my summer #015 てちりさ





浦野さんの家をあとにして、友梨奈と2人でやってきたのは夏祭りの会場である近所の神社。

参道には軒並み屋台が並んでいる。



「理佐、アレやりたい!」



人混みに紛れても、すぐに見つけられるほど、友梨奈の浴衣姿は眩しい。そんな自慢の彼女と輪投げや、ヨーヨー釣りをして、私は童心に戻ってはしゃいだ。


高台にある本殿からは、隣町の花火が見えるというので、100段はあろうかというモンスター階段を上った。



「スニーカーにして正解だね。」


「友梨奈、下駄履いたことないって言ってたから、よかった。」



出かける前、彼女は下駄を履くのを楽しみにしていたが、こんなこともあるだろうと、無理やりスニーカーを履かせていた。


息を整えてから、いつもの場所だという小さなお堂の陰にお尻をついた。花火が上がる前に彼女は屋台で買ったたこ焼きを取り出した。



「私、たこ焼き好き。」


「あっちちいから、ふーふーして食べな。」


「ねえ理佐、私のことなんだと思ってる?」


「大きい赤ちゃん。」


「馬鹿にしないで・・・あっちー!」


「ほらね。だから、あっちちいから、ふーふーして食べなって言ったの。わかりまちたか?・・・ていうか、全然熱くないじゃん。友梨奈、猫舌なんだ。」


「違う。」



さっきのアカネさんの問い。私にとって友梨奈は・・・。

友達でもなく、妹でもなく・・・赤ちゃんだったようだ。



「バブちゃん。」


「うるさい。」



次に彼女が取り出したのは、大きなりんご飴。

これは正直、私も食べ方がわからない。友梨奈も初めて食べるらしい。



「これ最後まで食べられるかな?」


「がんばれ。」


「おっきい。」



口が小さく、舌が短いせいかチロチロと一生懸命に舐めている姿が妙にいやらしく、見てはいけないものを見ているようだった。



「ん、甘い。」


「赤ちゃんのくせに。」



階段を登ったせいか、少し着物の着付けが乱れ、隙間から白い谷間が見える。


直してあげないとと思いつつ、このまま友梨奈のこの姿を眺めていたい。


髪が飴につきそうになったので、さりげなく耳にかけてあげた。一瞬顔を上げて何かを言おうとしたが、私は「続けて。」と舐め続けるよう促した。彼女は不思議な顔をしながらも、素直に応じてくれる。


出た、時々現れる私の変なところ。


すると、パン!と、隣町の花火が上がった。

でも、今はそんなのどうだっていい。



「アッ。理佐、花火!」


「まだ、やめちゃだめ。残ってるでしょ。」


「花火、見ながら食べる。」


「私から、目離さないで。ほら、舐めて。」



友梨奈の手の上からりんご飴の棒を持って口元に無理やり近づける。目の前に来た、それを彼女は困った顔で舐め続けた。「いい子だね。」と優しく頭を撫でると、猫のように半目になってじっと私を見つめた。

花火の明かりが灯るとりんご飴が、テラテラと光って反射する。自分の唾液をすくうように一生懸命舐める姿が艶めかしい。


なんだか気分が高揚する。私は彼女にいけない感情を抱いているのかもしれない。


この友梨奈は、私だけのもの。

誰にも、見られたくない。



「友梨奈・・・綺麗だよ。」



その時だった。



「あっこんなとこにいた!」


「つぉあ!」



タイミングよくダイスケくんとその友達がやって、私は思わず、りんご飴を掴んで地面に落としてしまった。



「っとに、アンタら家族は、声のボリュームとタイミングそっくりなんだから!友梨奈の守護霊かよ。」



ダイスケくんの友達は、友梨奈の中学の同級生らしく、久しぶりにみた彼女に、みんな驚いている様子。



「ダイスケ、誰だよ。その美人。もしかして、あの文字読めない平手?」


「うん・・・平手。みんな久しぶり。」


「めちゃくちゃ可愛くなってんじゃん。」



浴衣姿の友梨奈に興奮しているようで、私は乱れた着付けをそっと直してあげた。



「おい、お前それ今更だから。絶対好きになるなよ。絶対な。」


「ダイスケ。俺、隣のお姉さん紹介してほしい。」


「理佐さんは無理だよ。お前らじゃ格が違いすぎる。」



パーン!


話を遮るように大きな花火が上がり、ダイスケくん達は私たちを囲むように座った。こうやって彼らに見張られてた方が、花火に集中できるなんてなんとも情けない。

ダイスケくんは、友梨奈の隣に座り花火と彼女を交互に眺めている。


で、それが気になる私。



「友梨奈、花火最初から見てた?」


「ううん。花火は見てない。理佐見ながら、りんご飴舐めてた。アレまだ食べられるかな?」



友梨奈がりんご飴を拾おうと手にかけたので、私はそれを叩き落とした。



「ダメだよ!こっ、これは砂だらけでばっちいから、アリさんにあげよ。今年は異常気象で暑いから、日中は活動範囲を狭めてるんだって。友梨奈ちゃんは、アリさんともお友達なんでしょう?だから、それはアリさんにあげな。代わりにりんご飴以外なら私がなんでも買ってあげるから!りんご飴以外ね!」


「何でりんご飴は、ダメなの?」


「世の中がいけない大人だらけだからだよ!」


「意味わかんない。じゃあ、いいよ。何もいらないから。理佐、今日も一緒のお布団で寝てもいい?」と、私の腕をとると、彼女は天使か悪魔かどちらともとれない微笑みを向けた。俺も寝る!と便乗しようとしている同級生の男子たちの声は、ただ遠のいていくばかり。



そうして、最後の花火がスパークした。