11月号の特集は、「ワーク・フロム・ホームの生産性」となっています。特集は6本、翻訳論文が5本、そのほか、となっています。

 

★翻訳論文の2本目です。「女性の昇進を阻む不都合な真実」です。副題は「「仕事と家庭の両立」は理由ではない」です。

前文には「職場の男女格差をなくすためにさまざまな取り組みが行われているが、現実には女性の昇進は停滞しがちだ。その理由として「女性にとって仕事と家庭の両立は困難だから」というもっともな理由で説明されることが多いが、実はもっと大きな問題-過重な労働を是とする文化-を覆い隠そうとする社会的・心理的防衛システムが働いているからだという。本稿では、女性の昇進を阻み、役割を固定化するこのシステムについて論じ、加入労働が当然だとする組織文化の再考を促している。」となっています。

では、本文です。

 

〇固定化される男女格差の正体

・地位の高い仕事には極端な長時間労働が求められるが、家庭を大切にする女性たちがそんなに時間を注ぎ込むことはできないため、結果としてキャリアが犠牲になってしまう。

・「仕事VS家庭のストーリー」

・このストーリーを信じるからと言って、それが真実だということにはならない。

・女性たちの出世が妨げられていたのは、仕事と家庭の相反する要求のバランスを取ることが難しいためではなかった。

・女性の出世が滞る理由は、男性と違ってパートタイム勤務や社内向けの役割への異動といった「調整措置」を取るよう促され、それによって出世コースから外れるためだった。

・真の原因は、男性と女性の両方に苦痛を与えて男女格差を固定化する、全体的な過重労働の文化だったのだ。

 

〇人々が語ること、データが示すこと

・仕事と家庭の両立をめぐる悩みは主に女性の問題だと考えていたが、多くの男性社員も悩んでいることが分かった。

・女性の昇進を妨げる真の原因は、同社の圧倒的な過重労働文化にあるということだ。

・不要な長時間労働は誰にとっても有害だが、女性の場合は男性と違って調整措置を取る者が多いために不当な不利益を被っており、これがキャリアに大きな代償を強いていると説明した。

・同社の経営陣は優秀で経験主義的で、善意があったにもかかわらず、データを否定し、仕事VS家庭のストーリーという経験主義的に疑問符がつく考え方に、反射的に固執した。

・彼らの思慮深さを考えると、どうして問題を長引かせることにしかならない「解決策」に頼り続けるかが謎だった。

・仕事VS家庭のストーリーがこれほど根強く浸透している理由は、おそらくこれが、長時間労働を求められて芽生える不穏な感情から女性と男性の両方を守る、精巧な社会的・心理的防衛システムを支えているからである。

 

〇無意識の心理的防衛と普遍的な概念

・性別による仕事と家庭の分担を助長する無意識の心理的防衛メカニズムとして表れた。

 

〇男性にとっての問題

・長時間労働の文化においては、常に臨戦態勢で全力を尽くす理想の労働者であることが、男性の第一アイデンティティである。

・仕事と無関係のアイデンティティは、それが個人的にどんなに有意義なものであっても、従属的で二次的な扱いになる。

・組織において、家族との時間が取れない悲しみを感じているのは女性たちだという設定を作り上げたのは、この男性だけではなかった。

・この心理的防衛策は、同社の多くの男性社員に充実した人生という幻想をもたらし、同社が尊ぶ熱心な労働者としてふるまうことを可能にした。

 

〇女性にとっての問題

・同社の女性社員の大半はプロフェッショナルとしての成功体験を持ち、女性は家庭にいるべきだという考え方に抵抗を感じていたため、このストレスは非常に深刻だった。

・向上心のあるプロフェッショナルとしてのアイデンティティを持ち続けたい女性がさらされる「圧力要因」だ。

 

〇「圧力要因」が及ぼす影響

・女性が直面する、特に強力な圧力要因の一つが、仕事と家庭のバランスを取るための調整措置である。

・パートタイム勤務や社内向けの役割への異動は、過重労働からの魅力的な脱出口になる。

・しかし、そうした行為は女性に不名誉なレッテルを貼り、出世コースから脱落させる。

・ある女性パートナーは、キャリアの書記にメンターから、君は人間関係づくりがうまいが、それに頼ると見込み客に「あまり切れ者ではない」という印象を与えかねないと警告されたと話した。つまり彼女のスキルは通用しなかったということだ。

・3つ目の圧力要因は子供のいる女性パートナーに対する評価の低さで、彼女たちの母親としての市政は厳しい批判を浴びていた。

・これらの圧力要因によって、職場は本当の居場所ではないと何度も思い知らされることを考えると、女性たちがキャリアについて曖昧な態度をとりがちなのも不思議ではない。

・もし調整措置を取ってほしいという家族の「誘因」に応じれば、仕事での立場が危うくなる。しかしプロフェッショナルとしての希望を優先して調整措置を拒めば、よい母親という立場が危うくなる。

