Episode.1 Legend of the golden witch:10/4(土)12:0 | 弐位のチラシの裏ブログ

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 今日のうみねこのなく頃に咲 〜猫箱と夢想の交響曲〜はどうかな?


 ゲストハウスにいる子供たち4人は、6年ぶりにそろったが、中身は6年前とまったく同じで、楽しく過ごす。
 ノックの音がし、「失礼します。お食事のご用意ができました」と慎ましやかな紗音の声が聞こえる。
 朱志香が立ち上がって、扉を開け、紗音を部屋の中に迎い入れる。
 「御無沙汰しております、戦人さま。6年ぶりにございます、紗音です」と紗音は深々と会釈する。
 「はー、あんたもすっかり美人になったじゃねぇのよ」と声を上げる戦人。
 「もったいないお言葉、恐悦に存じます」
 「何を食ってどこを鍛えたらそんなにでかいお胸になるんだか!朱志香とどっちがでけぇか、ちょいと触って確かめさせてもらうぜ」
 これは戦人のコミュニケーション術で、十中八九どつかれたりするけど、残り一くらの確率で本当にタッチできたらラッキーだ、思っている。
 ところが、戦人の手が紗音のお胸に接触するまで1cmくらいのところまで来たのだが、紗音は真っ赤になって俯いているだけで、拒絶して戦人をどつくとか、胸を庇う行動をとろうとしない。
 そのタイミングで朱志香が戦人の後頭部に肘鉄を叩きこむ。
 「すまんぜ紗音ちゃん。魅力的な胸に思わず吸着されそうになっちまった。駄目だぜ、抵抗しなきゃ」
 「ですけど、戦人さまは、大切なお客様ですし」
 「お客様でも、犯罪は犯罪。ビンタをくらわしてやれ」
 「そんなことできません!私たちは、その・・・家具ですし。でも、命令ならお聞きします。それが務めですから」
 それを聞いて譲治が「命令させてもらうことにするよ。次から戦人くんが滑に触ろうとしたら、平手打ちで反撃すること」と笑いながら言った。
 「はい、仰せつかりました。以後、そのようにさせていただきます」と晴れやかな表情で紗音はお辞儀しながら宣言した。
 戦人が、紗音に今年で何年になるのかを尋ねると。紗音は10年ほどお仕えさせていただいております、と答える。


 紗音
 若いが年季のある使用人。
 普段は落ち着いて仕事をそつなくこなすが、焦るとミスが多くなる。
 なお、紗音はあくまでも勤務時間中の仮の名前で本名ではない。


 紗音は6つの時からここに勤めているという古参の使用人だ。


 譲治が、さっきあった嘉音は紗音の弟だ、と教えてくれる。


 戦人たちは紗音に先導されて、お屋敷に向かう。
 再び立派な薔薇庭園に迎えられ、さらに進むと見えてくるのが、迫力ある右代宮本家の御屋敷だった。
 玄関に入ると、老いた使用人が迎えてくれた。最古参で、使用人の長を務める源次だった。


 呂ノ上源次
 右代宮家に使える使用人たちを他b寝る使用人頭。
 金蔵にもっとも長く使えており、最大の信頼を得ている。
 金蔵直属の使用人であるため、蔵臼夫婦には、金蔵のスパイのように思われている。


 「戦人さま、お久しゅうございます」
 「源次さん、本当にお久しぶりっす。お元気そうですね」
 「お陰様で健やかに過ごさせていただいております。戦人さまこそ、ご立派になられました。お館様の若き日に、少し似てこられましたな。ここからは紗音に代わって私がご案内申し上げます。」
 源氏の案内で食堂へ向かう。


 吹き抜けのホールを通り抜ける時、戦人は6年前の記憶にないものを見つけた。
 それは2階に上がる階段の真正面に飾られた、とても大きな肖像画だった。
 「なぁ朱志香、あんな絵、前はあったっけ?」
 「戦人が来てた頃にはアレは掛けられてなかったっけ。」
 それを聞いていた源次は、「一昨年の4月に、お館様がかねてより画家に命じて描かせていたものをあそこに展示なされたのでございます」と答える。
 肖像画には、この洋風屋敷にふさわしい、優雅なドレスを着た気品を感じさせる女性が描かれていた。歳はわからないが、目つきにやや鋭さと意志の強さを感じさせるため、若そうな印象を受けた。
 肖像画の女性は美しい黄金の髪で、日本人的ではない容姿を感じさせた。
 真理亞は、魔女のベアトリーチェ、と言った。


 この六軒島は全周が10km程度の小さな島で、右代宮家だけが住んでいる。
 住めるように聖地されているのは、船着き場ち屋敷の周りの敷地だけで、あとはこの島が無人島だった時代から手つかずのままになっており、一切の明かりも電話もなく通行人もいない無人の広大な森が広がっている。
 そんな危険な森に子供が遊びに行ったら大変なことになるかもしれない。
 「森には恐ろしい魔女がいるから立ち入ってはならない」
 それが六軒島の魔女伝説である。
 だから、この島で魔女と言ったら、それは広大な未開の森の主を指す。


