ちくわはオバカンなので、基本的に同級生は退職しているか、それからの延長戦で同じ職場で嘱託扱いで働いている。

希望すれば65歳まで働けることになってんので、みんなだいたいそうしながらじゃね、いやあ給料7掛けになっちゃったよお、などと愚痴言いながらじゃね、わりに普通通りに働いているのでした。

ただ、現役時よりは責任も無いみたいでね、気楽に働いてるよーって人も多くてじゃな、やってることは同じなのに給料安いのはケシカランとかはあまり言わないみたいじゃな。(ちくわは言うべきなんじゃないかなーって思うけどね)

 

まあ、それぞれの受け止め方なんじゃろうね。

ただね、みんな高校時代からのお付き合いになるんじゃけどさ、ここまでの道のりというか軌跡を振り返るとさ、いまこの歳にみんななっちまっていることにじゃね、ちょっと驚くざんすよ。「たじろぐ」感あるんじゃな。信じられないっていうかね。

現実にみんな歳をとって老け込んでいて、そろそろたそがれの時刻を迎えていること、にじゃな。

おいおいいつの間に? って気持ちがどうしたって湧くのじゃな。

あんなに若く溌溂としていた友人が、一斉にしなびた感じになっている現実は、もうね認めざるを得ないわけなのに、なんでこんなにも時間が経ってしまったんじゃ? って疑問みたいのが後から付いてきちゃうって言えばいいのかな。

気持ちは変わっていないつもりなのに、立ち位置や身体はそれにふさわしいように変わっている、それを眺めてから改めて驚いているような感覚。

 

ちょっと信じられないよお、ってどこかで思ってる。

 

いつもと同じようにしていたのに、気が付くと知らない場所に居た。ちょっとどう伝えたらいいのか分かんないのじゃけど、そんな気持ちがありますな。

少年老い易く学成り難し 一寸の光陰軽んずべからず

ちくわがこの言葉を教えられたのは小学校卒業の時だったと思う。担任の先生が書いてノートに書いてくれたのざんす。

最近になってこれは滑稽詩の戯言で、いままで習っていたような含蓄のある物ではないって言われているようなんじゃけれど、それはもういいとしても、このまばたきする間に激しい眩暈を起こしたようなこの感覚について、うまいこと言葉にしているように思える。

 

みんながみんなこの歳になって愕然とするわけじゃないと思うのじゃ、こうなることを予測してあらかじめ策を練る人もちゃんと居たりしますわね、それこそ人生何回目やってんだろうって人。

幼いときから自分を律し、年老いてから慌てないように備える人。

 

まあ、ちくわはそれとは程遠い呑気な生活していたので、もしも次に人間やれるとしたらちゃんと備えておきたいな思います。

そんなこと言っても、まただらだらと無為に過ごすかもだけどね。えへへ。

 

「バーベキューやる。明日やる。来い」

という無作法すぎる連絡をもらった。

明日って金曜日なんだけどなあ、普通に仕事してるっつうの。

定年後もあくせくしないで済む友達は、もうすでにリタイアして悠々自適な生活をしてたりする。子供も巣立っちゃったりしてるので、時間を持て余してるのかもしれない。羨ましいことじゃ。

お前ら曜日の感覚がおかしいぞ、週末の忙しい金曜日とか、しかも前日お知らせとか何考えてるんだよ、失礼極まりないな、ほんとうにプンプン激おこ丸じゃ。

などと言いながら、仕方が無いので出席してやる。

ほんとに万障繰り合わせの上なんだかんな、感謝してよね。なのじゃ。

 

とはいうものの、これが楽しい(笑)

それぞれの奥さんも加わりながら、美味しい食材を次々に焼いていく。

学生のころに比べたらなんて贅沢なものだろう。

この面子でよくキャンプしたけれど、まずは着いたら焚火熾す竈から作らなきゃだったし、自分が座るための具合の良い岩を調達しなきゃならなかった。山の中に入って火にくべられる薪集めしなきゃどうにもなんなかったし、食べ終えて片付けしたらすぐに次のご飯のために動かなきゃならなかった。食材を置くための適当なテーブルなんかも無かったなあ、仕方なくなんでも直置きだったぜ、そういえば。

バーベキューとかしても、風向きによっては煙に巻かれて泣きながら食べなきゃだったし、火が強すぎて割り箸持つ手がチリリンチョしたり、いやいやなかなか大変だった。

キャンプって過酷なものじゃったんじゃよね。

 

着いたら全部用意してあった。いまや調節できるガスコンロの火にベンチにテーブルじゃ。コーラに紅茶にピザにデザートじゃ。なんてこったい。

 

王侯貴族かってくらいに進歩してるなあアウトドア用品。便利すぎんだろ。

 

懐かしい話もしたし、旅行の話も出たし、それぞれの健康の話なんかもした。

気心知れてるから気を使うことも無くて、久しぶりに心から笑えた。

みんなもれなく歳をとった。

良い表情になっていた。

 

ちくわはまだまだ働かなきゃならない。

働くことは苦にならないし、そんなもんだろうって考えていたから、なんていうこともない。

けれど、こういう日があると、少しだけ羨ましくもあるね。

もちろん少しだけだけれどね。

逆にこんな時間をもらえて羽根を休められた気がした。ほっとした。ありがたいことじゃな。

仕事が入ったので、すまぬすまぬと言いながら食い逃げ気味に片付けもせんとその場を後にする。

今回はさすがにアウトドアは寒すぎたので、また暖かくなったらやろうやと約束した。

 

ほんと、暖かくなったらまたやろう。

今度はサザエでも持って行くよ。

じゃあまたね。

ただ、あれだ、酒飲めないのは辛いわあ。

いいお肉にはいいお酒だろうってちょっと思ったね。

まあ、いいけどさ。