ハロウィンナイト前 (てちりさ)



ハロウィンの渋谷に行ってみたいと平手に話したら、私も行きたいというので、仕事終わりにみんなに内緒で町へ繰り出した。



「理佐、大丈夫かな?これ、バレない?」


「仮面で、ほぼ顔見えてないから、大丈夫。メンバーと会ってもわからないよ。私も大丈夫だよね?」


「欅坂46の渡邉理佐はバレてないけど、綺麗なお姉さん感は出てるよ。」




前日に用意した仮装グッズ。

本当はハリーポッターをやりたかったんだけど、それに仮面つけちゃうと変かなと思って辞めた。



話し合いの結果、ここは無難に行くことになりドラキュラとシスターのコスプレを購入。ところが、シスターのスカートの丈が予想以上に短かった。禁欲の修道女がこんなかっこう、絶対ダメでしょ。

私は、人混みの中にミニスカてちを歩かせたくなくて、自らシスターを選んだ。


よって、平手はドラキュラの格好をしている。




「ねえ、理佐。このかっこうなら何してもバレないよ。自由だね。」




山手線には、既にコスプレをした人たちが乗っていて、私たちはそれに溶け込んでいる。


平手は普段、バレると面倒だからと仕事以外では、原宿や渋谷といった大きな街を避けている。

ところが、今回は、前日の準備から楽しそうにしてくれていて、誘って良かったと思った。




「人がすごい。」


「平手、離れないようにしてね。」




渋谷駅を出ると人ごみが、想像以上で隣で揃って歩くことさえ難しい。なんとか腕を繋いで、平手を守るようにして進んでいる。




「理佐!見てあれ!サイマジョの格好してる人いるよ!あっちには、黒い羊がいる!」


「欅坂46、人気だね。」


「だね。あれ誰に寄せてるんだろう。」


「黒髪ショートなんて平手しかいないでしょ。

まぁ、でもやっぱ本物の方がかわいいけど。」


「ちょっと行ってくる!」


「あ、こら!」




平手は私の腕を離し、サイマジョの格好をした偽平手に握手を求めに行ってしまった。



仮面つけてるからって、それはまずいよ。

なんか、話し込んでるし・・・。サイマジョ踊ってるし・・・。あとで、説教だな。



手を振って、こっちにくるようにサインを出す。私に気づいて、戻ってこようとするが、人の波に揉まれて、なかなかたどり着かない。




「平手が離れたのが悪いんだからね。」


「りさあ〜。待って〜。」



私を求めて、人混みを一生懸命かき分けてくる姿がかわいい。いじわるだけど、助けには行ってやらない。



「かんばれ〜。」



なかなか、こっちに戻れないので、やれやれと手を伸ばしてあげた。平手は私の手を掴むと、今度はガチッと腕に手を回して硬くホールド。


「理佐、離れちゃヤダ。」


「あー。もう、説教しようと思ったのに、かわいいから許す。」


「今日は、かっこいい感じできたんだけど。」


「そういうことじゃないよ。平手は、どんなかっこうしても、かわいいの。黒いTシャツで着たって、一周回ってかわいいんだから。」


「意味わからない。」



意味わからないのも、かわいい。

私には、とにかく全部かわいい。




「ねえ、大丈夫?さっきの人にバレてない?」


「大丈夫、すごい低い声でお話ししたから。」


「それでも、ファンに行くのはやめてよね。分かる人にはわかるから。」


「でもあの人、私じゃなくて理佐が好きって言ってたよ。」


「そうなんだ。」


「そう。だから、私も理佐が好きって言っといた。私の方が理佐のこと好きって言っといた。理佐、大好きって言っといた。」


「ちょっと・・・。」




仮面つけて顔見えないからって、今日の平手は、やけに素直。私も、きっと今すごくにやけてると思うから、顔が隠れててよかったよ。




「ああ、もうかわいいの限界突破。」




平手の背中に手を回して苦しいくらいにギュッーっと抱きしめてやる。頭からお尻まで、思う存分なでなでしても、今は誰も気に留めない。




「はあ。人前で、こんなことできるなんて、ハロウィン最高。」


「あっ理佐!理佐!」


「ふふ。なあに?友梨奈ちゃん。」


「靴がない。」


「え?」




平手の足元を見ると、右の足には靴下のみが装備されている。


右の靴はいずこへ?








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いつもありがとうございます。

理佐ちゃんのメッセに感化されちゃいました。

後編あります。