大日本帝国の合従連衡とアジア共同体による合従連衡  日米の新時代同盟へ | 空気の意見 

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  「小泉政権後なぜ日米同盟は強化されたか?」という疑問を考えると、
僕が考えるところ、現在、日本という国はとくにアジアとの合従連衡を必要としていない、という事情があるのです。
 
 まず歴史を振り返ると、
近代の日本の戦略は西洋の植民地支配から逃れるためにアジアの国々と合従連衡することでした。
日本はその手始めに自分が立憲君主国になり、有色人種でも西洋の法体系や科学を運用できることを示しました。
 しかし、その戦略を外交を通して穏便に達成できなかったために
日本は日本文化圏に「韓国、満州、台湾」を影響化におさめ、
満州と朝鮮の王族を盛り立てて、彼らの立憲君主国への道筋の足がかりを狙ったわけです。

 けれども日本はアジア文化圏からは、
とりわけ清と朝鮮からは「裏切り者」あるいは西洋文化に洗脳されたように見られていました。
そういった日本人軽視や排斥の影響で、
日本では強硬派の征韓論や西郷隆盛のような礼儀を通した穏健派が論争をしました。
朝鮮もロシアか清か日本をパートナーにするかで政争があり、
最終的には、日本と併合する案を、朝鮮の政治家と日本の併合派、つまり、アジアを日本の影響圏の傘下入れて、
日本のリーダーシップによる合従連衡構想を推進している併合派が併合を締結したわけです。
 伊藤博文は穏健派であり、朝鮮にはきっと独立してもらうという考えを持っていたのですが、暗殺されてしまいます。
この瞬間に日本の、アジアを立憲君主国として独立させようとする穏健派が求心力を消失してしまった。
 立憲君主国合従連衡という戦略の形骸は残ったものの、中身は変質していき強硬派による皇国指導の拡大路線が続き、
日本敗戦まで朝鮮や台湾は日本の統治を受け続けることになります。 

 日清、日露、日支事変、旧ソ連との国境紛争、最後の第二次世界大戦。
これら上記の戦争は日本の近代からの合従連衡戦略という戦略を抑えておかないと、
なぜ、過去に日本があれだけ戦争をしたのか理解することができません。
現代から見て、良いか悪いかはともかく、これがあの当時の日本の戦略だったわけです。

 ノモンハンでの旧ソ連との戦闘、そして日本人排斥による日本人への被害、合従連衡戦略。
国境紛争で旧ソ連のプレッシャーを、戦果があるのかないのかわからないような戦果をあげながら、
必死に支えていた頃にハル・ノートがアメリカから届いたわけです。
 ある意味これは、日本にとって合従連衡政策を放棄し、大陸から手を引くチャンスでもありました。
しかしながら、日本は石油の補給を絶たれたまま軍事力がゼロになることを恐れたために、
これを受け入れることができませんでした。

 とくにアメリカ人にはなかなかここら辺の事情が理解できないことでしょう。
アメリカだけではなく色んな国が日本人がパール・ハーバーをやった理由がわからず、
日本人は不気味な戦争好きなやつらだ、と勘違いしてしまう。
 後に旧ソ連があそこまで軍拡をおこない世界に影響力を広げるとは、
当時誰も確信を持って思っていなかったはずです。だからハル・ノートをアメリカも叩きつけたわけです。
 ともかく、日本はリーダーシップを発揮するポジションに座ったために、
それを手放せず、ついにはパールハーバーが起こったわけです。
 リーダーシップを手放せというのは簡単ですが、アメリカを見ていればわかるように、
そのポジションに座ると、大戦の後始末に借り出され、
第二次世界大戦後にはフランスから引き受けたようなベトナム戦争、イギリスが投げ出したイスラエルへの支援。
そして日本から受けた、台湾と韓国への支援など散々引き受けているわけです。
 もともとアメリカはモンロー主義や平和主義的な側面も持った国ですが、近代の流れを掴んでいないと、
イラク戦争をやらかした超軍事大国の支配者という側面のみでアメリカを批判し、罵ってしまうことになります。
 こういったことから、近代史が抜け落ちたような感のある中東の民衆も、アメリカが中東を狙う黒幕だと誤認してしまう。
ついには9・11テロにまで発展してしまい、アメリカは2000人以上の死傷者を出してしまった。
 こんな面倒を引き受けても、それが嫌でも指導者という立場は簡単に捨てられるようなものではないのです。

