イコライザーカーブとオリジナル盤 マイケル・ジャクソン | ニャンコの音楽とオーディオでまったりした日々

ニャンコの音楽とオーディオでまったりした日々

ヤフブロから移ってきました。
ゆるゆるニャンコとツバメ、動物と音楽とオーディオでまったりした日々をおくっています。

オーディオは以下のとおりです。
https://ameblo.jp/tiromie/entry-12481502923.html

コロンビアは1980年でようやくRIAAカーブに切り替えと書きました。


だとすれば、同じコロンビアから発売されたマイケル・ジャクソンでいえば79年発売の「オフ・ザ・ウォール‘はコロンビアカーブ、82年発売の「スリラー」はRIAAカーブになるはずです。


その2枚のアルバムのEQカーブを確認すれば、1980年を境にコロンビアカーブからRIAAカーブに切り替わった証明になるということで、「オフ・ザ・ウォール」と「スリラー」それぞれのオリジナル盤をアコリバ石黒社長がお持ちになりました。

 



レコードのレーベルやジャケット下をご覧ください。

販売用ではなくデモ用、オリジナル盤とはっきりわかりますね。

初回プレスは販売用の前に販促用、主要ラジオ局などに宣伝のためデモ盤が配られたのですね。

デモ盤には今回の「オフ・ザ・ウォール」のようなホワイトレーベル盤と「スリラー」のような通常レーベルでアルバムジャケットにプロモスタンプが刻印されているものがあります。

コロンビアの場合は最初にホワイトレーベルのプロモ盤を製造し、その後に通常レーベルでアルバムジャケットに刻印したプロモ盤を製造、そして通常の量産品を製造という順で生産していたようです。

うちにもわずかですが、かようなプロモ盤があったと記憶しています





「オフ・ザ・ウォール」


RIAAで聴くと、ハイ上がりでチープな音で、なんだか煩い場末のDISCOサウンドと思わず口走ってしまいました。

安い貧弱なスピーカーをジャンクなプリメインアンプの高音を持ち上げて鳴らして踊る。

プロデューサーのクインシー・ジョーンズが厳選した凄腕ミュージシャンで固められたはずなのに、コミックバンドのような軽くてギクシャクした演奏に聴こえます。


それくらい安っぽいドンシャリ、シャリシャリなどうしようもない音で、シンバルなんかブリキの屋根を叩いているようなやかましい音です。


ところがColカーブに切り替えた途端に一流ミュージシャンでなければ出せない重厚かつグルーヴ感に富んだ素晴らしい演奏に大変身しました。

クインシー・ジョーンズによる緻密でゴージャスなアレンジが細部まで聴き取れるようになり、マイケルの声もスウィートで立体的に明瞭に定位します。


RIAAカーブしかないフォノイコで聴いたらこの「オフ・ザ・ウォール」は台無しです。

コロンビアカーブで聴くことで初めてこのアルバムの凄さが判ると断言します。



逆に「スリラー」


自分 RIAAカーブでは、さすが予算度外視で作られた世紀の傑作だけに超がつく優秀録音だったのが、コロンビアカーブですとハイ落ちでシンバルが消え気味になり、中低域が妙に膨れて抜けが悪くなり、カーテン越しか暗幕越しのような地下から漏れ聞こえるBGMのような冴えない音になってしまいました。


ギタリスト 今夜はビートイットはTOTOのギタリスト、スティーブ・ルカサーがメインパートのエレキギターをカッティングしていて、それと当日飛び入り参加したヴァン・ヘイレンの間奏のエレキギターソロの音色の違いがRIAAカーブでは克明で正確だったのが、コロンビアカーブでは誰のギターなのかさっぱり判らなくなってしまいました。


自分 誰が聴いてもわかるヴァン・ヘイレンのギターの音色で彼ならではのギターのアドリブリードソロを聴くなら、スリラーはRIAAカーブですね。決してコロンビアカーブで聴いてはいけません。


これで1980年を境にコロンビアがコロンビアカーブからようやくRIAAカーブに切り替わったことが完全に判明しました。


かつてアナログレコードがメイン音源だった時代に、洋盤を多く持っていたのにRIAAカーブしかない国産プリメインアンプやプリアンプを使っていた人は悲劇ですね。

日本で生産されたアナログレコードが全てRIAAカーブでカッティングされていたから仕方ないかもしれませんが、やはりRIAAカーブしか搭載していなかった一部の輸入アンプは何をやっていたのでしょう?


日本の当時のオーディオ技術者というのは、生楽器、生演奏とこれだけかけ離れたことに違和感を持たなかったのでしょうか?

国内盤レコードしか聴かず、輸入盤レコードは音のチェックに使わなかったのでしょうか?

そういえば石黒社長によれば、かつてのCBSソニー内部では輸入盤は音が変だよね、と言う方が多かったらしいです。


せめて高音、低音のトーンコントロールを付けたアンプであれば、それをどのように弄れば擬似的にでも正しいイコライザーカーブになるかを取説に明示すべきでしたね。

本来、トーンコントロールはEQカーブが合わない場合の補正用として装備されたものだったそうですが、雑誌や評論家の悪影響か、オーディオシステムの帯域バランスを補正するためのもののように認識されてしまったようです。


アナログレコード全盛期に発売されたMarantz#7CにしてもイコライザーカーブはSP盤の78回転とColカーブのみで足りません。




デザインからの妥協と思います。

その代わり、トーンコントロールはこのようでロータリースイッチ式です。





しかもこの回路にまで、当時最高音質で、今でも1本万単位で取引のスプラグ社の当時最高音質とされたオイルコンデンサー、バンブルビーやA&B社のカーボン抵抗など、音質的配慮に余念がないことに今でも驚きます。





Model 7のLPカーブは2種類だけですが、1951年頃(RIAAカーブ制定前)に作られたMarantzの最初のプリアンプであるConsollete や後のModel 1の回路図を見ると、高域6種、低域6種(低域側はこれまた複雑なスイッチを使って)のポジションを切り替えるようになっていたそうです。


当時もハイエンド価格だったMarantz7を買う方は、スピーカーも当時のハイエンドスピーカーであったはずです。


とすれば、EQカーブの不一致によってスピーカーから低音が足りない、高音が出過ぎる場合は、トーンコントロールで高音低音を補う必要があったはずです。


このトーンコントロールは、RIAAカーブとコロンビアカーブ以外のイコライザーカーブのレコード再生において低音と高音を調整して合わせることが大きな目的だったと睨んでいます。


設計者シドニー・スミスさんと親しかったオーディオマエストロ是枝重治先生に次回聞いてみましょう。


以上で比較的レコードが音楽のメインソフトの最後の時代まで、RIAAカーブでカッティングされた洋盤は少なく、多くのレコードが別のカーブであったことが判りました。

正しいカーブで聴かないと、楽器の音色や質感も大きく変質してしまい、位相特性も著しく狂ってしまい、音場は狭くなり、音像はぼやけて引っ込んでしまい、空間情報は消え失せてしまうことが判りました。


しかし、現在ではEQカーブ可変機能を持つ機器がいくつかありますので、どんなものがいいのか?アコリバ石黒社長にお聞きしてみました。

それはまた後日、記します。