだ。

・新型コロナウイルス感染症の大流行がもたらした悲惨な状態にもかかわらず、多くの人々はその後、自己に役立つような成長を遂げることが予想できる。

・そしてリーダーもまた、他者の成長を支援することができるのだ。

・心的外傷後成長は、心理療法などの正式な治療を受けずとも自然に起こることが多いが、次の5つの方法で催促することができる。それは、「学習する」「感情を制御する」「開示する」「自分の言葉で語る」「奉仕する」である。

 

〇成長を促進させる5つのステップ

・学習する

・トラウマを経て成長するためには、まずトラウマとは何かを学ばなければならない。

・トラウマとは、中心的なビリーフ・システム(信念体系)の崩壊である。

・それまで当然だと思い込んできたことに疑問が呈されると、混乱して怖くなり、何度も同じことを考えて不安になる傾向がある。

・「それはなぜ起きたのか」「誰が管理していたのか」「私はいま、何をすべきなのか」と。

・自分は誰なのか、自分の周りにいるのはどんな人々なのか、我々が住むこの世界はどんな世界なのか、将来はどうなるのかを考え直さざるを得ない。

・それは極めてつらいことかもしれない。しかし、これが有意義な変化も導きうることが研究で示されている。

・その真実を学び、理解することから始めなければならない。

・目下の健康危機と経済危機をくぐり抜け、その影響はネガティブでもポジティブでもありうるとみずから認識し、他者にも認識を促すために何ができるかを考えてみよう。

・あなたもチームや組織のメンバーも、新たな環境下でどのように行動し、変革を行えばいいのか再考できることを忘れてはならない。

・感情を制御する

・何を学ぶのであれ、正しい心構えで臨まなければならない。そのための第一歩は、不安や罪悪感、怒りなどのネガティブな感情を管理することである。

・喪失や失敗、不確実性、最悪のシナリオに焦点を合わせる代わりに、数々の成功を思い出し、最善のシナリオを検討し、自分自身あるいは組織にはどんな資源があり、準備してきたのかを熟考し、個人として集団として自分に何ができるかを合理的に考えてみよう。

・感情が湧き出るのを意識したら、それを観察することにより、直接制御することができる。

 

・開示する

・あなたが同僚として、あるいはリーダーとして、パンデミックとその後の市場の変動、レイオフ、景気後退があなたの周囲の人々にどんな影響を与えたのか、いまも与え続けているかを理解するのは重要である。

 

・自分の言葉で語る

・次のステップは、トラウマとその後の我々の生活を自分の言葉で嘘偽りなく語ることにより、すでに起きてしまったことは受け入れて、今後の生活を有意義に思い描けるようにすることである。

 

・奉仕する

・人の役に立つ仕事を見つけると、トラウマ後の対応がうまくできる。自分と近い人々、より大きなコミュニティのメンバー、自分が遭遇した事件や事故と類似したものの犠牲者を助けることである。

 

〇乗り越えた後に得られるもの

・個人的な強さ

・自分がトラウマにどれほどうまく対処できたか、我ながら驚く人が多い。トラウマを下手ゆえに、将来の課題に取り組む準備が整う。

・それはチームや組織にも当てはまる。グループはしばしばこのような試練を乗り越えて、自分たちの集合的な知識やスキル、レジリエンス、成長の可能性をより明確に把握できるようになる。

 

・新たな可能性

・新たな現実により旧来の習慣や役割、戦略の続行が妨げられたら、状況に適応し、変革を起こさなければならない。

・リーダーは勇気と熱意をもって、新たな方向性を試し、変化を恐れるのではなく、進んで受け入れることを部下に示さなければならない。

 

・人間関係の改善

・これは、試練の時にお互いをサポートしあう必要性から導かれることが多い。

・トラウマは新たな人間関係を築くのに役立ち、すでにある人間関係へのありがたみを深めることもある。

・危機を一緒に乗り越えた経験を通じて、絆は強まる。

 