 「なるほどなぁ、あの魔女伝説の魔女に、ベアトリーチェなんてオシャレな名前がついてたとは、とんと忘れてたぜ」
 「爺さまの妄想の中の魔女だよ。この絵を掲げた頃から現実と妄想の区別がつかなくなり始めた。私たちにとっては想像の中にいる魔女にすぎないけど、爺さまにとっては、彼女はこの島にいる存在。だから、それを理解することができない私たちにもわかるよう、あの絵を書かせたって言うんだけど、気持ち悪いったらありゃしないぜ」と朱志香が言った。
 「お嬢様、お館様にとっては大切な肖像画です。お館様の前でそのように仰せられることがございませんよう、固くお願い申し上げます」と源次が言うと、朱志香は「頼まれて言わねえよ」と、忌々しいような目つきで肖像画を一瞥すると、そっぽを向いた。


 この島で、右代宮家が支配している部分などほんのわずかだ。
 残りの未解の部分をすべて彼女、魔女ベアトリーチェが支配しているというなら、彼女こそこの六軒島を真に支配する存在なのだと言える。


 食堂の扉が開けられ、中へ招かれる。
 いかにも大金持ちって感じの食堂には、来客に序列を思い知らせるのが目的としか思えない長長いテーブルが置かれ、その序列に従い、親たちが着席していた。
 一番奥正面のいわゆる御誕生席が最上位の席、爺さまの指定席で、まだ空席だった。
 席順は、御誕生席を正面奥に見ながら、左右と序列が続き、序列が低いほど御誕生席から遠のいていく。
 御誕生席に一番近い第1列目の左席、序列第2位の席は、親兄弟の長兄の蔵臼の席。
 そしてその向かいの第1列目の右席には、序列第3位の親兄弟の長女の絵羽が座る。
 第2列目の左席は序列第4位の親兄弟の3人目の留弗夫。
 その向かいの第2列右席、序列第5位は親兄弟末っ子の楼座の席。
 次の第3列目左席は親たちの配偶者ではなく、序列第6位の朱志香の席だ。
 その向かいは譲治の席。
 朱志香の隣は戦人で、その向かいは真里亞。
 戦人の隣、つまり第5列目左席の序列第10位まできて、ようやく夏妃だった。
 その向かいが秀吉。
 夏妃の隣の第6列目の左席が霧江。
 霧江の向かいの席の食事の支度がされていたが空席だった。序列的に言うなら、そこには楼座の夫が座るべき席だ。
 右代宮家は独自の序列を持っており、男尊女卑の残りで、女の胎は借り物だとする考えに基づくと、直系の事もがもっとも序列が高く、孫がその次、血のつながらない配偶者は一番ビリって考えになるわけだ。


 本家の長男に嫁ぎ、家を切り盛りする実質上ナンバー2の夏妃は、戦人よりも2つも序列が下だった。
 「お久ぶりですね、戦人くん。ずいぶん背が伸びましたね」
 「食ったり食べたり食事したりしてたらいつの間にかこんな身長に」
 「身長はいくつくらいあるの?」
 「180かな?つーか伯母さん、そこは、食べてばっかじゃねぇかって突っ込んでくださいよ」
 「え?ごめんなさいね」


 右代宮夏妃
 蔵臼の妻。
 家庭を顧みない夫に代わり、右代宮本家を切り盛りしている。
 責任感が強くプライドが高い。
 しかし、夫にもその兄弟たちにも理解されず、境遇はあまり良いとは言えない。


 夏妃は、親兄弟の長男の妻で、朱志香の母親だ。
 いつも気難しそうな顔をして、親たちと難しい話をしているという印象しかない。


 テーブルの上には整然と食器が並べられていたが、まだ食事の配膳は始まっていなかった。
 基本的に、上席者が着席するまでは食事は始まらない。
 つまり、最上位の爺さまが来ない限り、いつまでもお昼始まらない。
 ただ、戦人の記憶の中の爺さまは、必ず時間通りに現れたものだ。
 「俺の記憶じゃ時間に厳格な人だったと思うんだけどな」と戦人が言うと、朱志香が「6年前はそうだったかもなぁ。最近はそうでもねぇよ。というか、もう自分の世界オンリーって感じで会食にも顔を出さねぇぜ」と答えた。
 「朱志香」と夏妃に叱られ、朱志香はそっぽを向いた。


 右代宮本家の老いた当主、右代宮金蔵は、書斎にいる。
 時計は昼を指していたが、席を立とうとはしない。


 右代宮家の老当主。
 余命わずかと宣告されながらも、意気軒高。
 莫大な財産を築いたが、相続について何も明かしておらず、息子兄弟たちをやきもりさせている。
 西洋かぶれにして、大のオカルトマニア。