 話を戻しますが、近年、アジア共同体構想というEUのような合従連衡構想がでてきてしまいました。
しかし、すでに日本は戦争放棄憲法と日米安保により、近代に受けていたプレッシャーからほとんど解放されていました。
そもそも日本支配が嫌だったはずなのに、なぜ、アジアがそんな統合を必要としているのか日本人にはピンとこない。
 簡単にいうと現在、中国の台頭とアジア共同体が遠因で、日本国内で戦略論が巻き起こったわけです。
アメリカや白人の影響力を極力除いてアジアブロックをつくろうという魂胆は、
日本にすれば百年以上前の自分の戦略とかぶるところがある。
「そんなことなら、あのとき日本が立憲君主国となったとき、アジア皆で同じようにすればよかったじゃないか」
といったことを僕なんかは考えてしまう。 
 それにしても、軍事政権や共産主義が集まる場所になぜ民主主義の日本が統合されなければならないのか?

 中国や韓国の不満というのは、日本が先に立憲君主国スーツを着て裏切ったし、
日本は一般人レベルで平和主義者の顔をするけれども、現実の政治はとても充実した軍事力を備えている。
そういった一般と政治のギャップが理解できないし、そこから不信感や猜疑心が発生している。
 韓国にすればパワーバランスによる従属関係はあったけれども、併合して支配した国は日本しかいない、
隣に戦争をしまくった国が存在し、復活して経済大国になり、軍事力も持っていて、非常に複雑な気持ちがするのでしょう。

 日本自身の憲法改正論は長く続いてきましたが、1990年代湾岸戦争で罵倒ショックを受け、
・世界が求める日本への治安維持活動参加要求の実現
・北朝鮮のミサイル政策などの脅威への対応
・中国の軍拡と台湾独立への武力行使法案による周辺地域不安定化要素への対応
・シーレーン防衛への不安
という四点からさらに活発になってきたものですが、前述したように、中国と韓国は不満を持っている。
そしてさらに日本という国は、中韓がアジア共同体に参加してリーダーシップを発揮する場所に参加せず、
いまだに米国なんかとつるんでいて気に入らない。
 百年前と比べて、日本と中国の、合従連衡を推進する立場が入れ替わっているともいえるかもしれません。
 アジア共同体と大袈裟にいっても政治的には将来まったくどうなるかわからないような代物なのですが。

 韓国を眺めていると統制権を返してもらおうとしたり、軍拡をしている。
自分で軍拡しなければいけない状態に追い込んでいっていて、日本人には不思議な感じがする。
僕はノムヒョン大統領をポピュリストで左翼軍拡主義者だと思っています。
韓国をきたるべき合従連衡時代に備えて、日米中に負けない発言力と指導力を持たせようと孤軍奮闘している。
アジア共同体のなかの、国連にたとえると安保理メンバーのようなポジションを目指して頑張ってる。
アジアのバランサーは何の中間に入ってバランスをとるのかというと、
韓米同盟とアジア共同体に片足ずつ突っ込んでバランスをとりたいのでしょう。

 そこで、日本を見ると小泉首相は日米同盟強化をしてしまった。
中韓は靖国問題も輪をかけておおいに気に入らないのでしょう。
 しかし日本は敗戦の痛みと後悔、そしてアメリカを眺めていて、
あんな指導者国ポジションなんて、もう懲り懲りだ、という思いが非常に強いと僕は考えています。
それに二度もアメリカを敵にまわして争いたくない、という気持ちもあるわけです。
 リーダーシップを保とうとすることがどれだけ国力を消耗するか、日本は知っているのではないでしょうか?
恥も外聞もなく、ぽいっと捨てられるなら捨てるでしょうし、そういう決断をする国もあるでしょう。
しかし中国が同盟国の北朝鮮をあれだけ苦労しながら面倒をみているという現実を考えると、簡単にはいかないわけです。

 そのなかで、もう指導者になりたくない日本はとりあえず、
このまま日米同盟を維持、強化したほうがベストに近いと考えたのではないでしょうか?
 日本は敗戦により、アジアを西洋植民地支配から守ろうというプレッシャーから解放されました。
ほとんどの国が独立して国連に参加した情勢のなかで、いまさらアジア共同体に誘われても困るわけです。
それでも経済的なことからお付き合いで参加しているのがいまの現状でしょう。
 年金や国債で困っているなか、
もしもアジア共同体の一員となれば日本はどれだけ出費をしなければいけないのか?
フランスもドイツもEUを支えるために多額の出費を強いられています。
FTAが遅れているといっても、これが日本にどれだけ利益を与えてくれるかは不透明なところがあるのではないでしょうか。
そこらへんは経済に強い方に考えてもらわなければなりませんが、
政治としては日本は、こういう、合従連衡という新選択があらわれた混乱の最中、
小泉政権のもと日米同盟の強化へと進んだわけです。