・人生への感謝

・恐れや喪失に直面すると、それまでは見過ごしていたが、危機後に残ったものに気づきやすくなる。

・リーダーは、生活と仕事の基本を大事にすべきだと認識することにより、手本を示すことができる。

・たとえば、「我々には偉大なチームがある」「顧客は我々の仕事を高く評価している」「我々はまだここで働き続けている全従業員のためにこの事業を存続させてきた」「我々の組織はより崇高なパーパスに向かって全力を尽くす」などである。「今朝のコーヒーはおいしいよね」とコメントするなど、ありきたりなことも重要である。

 

・精神的な成長

・これは、日常生活のルーチンでは見過ごされがちな「大いなる疑問」に思いを巡らすことから生じる。

・たとえば、「我々は倫理的にビジネスを行っているか」「提唱している原則を実践するのか」「貴重な時間と資源を使って何か別のことをすべきではないのか」「社会の改善に貢献するために何を行っているのか」「将来存続するための第一の動因は何か」だ。

・このような課題を取り上げてじっくり精査するためには、リーダーの勇気と先見の明が必要である。

・彼らは短期的な生き残りと長期的な成功に向けての体制を整えつつあった。どんな個人、チーム、組織にも同様のことができる。

 

・トラウマ後のプロセスを踏み、成長を促進する際には忍耐強くあらねばならない。

・この分野で実践家として働く我々は、タイミングが極めて重要であることを認識している。

・成長を強いることはできないし、急いてはならない。

・しかし、あなたや周囲の人々に心の準備ができたら、努力する価値はある。

・この困難な時代から、必ず何かポジティブなものを引き出すようにしよう。

・個人と成長と集団の成長の可能性を無駄にしてはならない。

 

(終わり)

11月号の特集は、「ワーク・フロム・ホームの生産性」となっています。特集は6本、翻訳論文が5本、そのほか、となっています。

 

★翻訳論文の4本目です。「ブランドを価格競争から守る4つのステップ」です。副題は「オンライン取引の急成長がもたらす弊害」となっています。

前文は、「オンライン取引は最安値をめぐる過度の競争によって、ブランドエクイティを損ない、ブランド保有企業のみならず、顧客や正規販売業者にとって不利益につながることが多い。これを防ぐには、ブランド保有企業が適切な価格についての方針を打ち出し、自社の商品を不正な割引価格で宣伝あるいは販売するのを禁じることだ。価格協定が独占禁止法によって規制される一方、米国やカナダでは合意あるいは「単独の方針」によって、価格設定を合法的に実施することができる。特に、ブランド保有企業が独自に価格を決定する単独の方針は有効であり、適切に実施できれば、強力な武器となる。」となっています。

では、本文です。

 

〇オンラインの安売り競争がもたらす不利益

・顧客がオンラインで取引しようとすることは、すべての人に有益であるように見える。

・問題は、オンラインの最安値との競争に苦戦し、顧客が求めるサービスや品揃えを削減せざるを得なくなる実店舗が多いことだ。

・米国とカナダで販売しているブランド保有企業には、心強い対抗策がある。

・自社製品を不正な割引価格で宣伝したり販売したりすることを禁じる方針を作成し、その実施を徹底させるのだ。

 

〇「単独の方針」を採用する

・米国とカナダでは、企業が価格設定プログラムを合法的に実施できる方法が2つある。「合意」(ブランド保有企業と再販業者が最低販売価格やプロモーション価格で合意する)と、「単独の方針」(ブランド保有企業が独自に価格を決定する)だ。

・価格方針には大きく2つのタイプがある。最低再販売(小売)価格(MPR)方針では、メーカー側がその製品の宣伝や販売に適用可能な最低価格を設定できる。

・最低広告価格(MAP)方針は広告対象品に限定される。

・ただし、米国では、ブランド保有企業と再販業者の間で販売価格の合意があると判断された場合、価格方針はやはり価格協定の警告を受け、独占禁止法による審査が行われることもある。

・ブランド保有企業はMRPやMAPを「設定」するのではなく、「提案」もしくは「推奨」する。再販業者はそれぞれの移行に沿って自由に価格を設定できるが、それが最低価格を下回れば、罰則として割引や手当、販売奨励金が受けられなくなり、そのブランドが扱えなくなることさえある。

