my summer #012(てちりさ)


「友梨奈、どうかな?」

「理佐!素敵!」


私は、白地に紫の紫陽花が入ったシンプルなおばさんの浴衣を着せてもらった。


「こうやってお揃いで着ると本当の姉妹みたい。ね、理佐お姉ちゃん。へへへ。」


友梨奈は、叔母さんに私が持ってきたライカのカメラで写真をおねだりしている。しかしカメラを渡すと、叔母さんは頭を抱えた。


「りっちゃん、これ使い方わからないわ。」

「ですよね。携帯で大丈夫です。」


彼女がダブルピースをするので、私はそれに合わせ2つのピースを胸元に作った。友梨奈が横に並んだとき、髪に目がいった。


「かわいい。どうしたの?その髪型。」

「アカネちゃんがやってくれた。」


髪のサイドは編み込まれていて、かわいらしくスタイリングされていた。


「でも、アカネちゃんどうしちゃったんだろう。様子がおかしい。昨日変なもんでも食べたかな。」

「ふふ。雪解けだよ、今日暑いから。で、アカネさんは?」

「受験勉強するって部屋に戻ったよ。」

「他になに話してたの?」

「浴衣似合ってるって言ってくれた。」

「それだけ?」

「あと、指がかわいいって噛まれた。」

「何それ。やば。」

「あと、えー。いや、うん。それだけかな。」と、友梨奈は自分の頬っぺたを両手で覆った。

その様子だと、またあの人は余計なことを口走ってるな。女子は、これだから困る。私も女子だけど。


「ねえ、理佐。祭りに行く前に浦野さんに、浴衣みせに行こう。」

「そうしようか。」







浦野さんの家まで、昨日携帯でダウンロードした、ビートルズのリボルバーを聞いて歩いた。


ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフは、私と友梨奈にぴったりの曲だと思ってる。


I was alone,I took a ride
I didn’t know what I would find there
Another road where maybe I could see
another kind of mind there

僕は一人ぼっちだった
ドライブに出かけて遭遇するなんて
想像もしてなかった
別の道を行っていたら
別のことを見つけていたかもね

Ooh, then I suddenly see you
Ooh, did I tell you I need you
Every single day of my life


そんな時突然君に出会ったんだ
君が必要なんだ 僕の毎日の人生に




またクサイなんて言われたら嫌だから、友梨奈に歌詞を教えるつもりはない。もし聞いてきたら、適当にでっちあげてもいいかもしれない。

最後のフレーズのシャウトがいいんだよね。


浦野さんの家について、インターホンを押すとすぐに出迎えてくれた。


「おじいさん!金庫開いた?」

「まだ、開かな・・・どうしたんだ、ふたりとも綺麗なって。」

「これから祭りに行くの、でもおじいさんに褒めてもらおうと思って寄ってみた。」

「それは、嬉しいねえ。うちの子供が帰って来たのかと思ったよ。」


浦野さんは私たちが浴衣で現れたのがよほど嬉しかったのか、リビングに戻ると「カメラを探す」と部屋中の棚をあさった。


「おかしいなあ。どこにしまったかな。」


しかし、どうやら見つからないらしい。
でも・・・なんだろう。何かがおかしい。私は浦野さんに違和感を感じていた。


「理佐のカメラでいいじゃん。現像したら送ってあげるよ。」


友梨奈は私の首からライカをとると、浦野さんに渡した。


「ライカのフィルムカメラか。それも古い型の。私の持っているのも、この位の世代のライカだよ。」

「まあ、見つからなければ、持ってないのと一緒だけどね。」

「いたたた。確かにそうかもしれんが・・・。それにしても理佐さんは若いのに、珍しいのを持っているね。」

「理佐は、何でも浅く広くかじってるからね。自分で調べなくても聞けば何でもわかるから、一緒にいると楽なの。」

「友梨奈ちゃんは、好きな子には毒を吐く癖があるのかな?」

「え?私、褒めてるんだけど。悪口になってるかな?

「ああ、褒めてるのか。いや、大枠は褒めてるのかもしれないけれど。どれ、理佐さん写真を撮ってもいいかね?」

「もちろんです。ありがとうございます。」



浦野さんは、レコードが飾られているお洒落な棚に私たちを並ばせると、フォーカスを手慣れた手つきで合わせシャッターをきった。


「きっと素敵に撮れてるさ。額に入れて部屋に飾ろう。そしたら、いつでも友梨奈ちゃんに会えるね。」

「え、やだよ。いいよ、飾らなくて。来年も娘さんの代わりに来てあげるから。」


まただ。何かが、おかしい。この違和感は一体・・・。


「あれ?そういえば・・・。」

「理佐?どうしたの?」


この違和感を解くために、部屋にあるはずのアルモノを探した。だが、見回してもそれがここにはなかった。

もし私の読みが正しいのであれば、金庫の数字は誰にもわからないじゃないか!


「永遠に、謎じゃん。」

「謎?何が謎?」

「いや。ううん何でもない。」

「あ、謎で思い出した。ねえ!ねえ!おじいさんさ、あの林のひまわり畑でオバケって見たことない?」

「オバケ?うーん見たことないなあ。」


友梨奈は思い出したくなかった、あの話を持ちだした。


「それは、どんなオバケだったんだい?」

「5年前くらいなんだけど、血に染まるひまわり畑に佇んでたの。白いワンピースの女優帽をかぶった女のオバケが。」

「そんなこと、あるものか。」

「本当だよ。私、見たんだから。で、そのオバケが拳銃を持っていて、それをこっちに向けるの。それから」


友梨奈は指で拳銃をつくり、浦野さんを煽った。すると、その小芝居に即座に対応して浦野さんは両手を挙げた。


そして、友梨奈は「カチカチカチ。」と、玉を入れておくシリンダーを回するフリをした。


回転式の拳銃か・・・。
ん?待てよ。


白い服の女性。
ひまわり畑。
レコード。
歳上の奥さん。
連絡のとれない娘。

そして、回転式の拳銃。





そうか。
金庫の数字は、それがヒントだったのか!