誰もが思いつくような話 【にのあい】 18 | 櫻の葉色

櫻の葉色

左利きマジョリティ

「腐」です。


苦手な方は、回避願います。






俺は、彼の事を   何にも知らない。


……彼の  名前さえも………。




「…あの…っ、、!」



「………?」




そうだよ…っ。

…せめて…、   …彼の   名前だけでも………。




「……あの…、  ……名前…っ、  名前、聞いちゃ ダメですか…?」




勇気を出して、並んで歩く 彼を見上げて 必死に質問すると、立ち止まり、キョトンとした顔で 俺を見下ろす。




「ん?       言って  なかったっけ??」




首を傾げて、暫く考えるような 仕草をしている。




「…………はい…。」




だって、俺が貴方の名前 呼んだ事なんて 1回も無いでしょ?




「…………必要?」



「……えっ…?」




彼の返してきた言葉に、思わず  声が詰まる。




『…………必要?』



…って、  どういう 意味…?



……聞いちゃ…      いけなかったのかな……。



彼にとっては俺なんて、ただの顔見知り と言うぐらいの認識しか無いのかな……。



グルグルと駆け巡る後向きな 思いに、頭を悩ませ、落ち込み、言葉を失っていると、  暫く  俺の顔をジッと見ていた彼が、突然  クスクスと笑いだした。




「ウソウソ。      相葉です。」



「……相葉……      さん……? 」




……相葉さん……。


……嬉しい………。

……優しい………。




「くふふ。   ここまで来たら、もう 平気でしょ?」




相葉さんの言葉に 我に返り、 周りの景色を見渡してみる。




「……あ……、  もう……。」




気付いたら、大通りを目の前に 道が開けた場所まで  辿り着いていた。



慌てて相葉さんを見上げると、笑いながら 大きな掌で 頭を 沢山撫でられる。


俺が怖がらないように、まるで おまじないを掛けるみたいに。



ただ頭を撫でられてるだけなのに、その掌の感触が 気持ち良すぎて、永遠にこのままずっと  撫でて貰いたいなんて、馬鹿な事を考えてしまう。




「気を付けて、くださいね。    二宮くん。」




当然、そんな馬鹿な考えは叶うこと無く、相葉さんの掌が離れて、途端に 現実に引き戻される。



左腕の時計をチラリと見た相葉さんは、俺に最後に微笑むと、俺の背中をポン、ボンと叩いてから、今 来た薄暗い道を 1人 帰っていった。




「あ、相葉さん…っ、    ありがとう ございました…っ。」




右手を挙げて手を振りながら  消えて行く 美しい後姿を、見えなくなるまで いつまでも ボンヤリと見送った。














*****

久しぶりに、酒が抜けねぇ……。

楽しい酒席に耐えきれずに。  久々に、女のコからグイグイ来られたわ……。

左腕が筋肉痛……。