誰もが思いつくような話 【にのあい】 62 | 櫻の葉色

櫻の葉色

左利きマジョリティ

「腐」です。


苦手な方は、回避願います。





有給を使って、4日目。

巷を賑わす新たな事件は、起こっていなかった。



あれから俺は 部屋の外へ全く出ることなく、一日中 家の中に引き篭って過ごしていた。



UberEATSで頼んだ品物を取りにドアを開けるくらいだが、視線を感じて顔を出すと、マンションのエレベーター側の壁に隠れて刑事が立っている姿を 見る事もあった。



仕事に関しては、Teamsでのやり取りくらいで事が済んでいる。

新しいプロジェクトについて打診があったが、断りを入れて  更に20日の有給申請をした。



今まで 真面目に休むこと無く働いていた俺が、いきなり長期の休みを取り続ける事に 上司は渋い顔をしたが、受け入れてくれた。

反対されれば このまま辞める覚悟でいたが、何故か何も言われなかった。




その理由は、同僚から届いたchatの内容で 直ぐに理解出来た。




公園で殺害された被害者は、同じビル内の違うオフィスの人間だった。


階も業種も違う為  名前を聞いてもピンと来なかったが、女性社員の間では割と知られた人間だったようだ。


表向きの 社交的で、人気のあるイマドキの男性というイメージとは違う一面があったようで、被害にあった人間は1人や2人では無かった事が分かった。


又、その男性は 恋愛対象を女性に限定してはいなかったらしい。



その為  凡百角度からの怨恨を動機とした殺害として、ビル内の全てのオフィス、全ての従業員に対し、警察の事情聴取が入ったというのだ。



ウチの会社も勿論例外ではなく、一人一人  時間を取られ、拘束された事で、俺の事まで構う時間は無かったという訳だ。



休んでいる人間についても確認があった為、直接 聴取に来るはずだと締め括られていた。



今まで他人事のように傍観していた事件が 一気に身近になった事で、皆がストレスを抱えているようだった。



既に、自分が聴取された事については 黙っておく事にして、同僚には礼を伝え、変動があれば教えて欲しいと送った。





相葉さんや、小峠さんの所にも刑事が来たのだろうか……。



相葉さんや 小峠さんは、元気だろうか……。