丁寧で安価な寺垣プレーヤーのメンテナンス | ニャンコの音楽とオーディオでまったりした日々

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オーディオは以下のとおりです。
https://ameblo.jp/tiromie/entry-12481502923.html

最初に今回購入先の大阪のヒノエンタープライズにメンテナンスに出した寺垣プレーヤー3種のうちの末っ子 SEIKO EPSON Σ2000ほか3種の資料をネットから探して拾ってきました。

なお、旧音楽室に大阪からクラウンだったかボルボだったかメルセデスであったか、大型セダンに乗せて納品に来られた先代の日野社長は81歳で他界。

肝心の寺垣武先生は2年前に他界されたことを、現在のヒノエンタープライズの息子さんの日野さんから教えてもらいました。

お二人のご冥福をお祈りするとともに、ヒノエンタープライズを継いだ現日野社長から、∑2000 ∑5000は可能な限りメンテナンスを続けるという心強いお言葉もいただいております。
愛用者は引き続き安心ですし、長年そのままならメンテナンスに出す価値があるかもです。

目安はターンテーブルの電源を止めて2分回り続けるのが初期状態。うちのは30秒で止まったそう。

トーレンス TD-124も同じで、今は1分以上回り続けています。


SEIKO EPSON Σ2000 ¥1,400,000(1990年代前半頃)


完全な変換器に限りなく近いプレイヤーを作り上げる事を目標に、支点の明確化という観点で開発を進め、「表面粗さ計」ともいえる極めて正確なプレイヤーを実現しています。

Σ2000は1994年に発表されたΣ5000の廉価タイプとして発表された機種で、50台ずつ2回生産されました。


SEIKO EPSON Σ5000 ※受注生産品
¥3,200,000(1994年発売)


Σ5000は10台ずつ3回生産され完売。つまり世界に30台
トーンアームはスタティックバランス方式を採用しています。
Σ5000ではヘッドの重量は400gを超えており、従来の方式だと2.8kg以上のバランスウェイトが必要となるためスムーズな動作ができません。そこでテコの原理を利用して軽いウェイトで釣合うようになっています。
アームの各支点には常に一方的に接触圧力がかかる構造となっており、スムーズな動作を得つつ遊びがありません。また、アームビームの中には高張力鋼の棒が組込まれており、強い圧縮応力で強固に一体化してあります。


寺垣 3000 


資料が見当たりませんでしたが、世界で6台のみ。500万円を超えていた記憶です。
オーディオテクニカが3億円ともされる開発資金を負担していた当時に開発された最初の寺垣プレーヤーの市販モデルと思います。
といっても台数からはラボラトリーモデルといっていいでしょう。


以下、∑2000 ∑5000は今でもヒノエンタープライズ経由でメンテナンス出来ること。

その費用も今回は11万円台と内容からは丁寧なのに安価です。

またPhasemationでも、フォノモーター部分は今でも通用する。
下記特殊なアームゆえ、レコードの反りや偏心がダイレクトにカートリッジのカンチレバーと針先に負担をかけることがあって、この対策にはアームへの交換も推奨されました。

そこで一気にメンテナンスする気力が出ました。現代プレーヤーを買わなくても、現代レベルの再生に到れるのではと。

メンテナンスは以下のようです。お持ちの方、中古購入をご検討の方にはとても参考になる安心資料になると思います。

<概要>
製造から26年経過したための経年劣化や、ご使用による摩耗などで劣化が進んでいました。

オーバーホール及び修理により、実用性に問題無いレベルに復活していると思います。

稼働部分は完全分解し、洗浄・研磨ポリッシュしてから組み直しました。 

このためまだ当りが出ておらず、しばらくはメカノイズが高めです。 

数か月のご使用で徐々に静かになっていくと思います。
(24時間連続回転などでの強制慣らしは、ダメージが出る場合がありますのでお避け下さい)