 閉め切られた室内は、濃厚な埃が舞い、胡散臭い異臭を放つ薬品の臭いを混ぜこぜにした空気で澱んでいる。
 その書斎の扉を、さっきから叩き続ける音が繰り返されている。
 その音には時折、「お父さん」という声が混じっていた。
 金蔵は大きくため息をつくと、手にしている古書を乱暴に閉じて卓上にたたきつける。
 それから大声で、扉を叩き続ける蔵臼に怒鳴った。
 「やかましい!その音を止めぬか、愚か者!」
 「お父さん、年に一度の親族会議の日ではありませんか。どうかお出でください」
 金蔵はいつも書斎にこもりきりで、家人すらも部屋に入れることを嫌った。そのため、こうして廊下から言葉をかけるしかないのである。
 「私に構うでない!源次はどこだ!源次を呼べい!苦艾の魔酒を用意させろ!」
 扉の前では、蔵臼、南條、源次が、出てこようとしない主を待ち続けている。
 「金蔵さん、あんたの顔を見に、息子や娘や孫たちが来てるんじゃないか。ちょっと顔を見せてやったらどうだね」
 「うるさい黙れ!私に意見するというのか、南條!私は源次を呼べと言ったのだ!」
 金蔵は老眼鏡を置くと乱暴に席を立つ。
 「なぜだ!なぜにいつも私には邪魔が入るのか?全てを捨てよう、全てを捧げよう、その見返りに私はひとつしか求めないというのに!おぁベアトリーチェ、お前の微笑みをもう一度見られるならば、私は世界中の微笑を奪い取り全てをお前に捧げよう!」


 「何を怒鳴っているのかもさっぱりだな。もう頭がどうにかなっているのだろう」
 「蔵臼さん。実のお父さんに、そりゃああんまりじゃないかね」
 「親父はすでに死んでいる。ここにいるのは、親父だったものの幻さ。私は下に戻る」と言って蔵臼は踵を返した。
 源次は、南條に食事に行くように促すと、南條は小さく頭を下げると、階段を降りて行った。
 それを見届けた源次は、書斎の扉をノックする。
 「お館様、源次でございます」
 「何ゆえ私をこれほどまでに待たすのか!そこには誰もおるまいな?」
 「はい、私だけでございます」
 それを聞いた金蔵は、卓上の古風なスイッチを押した。
 すると少しだけ遅れて、扉の施錠が開く重い音が聞こえた。
 金蔵は、自分の部屋に厳重な施錠を施し、自分の許可がなければ誰も入室できないようにして、自ら作った座敷牢に自らを閉じ込めているのだった。
 源次は書斎の一角に向かい、いつもの慣れた手つきで、金蔵の愛飲する酒を準備し、グラスを盆に載せ、金蔵の元に向かった。
 「どうぞお館様」
 落ち着きを取り戻した金蔵は、グラスを傾けて、窓から景色を見下ろす。
 金蔵は窓の外を見たまま、グラスだけを突き出した。
 「飲め、わが友よ」
 「もったいないお言葉です」
 「私とお前の中に儀礼はいらぬ」
 「いただきます」
 源次はうやうやしくグラスを受け取ると、舐めるようにグラスをわずかに傾け、くっと煽った。
 「互いに老いたな」
 「今日まで過ごすことをお許しいただけたのも、全てお館様のおかげでございます」
 「今日まで、本当によく私に仕えてくれた。お前だけが今でも私に仕えてくれる。」
 「もったいないお言葉です」
 「私の余命もそう長くはあるまい。なぜだ、なぜに右代宮の血はこうも無能なのか!私の築き上げた栄光を受け継ぐに相応しい者はおらんのか?これがベアトリーチェの呪いであることもわかっておる!黄金の魔女め、それが私への復讐のつもりか。逃げたくば逃げるがよい!逃がさぬ逃がさぬわ!お前は私の物だ!ベアトリーチェ、なぜに微笑み返してはくれぬ」
 金蔵が咆哮すると、源次は盆とグラスを置くと、主人の背中をさせる。
 「すまぬわが友よ、ゆえに私は決心した。この身に最後に賭するコインがあるならば、それを悪魔たちのルーレットに託してみたい、魔法の力はいつも賭けるリスクで決まる。そう、奇跡を掴み取る運気は即ち魔力なのだ。もし私に奇跡を手にする資格があったなら、ベアトリーチェ、お前の愛くるしい笑顔をもう一度だけ見せてくれ。お前から授かった物を全て返そう!あの日からの栄光を全てお前に返そう!」


 蔵臼が食堂に現れて、「当主様は具合がすぐれないとのことだ。郷田、ランチを始めてくれ」と告げる。
 絵羽が「南條先生、そんなにお父様の具合は悪いの?」と尋ねると、南條は、「体調と言うよりは機嫌ですな」と答える。
 それを聞いた戦人は、「機嫌が云々ってことは、症状はそんなに悪くないんじゃねぇの?」と言うと、譲治が、「おじい様は特に強い気力をお持ちだからね。でも、身体が必ずしもそれに伴えるとは限らないよ。去年からずっと余命3か月と言われ続けている」と答える。


 当主空席のまま始まる昼食。