ちいさな子ねずみは他のネズミとはちがって檻のなかで暮らしていました。
ここはぐらぐら揺れて気持ちがわるい場所でした。
檻のそとのネズミはここを船と呼んでいました。
どこへいくかは子ねずみにはわかりません。
ただこの船が傾くごとにネズミは元いた場所に戻ろうといって、逃げ出していきました。
ネズミはいよいよダメだろうと大勢逃げ出しました。
子ねずみは檻のなかにいたままです。
ネズミと逃げ出す最後のねずみは良心が咎めたのか、
子ねずみを檻から出してくれました。
「いったいどこへ行くの?ここは?」
「他のくにさ、ここはおまえの生まれたところだ」
「くに?・・・・」
「おまえのおかあさんみたいなものさ・・・・だが、ここはもうだめだ沈没する」
そういうとねずみはすばやく船から逃げていきました。
子ねずみがぼうっとしていると。
一人の老ねずみが舵をにぎっていました。
「逃げないの?」
「・・・・はやく逃げなさい、ここは危ない」
「でも、おかあさんをおいてにげれないや」
「俺は舵をとるのでせいいっぱいだ・・・坊やを逃がしてやれないんだ、はやく逃げなさい」
「沈没ってなに?」
「船が沈むことさ、そうなるといけない。この船は死んでしまう・・・・」
「ぼく、おかあさんをまもるのはおとうさんだって知ってるんだ、ぼくも手伝うよ」
「坊や・・・・バカをいってはいかん」
「ぼく、親がいないんだ。 ・・・ぼくがこの船をささえる最後のねずみになるよ。
だから、あなたたちをぼくのおとうさん、おかあさんって呼んでいいよね?」
「坊やには希望がある。それを捨ててはいけないよ。さぁ逃げなさい」
「ぼくの希望はあなたたちだよ」
大きく揺れる船は暗闇をすすみ、どこへいくのか見当もつかない。
船にはネズミはもういなくて、2匹の老いたねずみと子ねずみが操舵をするのみになりました。
この先は激しい嵐が待っていると老ねずみは子ねずみに教えてやりました。
そしてこの船はもう嵐に耐えることはできないとも教えました。
それでも子ねずみは逃げず、老ねずみが操舵をしながら諭すうちに嵐に挑むことになりました。
船は激しい痛みのなかで、この2匹のねずみをこくみんと呼び感謝しました。