ラストノート 【スピンオフ/櫻井出会い編 】4 | 櫻の葉色

櫻の葉色

左利きマジョリティ

「腐」です。


苦手な方は、回避願います。






アルコールも提供しているようだが、酔っ払っている客も、ペチャクチャ煩い客もいない。


音楽は流れているものの、邪魔をしない程度の音量で流れている。



居心地の良い空間は、集中し過ぎて時間を忘れる程に 仕事を捗らせた。



何度か仕事の邪魔にならないように、カフェラテを継ぎ足してくれる 店員さんの心遣いも、 嬉しかった。





「失礼いたします。  ラストオーダーのお時間でございますが、何か ご用意致しましょうか?」



「…あ…、もう、そんな時間か……。    こんな時間に、ガッツリ食べるようなモノなんて作れないよな?」



「メニューに あるものでしたら……。   お腹、空きましたか?」



「あ、いや、 帰りに コンビニか 何処かで  買って帰るよ。  ギリギリまで此処、使わせて 貰って良いかな。」



「勿論です。   他のお飲み物等も、必要ございませんか?」



「本来なら 酒でも頼まなければならない所だろうが、仕事を終わらせたいので 申し訳ない。」



「いえ。   今日は、他のお客様もいらっしゃいませんので、ごゆっくりお使い下さい。   閉店時に、またお伺い致します。」



「有難う。    助かるよ。」




本来であれば、カフェラテの おかわりだけで 何時間も粘る客なんて、迷惑だろう。



愚痴一つこぼさずに 笑顔で応対してくれる店員さんのお陰で、スムーズに 仕事が進んだ。




コンペティションの準備の目処がついて、ホッと一息ついたところで、タイミング良く 店員さんが近付いて来る。




「失礼致します。」



「あ、もう 閉店か?」




周りを見渡すと、さっきまで チラホラといた客も 居なくなっていた。



慌ててラップトップやら資料やらを片付け始めると、店員さんが 慌てて俺を制止する。




「いえ…、あの…。   余計な事だとは思ったのですが、余っている食材で ご用意させて頂きました。   宜しければ、お召し上がりください。」



「え…?     オムライス……?」




テーブルの上に置かれたのは、プルプルの黄色い卵を纏い  真っ赤なケチャップが掛かった 美味しそうなオムライス。




「あの、ごめんなさい。  こんな夜中に食べるものでも無いと思ったのですが、ずっと  お仕事をされていたので……。    食べませんよね?   お下げいたします。」



「待って!   食いたいっ!」




テーブルに置いたオムライスを回収しようと伸ばした店員さんの手を思わず掴んで声を上げた。




「…え…?」



「オムライスなんて、久々だな。   実は、大好物なんだ。」