代数の父と呼ばれるディオファントス(紀元200年頃実在)の著書 『算術』 ("Arithmetica") を 1621年にパシェが翻訳をして、それをフェルマー(1607-1665)が読んで、「数論」を構築したとされている。オイラー(1707-1783)は、『アリトメチカ論文集』を出して、ガウス(1777-1855)は『アリトメチカ研究』(1801年)という本を書いた。 「アリトメチカ"Arithmetica"」は、現代の「数論」へ名を変えて、発展していった。

 

ガウスは、『アリトメチカ研究』の中で、次の命題を証明している。

 

<命題1>

-1は、4n+1型の素数の平方剰余であり、4n+3型の素数の平方非剰余である。

 

この命題の具体的例を示す。

 

4n+1  型の素数には、例えば、 5,13,17,…がある。

 

5の平方剰余を求めてみる。

 

1²=1

2²=4≡-1

3²=9≡4≡-1

4²=16≡1

よって、平方剰余の中に、-1が含まれている。

 

13の平方剰余を求めてみる。

1²=1

2²=4

3²=9

4²=16≡13

5²=25≡12≡-1

6²=36≡1

7²=49 ≡10

であるので、やはり、-1が平方剰余になっている。

 

17の場合

1²=1

2²=4

3²=9

4²=16≡-1

5²=25≡8

6²=36≡2

7²=49 ≡15

8²=64 ≡13

であるので、やはり、-1が平方剰余になっている。

 

 

 

次に、4n+3  型の素数 3,7,11,… を調べてみよう。

 

 

3の場合

1²=1

2²=4≡1 

平方剰余に 2≡-1はないので -1 は、平方非剰余である。

 

7の場合

1²=1

2²=4

3²=2

4²=2

平方剰余に6≡-1はないので、-1 は、平方非剰余である。

 

 

4n+1  型の素数でない数  例えば 9,21 について調べてみると

 

9の場合

1²=1

2²=4

3²=0

4²=16≡7

 

平方剰余に8≡-1はない。

 

 

21の場合

1²=1

2²=4

3²=9

4²=16

5²=25≡4

6²=36≡15

7²=49≡7

8²=64≡1

9²=81≡18

10²=100≡16

平方剰余に 21≡-1はない。

 

 

4n+3  型の素数でない数 15 について調べてみると

 

15の場合

1²=1

2²=4

3²=9

4²=16≡1

5²=25≡10

6²=36≡6

7²=49≡4

平方剰余に 14≡-1はない。

 

 

 

2を除く100までの24個の素数で

 

4n+1 型の素数は、5,13,17,29,37,41,53,61,73,89,97 で この素数のいずれにも -1が平方剰余として含まれている。一方で、4n+3型の素数の 3,7,11,19,23,31,43,47,59,67,71,79,83 には、平方剰余が -1になるものはない。

 

 

 

この<命題1>の証明は、「オイラーの基準」を使って簡単に証明できる。

 

 

「オイラーの規準」とは、以下のようなものである。

 

aがpの平方剰余ならば、a^(p-1)/2 ≡1  (mod p)

aがpの平方非剰余ならば、a^(p-1)/2 ≡-1  (mod p)

 

ルジャンドル記号 

 

 

            

を使えば

 

 

 

 

と表すことができる。

 

 

具体例で説明しよう。

 

<例>

a=2,  p=7  の場合

2は7の平方剰余であるので、 (2/7)=1 である。

 

2^(p-1)/2=2^(7-1)/2=2³=8≡1  (mod 7)

だから ※は、成り立つ。

 

 

a=3,  p=7  の場合

3は7の平方非剰余であるので、 (3/7)=-1

 

3^(p-1)/2=3^(7-1)/2=3³=27≡6≡-1  (mod 7)

だから ※は、成り立つ。

 

 

a=2, p=5 の場合

2は5の平方非剰余であるので、 (2/5)=-1

 

2^(p-1)/2=2^(5-1)/2=2²=4≡-1   (mod 5)

だから ※は、成り立つ。

 

 

a=4, p=11 の場合

4は11の平方剰余だから (4/11)=1

 

4^(p-1)/2=4^(11-1)/2=4⁵≡1   (mod 11)

だから ※は、成り立つ。

 

 

a=3, p=17の場合 

3は17の平方非剰余であるので、(3/7)=-1

 

3^(p-1)/2=3^(17-1)/2=3⁸≡16≡-1    (mod 17)

だから ※は、成り立つ。

 

 

 

オイラーの規準には、別な表現があるので、それを紹介しよう。

 

オイラーの規準は、

 

aがpの平方剰余ならば、a^(p-1)/2 ≡1  (mod p)

aがpの平方非剰余ならば、a^(p-1)/2 ≡-1  (mod p)

 

だった。

 

ここで 

(p-1)/2 =m とすると

p=2m+1 になるので、以下のように表現できる。

 

素数 p=2m+1 で割り切れない数aについて、

aᵐ ≡1 (mod  p) または、aᵐ ≡-1 (mod  p) になる。

 

 

この表現にそって具体例で確かめてみよう。

 

m=3  で  p=7 の場合

 

7 の平方剰余は、

1²=1

2²=4   

3²=9≡2

4²=16≡2  

5²=25≡4

6²=36≡1

より、1,2,4 である。非平方剰余は、3,5,6  である。

 

 

7でわれない数は、7n+1, 7n+2, 7n+3, 7n+4, 7n+5, 7n+6 である。

これらを a とすると   法を7 として

 

a³ =(7n+1)³≡1  

a³ =(7n+2)³≡2³=8≡1 

a³ =(7n+3)³≡3³=27≡6≡-1

a³ =(7n+4)³≡4³=64≡1

a³ =(7n+5)³≡5³=125≡6≡-1

a³ =(7n+6)³≡6³=216≡6≡-1

 

 

となって、確かに、aᵐ ≡±1  (mod  p) になっている。

 

 

 

話はもどして、<命題1>の証明をしよう。

 

オイラーの規準より

aがpの平方剰余ならば、a^(p-1)/2 ≡1  (mod p)

 

p=4n+1 の平方剰余の中に -1 が含まれているとき

a=-1  であるので、

 

(-1)^(p-1)/2  で p=4n+1 とすると

 

 (p-1)/2=4n/2=2n  より、   (-1)^(2n)=1 になり、-1は、4n+1型の素数の平方剰余であることがわかる。

 

 

オイラーの規準より

aがpの平方非剰余ならば、a^(p-1)/2 ≡-1  (mod p)

 

p=4n+3 の平方非剰余の中に -1 が含まれているとき

 

a=-1 であるので

 

(-1)^(p-1)/2  で p=4n+3 とすると

 

 (p-1)/2=(4n+2)/2=2n+1 より、(-1)^(2n+1)=-1 になり、-1は、4n+3型の素数の平方非剰余であることがわかる。