オリジナル盤レコードによるEQカーブ実験、今回はビル・エヴァンスのワルツ・フォー・デビーです。
あまりに有名で世界で一番売れたジャズアルバムとされていて、オーディオマニアでもこのアルバムだけは持っているという方は多いと思います。
石黒社長に貴重な直筆サイン入り(汗)の初回プレスをお持ち頂きました。
彼の筆跡に間違いありません。
なぜなら松本市でユーロジャズの最近のオススメを聴いて参考にしているジャズ喫茶「エオンタ」に松本市でのライブを終えて遊びに来られたビルエバンス本人が壁にサインしたものと同じだからです😀
ビル・エヴァンス・トリオは、1961年当時、ライブハウスの「ヴィレッジ・ヴァンガード」でのライブをしばしば行っていたそうです。
1961年6月にも連続ライブが行われ、最終日に当たる6月25日のライブは、リバーサイド・レコードによって特にライブ録音されたものの一枚。
しかし、それから11日後の7月6日、ビルにとって片腕とも言えるベーシスト、スコット・ラファロが交通事故で他界し、リバーサイドのライブ録音は、スコット・ラファロの生涯で最後の公式な録音となってしまいました。
夢を壊すようで恐縮ですが、スコット・ラファロはお金に厳しく、ビル・エバンスにはギャラはビタ1ドルまけることなく、演奏前にもらわないと演奏しなかったそうです。
この超有名盤のオリジナル盤の状態の良いものとなれば20万円超えるようで、今回石黒社長が持参されたのは新品状態のmintコンディションで直筆サイン入りですから果たしてどれだけの値段なのでしょうか?
音質も大いに期待してしまいますし、オーディオマニアの方々もきっとどんな音が出るのか?興味津々だと思います。
所有されている方にしても、自慢げに大騒ぎしてかけるでしょうね。
しかし、石黒社長は意外なほど冷静です。
何故かと尋ねてみれば、「聴けばわかります」と一言。
まずはRIAAカーブで試聴
RIAAカーブで聴くと、悲惨なことにスコット・ラファロの耽美的な歌うベースが小さく奥に消え失せてしまいました。
エヴァンスのピアノの音色も安っぽく、モチアンのドラムも汚らしく騒々しいです。
これなら廉価版CDの方がよほどマシです。
そういえば、PCオーディオが台頭した今から十数年前にPCオーディオ誌という雑誌が発売され、その誌面で自称PCオーディオの大家という人物がこのワルツ・フォー・デビーのオリジナル盤レコードと当時配信が始まったばかりのハイレゾ音源を比較して、ハイレゾ圧勝!アナログレコードは酷過ぎるとこき下ろしていたのを思い出しました。
当然、その自称PCオーディオの大家はこのワルツ・フォー・デビーのオリジナル盤レコードをRIAAカーブで再生したのでしょうから、この酷い音ではハイレゾ音源が圧勝するのは当たり前ですよね(苦笑)
こうやって誤った情報がオーディオマニアに刷り込まれて行くんですね・・・。
次にAESカーブで再生
これをリバーサイドでは終始カッティングしたとされるAESカーブにすると、RIAAカーブでは袖に引っ込んだスコット・ラファロがステージにしっかり登場して、エヴァンスのピアノもマトモな音色になり、モチアンのドラムも騒々しさがなくなって一歩奥に定位して音場も整いました。
しかし、EQカーブを正しくAESにしたところで、盤質のせいなのか?音質が良いとはお世辞にも言えません。
これなら手持ちのSACDの方がS/Nも格段に上がって音質よく、演奏の細かなニュアンスが聞こえます。
もしかしたら廉価版CDにすら負けるかもしれません。
石黒社長によれば、リバーサイドのオリジナル盤レコードは製造工程や盤質などに致命的な問題があったようで、ブルーノートのオリジナル盤以上に劣悪な音質の盤が多いそうです。
しかし、オリジナルのマスターテープは一部劣化があるものの、十分に良い音質が維持されており、我々がリマスターCDやSACD、ハイレゾ、再発アナログレコードなどでこの素晴らしい演奏を良質な音で聴けるのは録音自体は悪くはなかったからだそうです。
ちなみにワルツ・フォー・デビーで最も音の良いソフトはアコリバのケーブルアクセサリーを使用してAcous Tech社がリマスタリング、カッティングした45回転重量盤だそうです。
果たして、このワルツ・フォー・デビーやブルーノートのオリジナル盤を聴く限り、オリジナル盤に20万円以上出す意義は投資や転売目的しかなく、コレクターに関しては自己満足に過ぎないと言わざるを得ませんね。