主軸は擦れずに回転できる高さから1回転上げてください(赤マジックマークが手前)
後付のアームエレベーションは社外品のため特に何もしてありません。


<受入時の状態>

回転はするがメカの負荷抵抗が異常に大きい。 

負荷抵抗はアイドラを避けた状態で33回転からの空転時間で判断します。 

結果は空転時間30秒で、これまで受け入れた中でも最も短い(悪い)部類でした。

空転時間は未使用状態なら2分以上あります。 1分程度が使用限度です。

その他、破損個所やイタミなどがありました。


<修理箇所の詳細>
オーバーホールに先立ち、分解しながら各部をチェック ターンテーブルとアームを外した状態



さらにローラーやアクリルトッププレートを外した状態




1.アーム
指引掛け部が折れていましたので、製作し取付けてあります。



外れていたストッパーを取付け ZYX R100Tを基準に高さ調整をしてあります




2. 主軸とローラー

2-1 主軸
特に痛みはありませんでした 洗浄のみしてあります・




主軸の一番下に付いている超鋼ボールは回転痕はありますが、まだ当分使えるのでそのまま。





2-2 高速度鋼受の摩耗

主軸を下から支える高速度鋼受ですが摩耗がありました。 使用時間は数1000時間程度でしょう。



摩耗量はまだ使用限界ではありませんが、新しい面にしてあります↓



この高速度鋼の受は最も摩耗する部分なので、上下を入れ替えて使用可能な設計となっており、上下面を入替えると摩耗の無い新しい面になります(↓)

この部分にはモリブデングリスを定期的(数年毎)に注油していただくと、長持ちします
(タミヤのミニ四駆用のモリブデングリスが使えます)


2-2 ローラーのベアリング油硬化

主軸を受けるローラー2枚ですが、ベアリングに油劣化がありスムーズに回転できない状態でした。



ベアリングを洗浄 ローラーのまわりにある細かい黒い点が固まった油です(↓)




ボールベアリングそのものは正常でしたので、洗浄し注油してあります。
修理前後のローラー動作はGoogleDriveの動画を参照ください

 

https://drive.google.com/drive/folders/12Qo-XRw37-0UYIP0zZFHqKL44rhNaPD5

 



3.ターンテーブル

真鍮の表面がかなり曇っていました 全体をポリッシュしましたので・・・深い腐食は取れません
が・・・遠目には当初の輝きが戻っているかと思います。



ターンテーブルの上面は曇っていても問題はありませんが、アイドラの接触するターンテーブル側面はキレイな状態にしておく必要があります。

ポリッシュには市販の研磨剤 ピカール が使用可能です 曇りが分かるようになったら、布にピカールを少量付けて拭き上げるようにポリッシュしてください(少量付けるのがポイント)



4. モーター

モーターユニットから取り外したモーターですが、カップリング含め、特に問題ありませんでした。



モーターの出力シャフト(アイドラを駆動する部分)に汚れがありましたので、#6000の耐水ペーパーで磨いてあります。


モータそのものは最大出力が初期に比べてやや低くなっていました。

モータ製造から27年経過し、永久磁石の磁力が少し落ちてきていること(減磁)が原因だと考えられます。

このため新品時に比べて、起動後に定速になるまでの時間が少し長くなっています。

最大出力は数値的には規格には入っていますし、最大出力を出すのは起動時の1~2秒だけですので、現時点で交換する必要は無いと判断し交換してありません。

なお定速回転時は最大出力の数分の一の出力ですので、この程度の磁力減衰の影響は全くありません(回路のサーボにより、規定の回転数を維持する)


4. アイドラ
アイドラは長期のご使用で表面が磨かれ凸凹が均されており、新品よりキレイな状態です
ただしゴム表面に酸化膜や汚れがありましたので、軽く研磨し無水アルコールで洗浄してあります。

アイドラ部は解放構造でゴミや空気中の油分が付きやすいので、時々布に無水アルコールを含ませて拭いてください

併せてテンションバネ調整などを行ってあります


5. 回路

モータの出力特性変化に合わせて微調整を行ってあります
電解コンデンサなど電子部品は、液漏れなどは無く特に問題ありませんでした

6. その他
・ACアダプター
電圧電流ともに異常ありませんでした

・後付のアームエレベーション
痛みがあるようですが社外品のためそのままです
(シリコンオイルのような付着物あり オイル漏れがあるかもしれません)
(Σ5000/Σ2000修理担当)