・社会的防衛システムは密かに作動する。このシステムは、真の不安を引き起こす問題から視点を逸らすために、それより不安の小さい代替的な問題を提起して焦点をすり替える。

・筆者らのクライアント企業の場合、真の問題は極端な長時間労働であり、代替的な問題は女性を昇進させられないことだ。

・適正な労働時間がもたらす事業上のメリットを示す調査結果がさらに増えていけば、過酷なスケジュールを是とする常識に疑問を持つ雇用者も現れるだろう。

・もしこのような考え方が優勢になれば、その時こそ、女性も男性も家庭や仕事を犠牲にする必要性を感じなくなり、変化を求める声が高まり、女性が職場での男女平等を達成し始めるかもしれない。

 

(続く)

11月号の特集は、「ワーク・フロム・ホームの生産性」となっています。特集は6本、翻訳論文が5本、そのほか、となっています。

 

★特集は終了して、「Emotional Intelligrnce」の部分です。「優れたリーダーになる秘訣は、「いま、ここにいる」ことである」です。

では、本文です。

 

・リーダーシップと部下との関わりという点において、多国籍製薬会社の取締役の評価はいつも低かった。変わろうと努力しても、何も効果が出ないようだった。

・次第にフラストレーションが高まり、彼は直属の部下とどれだけの時間を過ごしているかの記録も取り始めた。

・事態が好転したのは、彼が毎日10分間のマインドフルネスのトレーニングをするようになってからだ。

・2~3か月すると部下は、彼が以前よりも関わりを持つようになってくれ、より仕事をしやすくなり、やる気を起こさせてくれると感じるようになった。

・それまでは、誰かと同じ部屋にいても、必ずしもその人のためにいたわけではなかったことを、いまでは彼も理解している。

・他の活動に没頭していたり、別のことを考えたりしていたのだ。

・そして何より、誰かが話しているときに彼が聞いていたのは、自分の「内なる声」だった。

・彼が心ここにあらずの状態だったため、部下は話を聞いてもらえないという不満を抱いていた。

・他の人と真に向き合い、有意義なつながりをつくるために、人は自分の内なる声を黙らせ、目の前の人に集中する必要がある。それには、よりマインドフルな状態で「いる」ことが役立つ。

・リーダーのマインドフルネスと、部下の幸福感とパフォーマンスとの間には、直接的な相関関係があることも研究から示唆されている。

・言い換えれば、リーダーが部下のために「いる」ほど、部下のパフォーマンスは高まるのだ。

・マインドフルネスは単なる選択肢の一つではないと知っている。それは必須なのだ。

・でも、もう一つの理由は、集中していなければ、つまり上の空であれば、他の人たちをがっかりさせるからです。

・マインドフルネスな状態でいるためには、自制心とスキルが必要である。

・多くの場合、必要なのはアクションではなく、聞く耳です。

・リーダーとしてのあなたの役割は、単に、部下がフラストレーションを吐き出したり、問題を整理したりするための安心できる空間を作り出すことだ。

・あなたが状況の解決や修正、操作、コントロールに踏み込む必要はない。あなたの存在そのものが、問題の解決に役立つのだ。

・このように「いる」ことで、問題を解決するのみならず、より深いつながりとかかわりと築くことができる。

・私たちが「いまここにいること」を体で表現すると、姿勢が変わる。

・背中を丸め、腕くみし、自らを文字通り閉じ込めるのではなく、もっと均衡が取れ、背筋を伸ばし、オープンで開放的な姿勢を取るようになる。腕組みをせずに、姿勢を正しくまっすぐに座るようになる。

・このような姿勢の変化は、私たちの考え方、行動の仕方、会話の仕方に影響を及ぼす。

・大胆な姿勢を取れば、自身のような資質を引き出せる。同様に、背筋を伸ばし、威厳に満ちた姿勢を取ることで、気付きや集中力、包容力、思いやりといった資質を引き出すことができる。

・姿勢を正し、心を開くと、私たちの脳の化学にプラスの影響を与える。それは、思考のプロセスがより高度に機能するための能力を培う。

・そして、高度な気づきがもたらす英知、より開かれた心がもたらす思いやり、背筋の伸びがもたらす自信を手に入れることができるのだ。

 

(続く)

11月号の特集は、「ワーク・フロム・ホームの生産性」となっています。特集は6本、翻訳論文が5本、そのほか、となっています。

 

