うちの妻が言うのざんす「スズメバチって、名前だけ聴くと『ちゅんちゅん』って言いそうなカワイイ蜂さんなんだとろうなって思うよね」。

まあな。

しかしもうあれでそ、実態と風貌と名前がばっちり合わさってて、カワイイとか思う暇もなく「怖ええぇぇぇぇ!」だろよ。

実際に10月くらいになるとやね、スズメバチさん攻撃的におなりになってやね、全国で刺されちまった情報が流れたりするものね。

あと、蜂の巣撤去の仕事人とかさ。

みんなちゅんちゅんなんて思ってやしないって。

 

ちくわは昆虫大好き少年であったので、夏場は樹液の出るクヌギの樹を来訪するのがルーティンでありましたゆえ、スズメバチさんとは結構早くから親しんでおります。

カブトがあ! クワガタがあ! カナブンがあ! って、なかなか出会えない宝物がやね、木の枝に集まって来てるのに、そこに彼らが混じって「おいしいな樹液♪」とかやっていますと、「あああああ! どうしようどうしよう。くっそお、どうしたらいいんだ」って、ちくわ、どうしよう運動が始まってしまうのでした。ハムレットみたいに樹の周りをじだじだ歩き回るのでしたよ。

ううむ。

木の下でどうしよう運動してても、スズメバチは一向に立ち去りませんので、ちくわ一行は考えます。

殺っちまおう!

手ごろな長めの木の枝を構えまして、えいっ! と一突きにしてしまおうと考えるわけです。(男の子というのは手段を択ばない上にバカですよね)

それで? 誰が殺る?

じゃんけんで、誰がその役をやるのかを決めるわけだけど、緊迫しますなじゃんけん(笑)

そんで、一番ビビリな奴に決まったら、他はもう危険のないとこまで退避して、固唾を飲んで事態を見守るのじゃった。

腰が引けてるやつはしかし、だいたい失敗するね。

「ああ、失敗しおったわあ!」

スズメバチが飛び立って、「ああん? 誰か居んのか? あああん?」って言ってきます。

なのでじゃ「だれも居ません、だれも居ませんからあ」って全力で逃げます。

そういう日常を送っていたのでした。

 

よくもまあ今まで刺されなかったことじゃ。

(根性が据わったやつがやると、スズメバチの頭がコロンって落ちます。彼らは頭と胴体の接続部が華奢な造りになってるんじゃよね)

 

まあ、少年時代の記憶じゃからね。

当時のちくわはカエルだろうがなんだろうが素手で捕獲で来てたす。ええ、コオロギとかキリギリスみたいに噛まれると半端なく痛い虫も平気でした。ヘビはさすがに捕まえたことないけど。

けど、長く離れてると、だんだんそういうの無理になってくるよね。無理無理無理無理。

堕落したものじゃ。

 

そうやって堕落してしまったちくわですけれどもね、先日じゃ、お休みの日にテレビ観てたらね。

窓の外に懐かしい影が。

「おっ」あれは間違いなくスズメバチじゃ、しかもオオスズメバチだなって判ったのね。(世界最大の蜂らしいよ、日本のオオスズメバチ)

ビビビビって羽音がします。

窓の外を飛んでるんだけど、窓が少し開いてるのに気がついたす。10センチくらいかな、換気ってやつじゃ。

うちの網戸は猫共が破ってしまって、つまり、スズメさんはその気になれば押し入ることが出来るわけじゃ。

やばいわ、閉めとくわ。

ちくわはよいしょと腰を上げ窓を閉めるべく立ち上がったんじゃが。

「うわわわわ」

なんということでしょう、スズメさんたら迷うことなくその隙間から室内に侵入して来たではありませんか。

あわわわわわ、外にお逃げ易いように窓全開にします。ほら、出て行ってちょうだいませませ。

しかし、スズメさん一向に気がついてくれません。

部屋巡回コースに入ってしまた。

しかも、ダンテがロックオンしてるじゃあーりませんか。「おっ、なんか捕まえたいぞ」うずうずしてるぅ( ノД`)

ピ、ピ、ピ、ピンチ❕

あわわわわわ、こうなったら隙を見て掃除機で吸い取るのじゃ。そんでダンテはゼッタイに手を出したらいかんぞ。

ダンテっちを抱え別の部屋に閉じ込めてじゃな、掃除機を探してると、スズメさんはテレビの裏に消えて行ったのでした。

 

うおう、どこ行った。

恐る恐るテレビに裏を見る。

カーテンをつんつんしてみる。

テレビを少し前に出す。

腰が引けつつ覗いてみる。

わからん(´;ω;`)

わからんよお( ノД`)

どやんす、どやんす? (佐賀弁)

 

そこではっと思いだしたことがある。

雄蜂なのでは?

もう12月だよ、この時期に蜂が飛ぶ、しかもこんなに自然環境が悪い場所に飛んでくる。そんなわけないですがね。

雄蜂は一定の数生まれてくるのだけど、働かない蜂じゃ、巣の中で宿六を決め込んでヒモ生活をエンジョイする。

そんで分蜂の時期に女王を追って巣の外へと飛び立つ。

結ばれるのはその中の一匹だけ。

そんで結ばれたら死ぬ。

残りは、そう、もうどこにも行くところが無い。

自由。

いつもご飯を運んでくれた働きバチも居ない。

帰る巣も堅く門を閉じたまま。

ああ、自由だ。

 

ああ、寒いなあ。自由は寒い。

 

って死ぬ。

そう、それが雄蜂の人生なのじゃな。

この時期にフラフラ飛んでるのは彼ら以外にはない。

ならば、うちで死ねばいいよ。

大掃除の時にでも乾いた身体を回収してやるから。

そうそう、書き忘れてた。

なんで雄蜂にこんなに寛容なのか? っていうとやね、彼らの生活に憧れてるとかじゃなくて、彼ら雄は刺すべき針を持たないのよ。

ヒモ生活に武器は無粋じゃろ? なので危険が無いからじゃな。(実際は針は産卵管の別形態だかららしいぞ)

そういうこと。

 

そうじゃ、つまり、そういうことにしておいたす。(ええ、テレビ動かすのが面倒くさいって気持ちもあるんだけど)

ダンテにはくれぐれも「ここに行ってはいけないよ」ってバリケードを設置したす。

弟によると「一回飛び上がったよ」らしいのだけどね。また裏に落ちたそうじゃ。

 

あれから三日、もう息を引き取ったはずじゃ。

南無南無。

 

 

 

さて、ここまで書いてやね、ちょっとだけ不安になったことがあります。

ちくわは雄蜂だと判断したわけだけどさ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

女王蜂だったらどうしよう。

女王は越冬するのじゃよ。

そんで、この時期に分蜂する。

あれが女王だったなら、ちくわんちで越冬し、やがて春になると卵を産むでしょう。

えっ?

 

いやいや、そんなはずはないよ、わざわざ女王がこんな家に来るはずないじゃん。やだなあ。

考え過ぎだってば。

はははははは。

 

ははははは・・・・・・・。

これは海で溺れてたカマキリ。

スズメバチの捕食者はとても少なくて、大型の蜘蛛とオニヤンマ、それとこのカマキリ。そのくらいしかいない。

しかし、どうしてこいつが泳いでいたのかはナゾ(笑)

ちゃんと陸地に放してやりましたよ。