https://ameblo.jp/titchmarsh/entry-12620976558.html

で書いたペレリマン数列は、2乗するともとに戻る「天に向かって無限に続く数」

P=…57,423,423,230,896,109,004,106,619,977,392,256,259,918,212,890,625

Q=…42,576,576,769,103,890,995,893,380,022,607,743,740,081,787,109,376

であった。

 

この「天に向かって続く数」を考えてみよう。

 

私たちは、例えば、1/3 や、√2や、π という無限に小数点以下が続く数を知っている。

「天に向かって続く数」とは、いわば、その逆で、桁数が無限に大きくなっていく数のことである。

 

クルト・ヘンゼル(1861-1941)は、「無限m進数」というものを発見した。

 

通常の10進法で、例えば、123という3ケタに数は、

mod 10 で計算すると 123≡3 (mod 10) である。

この 3を123からひいて 123=120 

 

120を mod 100 で計算すると 120≡20 (mod 100) である。

この20を120からひいて 120-20=100 

 

100を mod 1000 で計算すると 100≡100  (mod 1000 )になる。

 

mod で計算した値の一番上の桁の数字を並べると123 となる。

 

 

これは当たり前であるが、この考えを負の数に適用してみよう。

 

 

通常の10進法で、例えば、-1 という負の数は、

mod 10 で計算すると -1≡9 (mod 10) である。

この 9を-1からひいて -1-9=-10

 

-10を mod 100 で計算すると -10≡90(mod 100) である。

この90を-10からひいて -10-90=-100 

 

-100を mod 1000 で計算すると -100≡900  (mod 1000 )になる。

この900を-100からひいて -100-900=-1000

 

 

-1000を mod 10000 で計算すると -1000≡9000  (mod 10000 )になる。

この9000を-1000からひいて -1000-9000=-10000

 

この操作は、永遠に続けることができる。

mod で計算した値の一番上の桁の数字を並べると […9999] という数になる。

 

このような操作を -1 の「無限10進数展開」という。

 

そこで、

-1=[…9999]₁₀

書く。

 

-1=…9999  と形式的に書き、両辺に1 をたすと

 

0=…0000  となる。

右辺は、天まで無限に続く数であるが、0の数も無限であると思われるので、左辺の0 と等しいと考えることができるかもしれない。

 

また、

-1=…9999  の両辺を9でわると

 

-1/9=…1111 

になる。

右辺は、1+10+100+1000+10000+… であるが、これは、1+10+10²+10³+…  であるので、

初項が1で公比が10の無限級数の和になっている。

 本来ならば |r|<1 で適用できない 無限級数の和の公式 a/(1-r)  に a=1, r=10 をいれると

 

1/(1-10)=-1/9 になるので、

-1/9=…1111  が形式的に等しい式であると考えることができる。

 

ヘンゼルは、この無限p進法展開を一般化し、以下のような補題をつくった。

 

 

このヘンゼルの補題にしたがって、

x+1≡0 (mod 10 ) から無限10進数をつくってみよう

 

F(x)=x+1=0 

 

x=9 で F(9)=10≡0 (mod 10)

b=9 で 9は、合同式 F(x)≡0 (mod 10) の解である.

また

F'(x)=1 であるので,

F'(9)=1 とm=10は互いに素である.

 

R₀≡9 (mod 10) を満たす.

 

 

x=99 で F(99)=99+1=100≡0 (mod 10)

x=999 で F(999)=999+1=1000≡0 (mod 100)

x=9999 で F(9999)=9999+1=1000≡0 (mod 1000)

だから,

R=…999999

が-1の無限10進法の表記である.

 

 

 

 

 

例題1 

3x-1≡0 (mod 10 ) から無限10進数をつくってみよう

 

3x-1=0

x=1/3 を無限10進数で表す 

 

 

F(x)=3x-1=0 

 

x=7 で F(7)=21-1=20≡0 (mod 10)

x=67で  F(67)=201-1=200≡0 (mod 100)

x=667で  F(667)=2001-1=2000≡0 (mod 1000)

よって,R=…66667

でF(R)=…66667×3-1=…000000=0 を満たす

 

よって

1/3=[…666667]₁₀

 

 

ここで,形式的に

1/3=…666667

という等式が成り立つとして 以下のように式変形してみよう

 

1/3=…666666+1

1/3-1=…666666

-2/3=…666666

-1/3=…333333

-1/9=…111111

となり,前述した式と一致した.

 

 

 

例題2

 

7x-1≡0 (mod 10 ) から無限10進数をつくってみよう

 

7x-1=0

x=1/7 を無限10進数で表す 

 

 

F(x)=7x-1=0 

 

x=7 で F(3)=21-1=20≡0 (mod 10)

x=43で  F(43)=301-1=300≡0 (mod 10²)

x=143で  F(143)=1001-1=1000≡0 (mod 10³)

x=7143で  F(7143)=50001-1=50000≡0 (mod 10⁴)

x=57143で  F(57143)=400001-1=400000≡0 (mod 10⁵)

x=857143で  F(857143)=6000000≡0 (mod 10⁶)

x=2857143で  F(2857143)=20000000≡0 (mod 10⁷)

x=42857143で  F(42857143)=300000000≡0 (mod 10⁸)

x=142857143で  F(142857143)=1000000000≡0 (mod 10⁹)

よって,R=…142857143

 

1/7=[…142857143]₁₀

 

 

 

***************

 

補足

 

https://ameblo.jp/titchmarsh/entry-12620976558.html

で示した

x²-x≡0 (mod 10) が,ヘンゼルの補題を満たすかどうか検証してみよう。

 

F(x)=x²-x 

F'(x)=2x-1

 

x²-x≡0 (mod 10)

x=0,1,5,6 

が解である.

F'(0)=-1

F'(1)=1

F'(5)=9

F'(6)=11

は、m=10 と互いに素になっている.

 

R=…57,423,423,230,896,109,004,106,619,977,392,256,259,918,212,890,625

R=…42,576,576,769,103,890,995,893,380,022,607,743,740,081,787,109,376

で,R₀≡5 ,6   である.

 

 

 

https://ameblo.jp/titchmarsh/entry-12621282405.html

に続く.