my spring #010 (てちりさ)
それから、翌日も友梨奈は塾の時間までモデルをしてくれた。油絵は順調に描き進めていき、今日は4日目。明日は友梨奈が約束した最終日。、、、。
友梨奈と出会ってから、私は大学に復学している。まあ友人はまだできずに、相変わらずお昼休みになると、学食の端でボッチ飯。
寂しいので友梨奈に連絡をしてるんだけど・・・。
『明日、塾ないならウチで一緒にご飯を食べない?』
既読は早いが、返信は遅い。しかも。
ピコン!
『ok!』と、カワウソスタンプのみ。
「ふふ。また、カワウソのスタンプ。かわいいけどさあ。」
こうして、彼女はいつもスタンプばかりを送る。
『友梨奈、スタンプばっかり〜』なんて、ちょっと文句を言ってみる。
ピコン!
「おっ?」
『ごめん』
珍しく、今度は文字で返ってきた。
『かわいいから許す』
またしばらくして、友梨奈からの通知。
「え?」
『わたなべりさの漢字おしえて』
突然、どうしたんだろう。
『渡邉理佐だよ。どうしたの?』
『渡邉理佐』
『そう』
『覚える』
私に少しでも興味もってくれたのかな。そっけないやりとりだけれども、嬉しい。
友梨奈って、本当にかわいいな。
「友梨奈って誰?」
「え?」
背後から声をかけてきたのは、高校からの男友達のユイトだった。
心の声が漏れてたみたい。
「なあ、理佐。そんなかわいいなら、友梨奈ちゃん紹介しろよ。」
「無理。あんたじゃ、高嶺の花だね。」
すると、一緒にいた背の高い友人が
「俺は理佐ちゃんを紹介して欲しいんだけど。」と会話の中に入ってくる。どっかでみたことある顔。
「そうそう。こいつテニスサークルの友達で、テニスの王子様って呼ばれてる、、、」
「油絵専攻のミズキです。」
「ん?同じ専攻?」
「昨日も今日も同じ教室で絵描いてるんだけどな。」
ああ、だから見たことあるのか。
「ごめんなさい!絵を描くのに夢中で。」
半分本当で、半分嘘。昔から興味ないものには目に入らない。なんて、失礼かな。
「いや、大丈夫。今日、認知されただけでも。入学式のときに初めてみて、かわいいって思ったんだけど。それから理佐ちゃんのこと忘れられなくてさ。復学してくれて嬉しいよ。これから、よろしく。」と携帯を差し出してきた。
画面は、ラインのQRコード。
私もなかなか強引に友梨奈の連絡先をゲットしたけど、相手の有無も言わせぬ、この状況。あんまり印象よろしくない。反省。
断る理由もないので、私はミズキと連絡先を交換した。
「おい理佐。そんな嫌そうな顔すんなよ。」
「は?してないし。」
私は嘘をつけないタイプらしい。
「ごめんね。俺、気になる子には強引になっちゃうんだよね。」
「分かる。私も、そうかも。」
「理佐ちゃんもそうなの?嬉しいな。今日は授業終わった後は用事ある?サークル見にきたりとか、」
ピコン。と、良いタイミングで友梨奈からメッセージが届く。
スタンプのカワウソが「返信頂戴!」をおねだりしている。
「ああ!今日はごめん!先約があって。また今度でも良いかな。」
「理佐、また男かよ。」
「え。理佐ちゃん彼氏いるの?」
「いないよ!ユイト、余計なこと言わないでよ。」
「でも今、理佐ちゃんすごい嬉しそうな顔してたよ?女の顔って感じ。」
「はあ?」
「まあでも、彼氏じゃないんでしょ?俺、誰が相手だろうと、遠慮なくいくから。よろしく、理佐ちゃん。」
この日、テニスサークルのイケメン枠。テニスの王子様ことミズキくんには、私の大学生活において「頭がパーのめんどくさいヤツ」という特別な称号を与えてやった。
まあ、おかげで専攻のクラスに馴染めるようになったんだけどね。