・結局のところ、非正規の再販業者はこうしたインセンティブをうけておらず、そもそもそのブランドを打っている方がおかしいのだ。すでに裏ルートで入荷できているので、取引を打ち切られても痛くもかゆくもない。

 

〇価格方針を成功に導く4つのステップ

・価格方針プログラムを成功させるために欠かせない4つの主要なステップ、すなわち計画、起案、実行、監視と実施徹底を提示する。

・対照的に、監視と実施徹底は継続的な取り組みであり、外部のサービスを使って違反状況を知らせてもらったり、きちんと実施されるようサポートを受けたりすることが多い。

 

・計画

・一般的に、ブランドが魅力的であるほど、再販業者は客寄せのために値引きに走る傾向がある。

・このため、ブランド価値が高いと思われているほど、強力な価格方針を持つことの重要性を増す。

・ブランド保有企業は方針が妥当だと判断した後で、たとえコストがかかっても、ブランドエクイティを守り、多様な再販業者を維持するという長期目標を尊重するよう、主な内部ステークホルダーに徹底させなくてはならない。

・最後に、ブランド保有企業は、再販業者に方針を周知徹底させる担当者が、必要なツールや予算、やり抜く目標を持っていることを確認しておく必要がある。

 

・起案

・なかには、1ページほどの短いものもあるが、よくできている方針はより包括的で、当該ブランドに関する許容事項と禁止事項について、再販業者にとってわかりやすいガイダンスとなっている。

・どのタイプの方針であろうと、価格設定の制限事項に従わなければ常に違反に当たるが、クーポン、送料無料、バンドリングなど価格や広告に関連する活動の多くは許容されることもあるので、そのように対処すべきだろう。

・目的は、実際に適用することなく、方針を遵守してもらうことにある。ブランド保有企業は、再販業者が規則を破った場合にどうなるのか、「可能性」や「権利の留保」ではなく、具体的に明記した方がよい。

・最も効果的な方針は、違反者は関係を絶たれるリスクがあることを明確にしている。

・ブランド保有企業は、違反の許容回数に関係なく、初回でもそれ以降でも違反はすぐにとがめて、監視しているという明白なメッセージを送るのがよい。

・最後に、価格方針は明確にすべきだが、ブランド保有企業の自由を奪うほど過度に硬直的だったり、徹底したくなるほど煩雑すぎたりするのもよくない。

 

・実行

・前述のとおり、企業は単独の方針を活用すべきだが、注意しないと気付かないうちに、定価を設定しているように見える契約書を作成しがちだ。

・不注意な合意でつまずくリスクを減らすよい方法は、知識豊富な方針管理者を一人置き、全再販業者からの質問や意見の受付窓口とすることだ。

・このモデルは一貫したコミュニケーションや解釈、実施徹底に確実に役立つ一方で、たとえば営業担当者にはどうしても取引を持ち掛けたい得意先のバイヤーがいて、両者が一対一で議論する過程で、価格に関して問題含みの合意に至るような危険な状況を阻止することができる。

 

・監視と実施徹底

・規則通りに実施することは、コンプライアンスを確保するうえで重要となる。

・方針の違反を見つけた場合に、その再販業者に通知することでコンプライアンスが高まり、また予想通り、通知しない時には低下することが明らかになっている。

・明らかに、再販業者に価格方針を守らせるには、積極的な行動意思を示して、その脅しが嘘ではないと信じさせる必要がある。

・ブランド保有企業は必要に応じて、いつでも全対象者向けの方針を白紙に戻すとアナウンスできる。

・ブランド保有企業は一般的に顧客を選ぶことができ、自社製品を求めるすべての人に販売する義務はないため、このような選択的な仕切り直しが許されるのだ。

 

〇適切なバランスを取り戻す

・最終的に、価格方針はブランドエクイティの維持と改善に関わるものであり、そうした意思決定は企業価値と一致させなくてはならない。

・「適切な」最低価格を決めることは、ブランドのポジションニングと目標、再販業者が求めるマージン、競争環境を念頭に置いた、言わば芸術の域に達するような取り組みである。