★特集の6本目はインタビュー記事です。「日立は世界中の才能を束ねて「社会イノベーション」を実現する」です。副題は「ジョブ型雇用をなぜ推進するのか」です。

前文には「日立製作所は、政府が新型コロナ禍による緊急事態宣言を解除した後、国内大手企業としていち早く、在宅勤務を続ける方針を表明した。働き方の制約を取り払い、海外で主流のジョブ型人材マネジメントを推進するためだ。さらに今夏、約1兆円規模の買収を完了し、従業員数32万人のうち外国籍が過半を占め、名実ともにグローバル企業となった。日立はどこを目指すのか。社長在任7年目、人事改革と経営改革を進めてきた東原敏昭社長兼CEOを尋ねた。キーワードは、社会イノベーションである。」となっています。

では、本文です。

 

〇コロナ後も在宅勤務を続ける中で見えてきた課題とは何か

・いつ働いても、どこで働いても自由である「タイム・アンド・ロケーションフリー」は、我々の目指す働き方です。

・その不自由さも明らかになりました。大きく3つあります。

・一つが、ITインフラの問題です。通信速度やプリンターの配備等、自宅のIT環境の整備がまだまだ行き届いていません。

・次に決裁です。これは日本特有ですが、ハンコ文化がまだ残っています。

・最後が働く場所です。自宅で働くための部屋が整っていない家庭があります。

・ただ、時代に逆行するのではなく、将来そうなるであろうといわれていた社会に加速して向かうのではないでしょうか。

・そのドライバーとなるのがデジタル技術です。

・その大前提になるのが、ジョブ型の人材マネジメントです。

・社員のデーターベースをつくり、ジョブの重みをグレード付けして、評価の尺度もグローバルで共通化してきたということです。

・好きなポジションに応募できる社内公募制度やフリーエージェント(FA)制度、リファラル採用も取り入れています。

 

〇日立は家電メーカーではない社会イノベーションを起こす会社だ

・日立は製品を作るだけの会社ではないからです。創業以来、製品を開発し、納入してから、お客様と一緒に運用と制御まで行ってきました。

・これをオペレーショナルテクノロジー(OT)といいます。

・製品やITに強い会社はありますが、製品とITとOTすべてを一社でカバーしているところは世界でもあまりないと思います。

・社会インフラをデジタル・トランスフォーメーションするとは、こういうことです。

・我々は、それを「社会イノベーション事業」と呼んでおり、日立はこの領域でグローバルなリーダーになると考えています。

・社会イノベーション事業を実現するには、何が社会にとっての価値かを理解し、世界の市場や競合を踏まえて、顧客に適したソリューションを提供しなければなりません。

・各業界の業務知識を持つ者や、本質的な課題を発見できる者、デジタル技術のエキスパートやデータサイエンティストなどさまざまな人材です。

 

〇1兆円規模の買収を通して真のグローバル化を図る

・製品で勝負するならば、やはりスケールが大きくないと勝てない。

・鉄道事業というのは、日本では1000億円の事業規模でした。それを英国に展開し、さらにイタリアの会社を買収することで6000億円強の規模に拡大しました。

・これはインサイド・アウトのグローバル化です。

・今回の買収は、売上高約1兆円規模のABBのパワーグリッド事業を中に取り込んで日立を変えていく。アウトサイド・インのグローバル化です。これからは、黒船を知ったうえで、世界で事業に取り組むということです。

・前提として、会社の資産である社員が本当にワクワクする、働きたいと思うかどうかが重要です。そのためには、「衣食足りて礼節を知る」ということわざがあるように、まずは「その日暮らし」の経営から抜き出さなければなりません。

・2016年からCEOになって2018年までの3年間は、収益性やキャッシュにこだわっていました。

・営業利益率が8%、9%に届くところまで来て、ある程度の収益性が確保できました。

・その時何が起きたかというと、社員の意欲の低下です。

・上位下達で収益性を追い求めた結果、仕事の「やらされ感」が強くなってしまったのです。

・これはまずいなと思いました。より主体的にさまざまな課題を自分事としてとらえるにはどうすればよいか。

・それには、社員一人一人が社会との関係をどう感じているのかが大切だと分かりました。

 

〇「やらされ感」をぬぐうには、「利他」の精神を持ち、社会とのつながりを感じること

・自分の仕事がいかに社会に貢献しているのか、それを大切な人たちと共有できることが大事なのではいでしょうか。

・やらされ感を持たず、社員一人一人がいかに社会とのつながり、社会あるいは環境、経済への貢献を認識するかというのが大きなポイントです。

・日立としては、これはいわば「出島」戦略で、日立の社員に刺激を与える狙いもあります。

 

〇不透明な時代、創業理念に立ち戻り日立らしさを追求する

・世の中にはさまざまな社会問題があります。

・その課題を自分だったらこう解決するのだと考える人だと思います。

・本質的な課題を自分で考え、自分で解決していく。泥臭く、汗をかきながらやる姿勢に、私は日立らしさを感じます。

・日立は昔、野武士とも呼ばれていました。「俺がやってやる」という形ですべての課題を自分事として解決していくイメージがあったからです。

・グローバルな野武士として戦っていけるといいと思います。

 

(続く)