my spring #011 (てちりさ)
駅前のスーパーで夕食の食材を購入。
お菓子と飲み物を買いすぎちゃった。
夕方の1番混む時間帯。主婦のおばちゃんたちで溢れかえっている。間を割ってなんとか出口に出ると、笑顔で手を振る友梨奈が待っていた。
セーラー服は、目立つ。
「あれ?偶然?」
「このスーパーで買ってそうだなと思って・・・。ふふ。当たった。」
そう言って、嬉しそうに袋を1つ持ってくれた。
「ねえ、理佐。飲み物買いすぎじゃない?りんご、コーラ、お茶、牛乳。誰か他に来るの?」
「いや。こないよ。何が好きかわからないから、買いすぎちゃった。だって友梨奈、ラインで聞いても返信しないじゃん。」
「ごめん。」
冗談半分で言ったけれど、当の本人は必要以上に落ち込んでいるので「大丈夫!すぐ慣れるようになるよ!」と肩を叩いて、励ます。
「今晩、何か食べたいものある?」
「理佐が作れるものでいいよ。」
「チャーハンとかでもいい?」
「うん。チャーハン好き。あと、あのね。うーんと・・・私、人の家でご飯食べるの初めてだから、その、どうしたらいいかな。」
「どういうこと?」
意味がわからず聞き直してみるものの、やはり質問の通り。ご飯に招かれたときの作法がわからないから、教えてほしいとのこと。私は思わず笑ってしまった。だってそんな事、普通聞く?
「いいんだよ。何もしなくて。ただ、おいしそうに食べてくれればいいよ。マズそうに食べたら、へこむけど。」
これが答えになったかはわからないけれど、
「わかった!」と、謎の気合を見せてくれる。それから、夕方5時を知らせる童謡が流れ、友梨奈は鼻歌を歌った。
「ふふ。」
「なに笑ってるの?」
「友梨奈があまりにも、ピュアだから。」
「なにそれ、馬鹿にしてる?」
「いや、ほめてる!ほめてる!」
「なら、いいけど。」
アパートにつくと、さっそく作品の続きを塗っていく。夕ご飯が楽しみなのか、友梨奈は終始ニコニコしている。私は今日は早めに切り上げようと提案したのだが、これはこれ、それはそれだからと、結局いつもの時間まで描かせてくれた。
夕食を調理している間、友梨奈は部屋にあった名画の画集を楽しんでいる。休日は美術館によく行くらしく、先日はクリムト展に足を運んだらしい。
「なにが好きだった?」
「横顔の女の子がかわいかった」
ヘレーネの肖像画かなあ。
金箔の絵でお馴染みのクリムトだが、その作品は金箔スタイルを築く、以前に描かれた初期のもの。クリムトが、覚醒するの前の作品・・・。
食卓にはキムチチャーハン、わかめスープにサラダと、リンゴがならんだ。
「できたよー」
「わあー、すごーい。おいしそう。」
私は、記念に携帯で写真を撮っていると、私も!と友梨奈も携帯を取り出す。この間、使い方を教えてあげたカメラ機能をさっそく使ってくれている。携帯が板についていくのが嬉しい。
「何枚撮る気?」
「いっぱい撮る気。」
初めて人の家でご飯を食べるという彼女は「おいしい!おいしい!」と教えた通りにおいしそうに食べてくれた。
そういえば、私も東京に来てから家族以外と初めてご飯を食べるなあ。やっぱり、ご飯は人と食べている方が美味しい気がする。
友梨奈も、そう思ってくれているといいな。