・設定価格が高すぎれば売り上げが減少し、低すぎれば取りはぐれが生じ、不健全な割引を許せばブランドにとって大事な再販業者に被害を与えてしまう。

・オンライン商取引が成長し続けることは間違いない。

・少数の強力なオンライン再販業者が、ブランド保有企業と最終ユーザーとの関係をますます支配するようになり、ブランド保有企業と正規再販業者間にこれまで築かれてきた、相互に有益な提携関係を破壊する可能性もある。

・適切に策定され、適切に実施されている価格方針は、このバランスを取り戻し維持するのに役立つ。

 

(続く)

11月号の特集は、「ワーク・フロム・ホームの生産性」となっています。特集は6本、翻訳論文が5本、そのほか、となっています。

 

★翻訳論文の3本目です。「アジャイル組織を実現するリーダーシップ・チームの役割」です。副題は「経営幹部みずからコミットせよ」です。

 

〇アジャイルチームを増やすだけでは足りない

・「当社の事業のほぼすべてのセグメントにおいて、特定分野に特化した競合企業が出現しています。」「いずれも小規模な企業ですが、ピラニアのように食い付いてきます。」

・こうした新規参入企業は、販売店にとって好ましい製品やサービスを市場に投入していた。

・返品方針は寛大で、顧客はそれらを試してみる気になった。タイトな時間枠で迅速に納品されるため、販売店は倉庫保管費と在庫水準を低減できたのである。

・ジョンソンの会社はこの圧力にうまく対処できず、特にイノベーションのために、堅固な組織のサイロを打破して、組織横断で協働する必要がある場合には、いっそう苦戦を強いられた。

・企業が迅速に行動し、顧客体験を変革し、常に競合企業の先を行くためには、単に多くのアジャイルチームを構築するだけでは不十分だと考えるに至った。

 

〇トップが均衡を図る

・通常のアジャイルチームの仕事は、問題に対して収益性の高い革新的なソリューションを作り出すことだ。

・アジャイル・リーダーシップ・チームの仕事はこれとは異なる。

・アジャイルなシステム、つまりアジャイルな組織を構築し、運営することがその仕事である。

・アジャイルな組織の構築とは、あらゆる箇所で従来のオペレーションをアジャイルチームに置き換えることではない。

・アジャイルとは主としてイノベーションを目的としており、それに伴うテストや学習は、根幹を成すオペレーションプロセスを損なう可能性がある。

・アジャイルは広範な多様性の奨励やその場で即座に行う実験、意思決定の分散化などを特徴とするが、食品や医薬品の安全性、差別やハラスメントへの対策、会計基準、品質管理といった分野でこれらを実践した場合の悪影響を考えてみるとよい。

・このように、アジャイルな組織を構築することは、オペレーションの標準化とイノベーションの追求との間で適切な均衡を見つけることである。

・オペレーションに十分な注意を向けなければ、品質の低下やコストの上昇に見舞われ、顧客と事業の両方を損なうことになる。

・大企業では、均衡を保つことは簡単ではない。企業のオペレーションシステムは、たとえばパーパスや価値観、タレントエンジン、データおよびテクノロジーシステムなど、多くの要素から成り立っている。

・最適な均衡を見出すためにアジャイル。リーダーシップ・チームは通常、企業はどの程度アジャイルか、どの程度アジャイルであるべきか、正しい方向に適切なスピードで進んでいるか、進行を妨げている要因は何かを判定するのに役立つ、新たな指標の開発から着手する。

・アジャイル・リーダーシップ・チームは、それぞれの要素について最適な均衡達成を目指す活動の順位リストを作成する。

・このアジャイルプロセスはリーダーに、みずからのサイロを抜け出し、部門横断的集団として協働しながら障害を打破し、必要に応じて方向転換していくことを強いる。

・調和の取れていない要素をすべて再調整することで、徐々にアジャイルな組織のためのオペレーションシステムを作り上げていくことができる。

 

〇アジャイル・リーダーシップ・チーム

・アジャイルな組織のオペレーションシステム全体を構築し、管理し、どの要素が改善を必要としているかを診断し、それぞれの要素における最適な均衡をいつどのように達成するかを、探り出さなければならない。

