前にも言ったけど、ちくわは幼稚園で用心棒してる。
用心棒とはイザという時、とっさに飛び出して行って、依頼者の命を守るという仕事じゃ。
まあ、つまり、イザという時が来ない限り、これといった仕事は無いのであった。
なので、畳の部屋で立膝で酒飲んでるのが普通なのじゃが(そうなん?)、さすがにそうはいかんので、何か仕事がないかハイエナの様にうろつきまわっていたりするわけじゃ。
だいたい鉢植えの水まきやら、傷んだ遊具の修理とか、繁る樹木の剪定とかなのだけど、お弁当のクラス別に分けるのなんかは重要なもののひとつじゃ。
けれども夏休み中に遊具は全部新しくなっちゃったし、こないだ植木屋さんが来て見事なくらいのエグイ刈り取りしてくれたので、する仕事がかなり減ってもうたのじゃった。
ぶらぶらすることが多くなったのじゃ。
そういうわけで、園児からしてみたらば、なにしてんのかよくわからないひとだろうなと思う。ちくわ。
実際にあの胡散臭い人物は何者なのか、外部から問い合わせがあったとかでじゃな、首掛け名札を付けることになったす。
(しかあし、だれが通報したし。こんな無害そうな強面の人間に向かって、失礼しちゃうのじゃ)
なにしてるかナゾではあるのじゃけどな、一部の園児からの受けは最高に良かったりする。
つつかれたり、カンチョーされたり、名前を呼ぶなり逃げて行く遊びが流行ってたり、けっこうおもちゃにされてる。
しくしく(´Д⊂ヽ
まあ、良い遊び相手と認識されてるようなので、あんまり悪いことでは無いな。
ただしじゃ、「だっこしてー」というリクエストは「腰が痛くて持ち上げられない」ってことにしてる。
だって、きょうび女児を抱っこするわけには行かんからのう。男児ならいいかというと、なんかそれも難しくなってないか?(というか、男児だけ抱っこしたら、なんでわたしは駄目なのかって問題になるわね)
なんだこいつ、抱っこも出来ん位弱っちいのかって思ってるよ。あいつら。
なので、ますます蔑んだ目で見られてる様子があるな。しくしく(ノД`)・゜・。
それはいいんじゃけどな、今日ジョウロに水を入れてたら、そんなちくわファンクラブの女児が三人ばかり寄ってきて、周りでけらけらと大騒ぎしてたんじゃがな、ふと気づくとなんとひとりの子が額を叩こうとするではないか。真剣な顔で構えをとっておる。
「おいおい」って言ったら、「蚊がついてる」って言うではないか、まったくもうって立ち上がって額に触れたら、逃げ遅れた蚊がポトリと足元に落ちた。
「あ、とれた」
本当のことだった!
ちくわ、実は疑っていたのこと。
パチンと叩いてから「蚊が居たの」ってシラッと言うのじゃとばかり思っていた。そんな手にかかるほど巧緻な大人を舐めてもらっては困る! って思ってた。
なんてことだ。
ちくわ、心が汚れているのじゃ。ひどいことじゃ。ばかばかばか、ちくわのばかあ。
ちょっと嗚咽が漏れたね。
というのは大袈裟じゃけど、なにごとも疑ってかかってはいかんなと反省したのだった。
そうやってしみじみと棒立ちしてたら、直後に女児Aのカンチョーが炸裂したけど、まあいい。
これは人を疑ったことへの罰だと思えばいい。
おでこもみるみるうちに腫れたけどね。
これもまた人を疑ったことへの罰じゃな。
あーかゆい。
まじかゆい。
そういうわけで、むやみに人を疑うことなかれというのが今日の教訓なのじゃ。
けどさ、騙そうとしてる人もたくさんいるから、全部疑うなというのは無理があるよ。
ショートメールに「ご不在のため荷物を持ち帰りました。下記からご連絡ください」みたいのが来たりするんだもの。
ずっと家に居たってば。
黒猫さんだって佐川さんだって不在票入れてくれるし、会社名も無い、あからさまにアヤシイじゃんね。(しかし、それでもちくわは一度これに騙されそうになったんじゃよね)
人を騙そうとする人々もどうやったら騙せるか知恵をしぼっておるのじゃろう。
ちまちまバイトするより、人を騙してどかんと金になった方が楽みたいな考えもあるんじゃろうな。
盗んだもので一時的な享楽は買えても、それはどこにも通じない袋小路なんだけどね。
どこかで詰むしなにものも生めない。さもしい生き方じゃ。
ちょっと立ち止まって考えてみた。この人なら信頼できるという人ってどのくらいいるだろうなって思ったのこと。
ちくわはけっこう恵まれてると思う。
たとえばここにものすごく大切な大金があったとして、これをしばらく預かってもらえないかと託せる人は案外居るなって思うし、距離を考えなければ、ここを見に来る人にだって預けても大丈夫だなって思う。
ある程度お互いに会話してたら、その人の人と成りは見えてくる。ものの考え方や生き方、そして自分を律する力まで分かって来るよ。
そんでじゃ、それはなによりも硬い安心なのじゃと思う。
顔なじみであることの信用って、最近ではあんまり重要視されないけど、本来はこれよりないくらいの身分証明じゃよね。
というわけで、いつかちくわが現れて「この箱を預かってもらえないだろうか、中身は決して見てはいけませんよ」って言ったなら、どうか二つ返事で預かってやってくださいね。
ええ、悪い組織に追われてたり、犯罪の匂いのするものではないですからね、ええ、そんなことないですよ。
いやだなあ、ほら、この目を見てください。悪いことするように見えますか?
見える!(笑)
もちろんそんなこと頼んだりしないので安心してくださいね。
ああ、しかしおでこが痒い。
今年は夏が暑すぎて蚊も活躍できなかったそうで、今になって暗躍してるそうなのよね。
困った困った。
それにしてもかゆい。