・企業幹部は事業部門と機能部門の監督を続け、オペレーションがしっかりと公立より運営されるよう図らなければならない。

・「プロジェクト・フュージョン」は、大規模な顧客セグメントを標的に、市場シェアの大幅な拡大と数十億ドルの増収を目指すプロジェクトであった。

・一つは製品開発プロセスの改善に集中すること、もう一つは販売チャネルの拡大とサプライチェーンの改善の方法を検討すること。

・そして最後の一つは、認知度を高め、試用と購入を増やすためのマーケティングプログラムを研究することであった。

・これらの領域に関係する現在の活動をすべて特定し、最も革新的な活動を25のアジャイルチームによる活動に移し替える方法を決めた。

・アジャイルの原則とプラクティスを用いてそのすべてを調整し、活動の優先順位をつけ、柔軟なロードマップを作成した。

・当該イニシアティブに不可欠な専門知識を持つ事業部門から選ばれ、チームとの仕事と、顧客や上級幹部、事業マネジャーなど主要関係者との調整作業の間で、うまく自分の時間を配分することが求められる。

・過去における類似の「変革」プログラムは、比較的時間を提供しやすい二軍の人材が、フルタイムではなく一部の時間を投じて管理したが、そのようなプログラムはいつも失敗に終わっていた。

・そこで今回は、リーダーシップ・チームは、社内で最も称賛を集めているベストなマネジャー数人を専任として起用し、顧客から始めるというやり方で活動を設計することを決めた。

・作業の重複を最小限に抑え、コラボレーションを増やす目的で、アジャイルチームの活動を組織全体でさらに可視化できるソフトウェアの導入を急がせた。・リーダーシップ・チーム、そのほかの意思決定者、他のアジャイルチームに対して、このシステムを利用してみんなが何か、何をいつまでに完遂する予定か、チーム間にどのような相互依存があるかをリアルタイムで確認することを奨励した。

 

・CFO

・アジャイル・リーダーシップ・チームがイニシアティブのバックログを全社的に整理し、優先順位付けするのを助けるために、財務ツールを利用した。

・メリットが大きいという理由であれ、季節的チャンスあるいは競争上の優位性を無駄にするという理由であれ、いずれにせよ遅延コストの最も高いイニシアティブが、バックログの最上位に来ることになる。

・企業目標を再設定し、優先順位を決めなおした。

・以前は年に1度であったこれらのプロセスは、少なくとも四半期に一度と頻度を増す一方で、煩雑さは軽減した。

 

・CHRO

・CHROは主要なアジャイル・イニシアティブのメンバーに関して、新たなキャリアパスと適切な報酬体系を構築するとともに。彼らの前職位の補填プロセスを策定する必要があった。

・CHROは、テクノロジーおよび事業領域全体にわたる共通のアジャイルスキルを構築するために、雇用や研修、コーチングのプログラムを開発した。

・また、多くのアジャイル変革において混乱の源となりがちな、アジャイルチームとオペレーションマネジャーの間の決定権を明確にした。

 

・CIO

・CIOはアジャイル・リーダーシップ・チームに対するコーチの役割を担った。

・「準備完了」となるためにチームが行うべきは、顧客に関する重要なチャンスを特定する、具体的結果に責任を負う、複数分野に通じた専門家を専任で配属する、アジャイル的価値観の適用に尽力することであった。

 

・COO

・COOは最高統合責任者としての役割を担当し、アジャイルなイノベーションチームとオペレーション部門が協働してスケールアップするのに必要なプロセスを策定した。

 

CMO

・CMOの職務は、伝統的なブランディングや宣伝活動から、事業部門が戦略上の好機を特定し、優先順位付けするのを支援することまで多岐にわたる。

 

〇時間に関する問題

・すでに全力投入しているシニアリーダーにアジャイルの新たな課題と変革を担わせることは、あまりにも過剰な要求と思われる。

・アジャイルにより最高幹部は、みずからの活動の多くを部下に委譲できるようになり、幹部たちは自分でなければできない仕事に集中することが可能になる。

・経営幹部は、経験豊富なオペレーションマネジャーの仕事をレビューしたり、それにけちをつけることにまるまる一時間を割いたりするよりも、主な機能横断的イノベーションの開発に同じ時間を割いた方が、得られる価値がはるかに大きいことを理解したのである。

・アジャイルな組織への移行が終わることには、戦略に割く時間は4倍に増え、オペレーション管理に割く時間は半分以上に減っていたのである。

・リーダーが人材管理に割く時間は、わずかに増加した。

 

〇アジャイルに指揮を執る方法

・アジャイルとは、簡単に言うならばリーダーに謙虚さを要求するものだ。

・それは見せかけの謙虚さではなく、学習を加速させ、チームメンバーの自信を高めるような本物の謙虚さである。

・謙虚な人は、予測不可能なことを予測しようとしても無益であると認識し、代わりに迅速なフィードバック回路を構築してイニシアティブが順調に進むようにする。

・よいアイディアは高い職位の者だけではなく、だれでももたらしうることを理解している。

・アジャイル・リーダーシップ・チームはそのような態度を採用しなければならない。

 

・至るところで迅速なフィードバックを

・アジャイルなイノベーションチームは、進行の障害をできる限り早く突き止めて解決するフィードバック回路を構築するために、ショートスプリントと毎日のスタンドアップミーティングを活用することが知られている。

・同チームは意思決定のために毎日15分集まることが、指示の混乱や矛盾を避けるのに欠かせないことを理解している。

 

・指示からコーチングへ

・内政を始めたベッカーは、よりいっそうフィードバックを求めるようになった。

・最初は従業員たちも一時的な気まぐれにすぎないのではないかと疑ったが、ベッカーは徐々に信頼を築き、自分にフィードバックを提供してくれる人々を増やしていった。

・彼は自部門の人材と組織の潜在能力に集中することへと焦点を移した。

・何がうまくいかなかった理由に注目することをやめ、代わりに「どうすればできるか」といった肯定的な言葉を用い始めた。

 

・会議からワークセッションまで

・参加者は任意の話題について、場当たり的な順序で考えを話し合い、数時間の議論の後、参加者たちははっきりと賛成を表明するのだった。

・ジョンソンはできる限り会議を減らした。

・残った会議は、活動報告書のどうでもよい点を指摘する場から、問題解決の協働セッションへと変えた。

・意思決定において、いくつかの機能部門の間で難しいトレードオフを行う必要がある場合は、主な関係者全員を「スウォーミングセッション」に集め、数週間かけるのではなく、数時間で意思決定を行った。

・ジョンソンは参加者たちに対し、選択肢を提示し、トレードオフを評価し、よりよい選択肢を推奨し、背景にある前提を概説し、それらの前提をテストするのに必要な手段を描き出し、リーダーシップ・チームのメンバーに明確な行動項目を伝えるという、問題への対処方法を教えた。

・ジョンソンは、「誰が、何を、いつまでに」成し遂げるかを誰もが見られるようにするために、柔軟なロードマップの作製を従業員に促した。

・このような会議へのアプローチが、次第に組織全体に広まっていった。

 

・アジャイルチームはしばしば、アジャイルを大規模に展開する際に一番の障壁となるのはリーダー層と企業文化であると指摘する。

・大半のリーダーはアジャイルに敵対しているのではない。彼らはアジャイルを自分の役割にどのように適用すればよいか、アジャイルを強化する仕方で自らの役割を果たすためにはどうすればよいかを、理解していないだけなのだ。

・アジャイルなリーダーシップには、企業幹部が安定性と機敏性の両方をもたらす完全に均衡のとれたシステムを構築することが必要となる。事業を効率的に運営し、かつ効果的に変革するという、2つの活動をどちらも損なうことなく融合するようなシステムである。

・上級幹部は一つのアジャイルチームとして、この移行を管理することを学ぶ。

・これを予想可能な終着点や既定の完了日のあるプロジェクトではなく、継続的改善計画とみなす。

・したがって、すべての要素を順位付けして均衡を図り、アジャイルな行動のロールモデルを行うかが決定内容自体と同様に重要となることを認識する。

・それがすべてうまくいけば、事業成績は向上し、従業員の潜在力が解き放たれ、個々の職務に対する満足度が高まるのである。

 

(続く)