ハロウィンナイト後 (てちりさ)



平手の右の靴が迷子になってしまった。

靴も持ち主によく似てる。




「理佐、あったよ!」



昨日急遽買った、ビニール素材のブーツが目の前で、踏まれまくっている。拾ってみると、ダラーンとだらしなく靴底が垂れており、すぐにでも取れそう。



「これ、履けるかな?」


「しょうがない。靴下で歩けないから履くしかないよ。はい、おんぶしてあげるから、座れるとこ行こ。」


「えー、恥ずかしい。」


「何を今更。この間、何万人もの前でお姫様抱っこしたでしょ?大画面にうつされてたよ。あー、そうか友梨奈ちゃんは、お姫様抱っこがいいのか。」


「いや。おんぶして。」


「うん、いい子。」






多少人気のない場所に座らせて、壊れたブーツを履かせる。靴紐を一生懸命結んでいるけど、なんか変。衣装でよくドクターマーチンを履くけど、平手はいつもうまく履けなくて、最終的に誰かがチェックして、結び直してあげる。




「こないだ、ふーちゃんに教わってなかった?また縦結びになってるよ。教えてあげるから、足出してごらん。よく見て、ここをこうするでしょ、ほらできた。」


「ありがとう。理佐、本物のシスターみたいだね。この服も、似合ってるよ。かわいい。」と平手は私の膝に頭を乗せる。

私は、慌てて避けて立ち上がる。


「そっ、そこのコンビニで、靴底つけるガムテープ買ってくるから、ここで待ってて!左の靴紐も縦結びになってるから、私が帰ってくるまでに、直しておくように!」


「ああ、理佐待って!ヤダ!離れちゃヤダ!」


「甘えん坊さん、すぐ戻るからね!」




あんなとこで膝に頭を乗せるなんて、反則!ドキドキしちゃったじゃん!







近くのコンビニでガムテープを買う。仮面をかぶっているとはいえ、平手は国民的アイドル。いや、私もそうなんだろうけど。

身動き取れない状態だし、早く戻らなきゃ。



その時だった、ドンっと横から人がぶつかってきて、私はよろけて倒れてしまった。なんとか、仮面が外れるのを阻止したものの、ガムテープの入った袋を飛ばしてしまう。


「お姉さん、大丈夫?」と30歳くらいのお兄さんが手を差し伸べてくれた。




「すみません。ありがとうございます。」


「これ、お姉さんの荷物?ガムテープ持って何するの?ねえ、どうするの?」




助けてくれたのはありがたいけど、かなり酔っ払っている。めんどくさいのに絡まれてしまった。




「ずいぶんエッチなシスター。足が長くて綺麗だね。お姉さん、絶対べっぴんさんでしょ。顔見せてよ。」



ミニスカから見える私の足を凝視される。鼻を伸ばして欲情しているのがよくわかる。

それから、男は私の仮面をとろうと迫ってきた。事を大きくしたくなくて、声を出せない。


早く平手の元に行きたいのに・・・。




その時だった。




ガンっと男の頭に何かが当たり、「痛え」という悲痛な声を上げ転倒する。そして、その何かはコロッと私の足元に転がってきた。ドラキュラが履いているはずの、ビニール製のブーツだった。




「ああ、もう。理佐が結んでくれないと靴が履けないよう。」



ブーツの投手は、もちろん平手。



「平手!?」


「理佐!どうしても、縦結びになっちゃう!」


「痛えなあ。何が飛んできた?」



男は頭を押さえながら、辺りをキョロキョロ見渡している。酔っ払っているおかげで、頭が回ってないみたい。助かった。



「トリックオアトリート!お菓子くれなきゃ、血を吸うぞ。」



平手は男に捨て台詞を吐き、私の手をとって走り出す。なんとか、その場を切り抜けた。


ときどき、面をくらうようなことをやってのけちゃうところは、やっぱりかっこいい。うちのセンターはズルイ。




「だから、離れちゃヤダって言ったんだよ。」


「ごめんね。助けてくれて、ありがとう。でも、あんまり無茶しちゃダメだよっと・・・!?」



突然、平手が私の腰に手を回して、胸に顔をグリグリと埋める。



「お説教はイヤ。理佐に何かあったら、私が助けるもん。」


「ふふ。嬉しい。でも、平手に何かあったら、私、泣いちゃうから。」


「泣かないで。」


「今日だって、平手いっぱい無茶したから、すごく心痛んだんだよ。だからね・・・。家に帰ったら、反省してこの服着てね。」



ハッと顔をあげて、平手は私の顔見る。



「は?ヤダ!なんでそうなるの?理佐がシスターがいいって言い出したんじゃん!」


「私が何のために、こっち選んだと思う?平手がさっきの私みたいにならないように、仕方がなく選んだんだよ。我慢して街歩いたんだから、家帰ったら絶対着てもらうから。」


「家で着て、どうするの。」


「どうもしないよ。私が鑑賞するだけ。」


「う〜ん。わかった・・・。」




私が何のために犠牲を払ってまで、これを着たのか。1番の理由は平手に、この服を着るように仕向けるため。心咎めた、みだらなシスターを家に帰ったら独り占めしよう。




「こうして、人前で抱きしめるのもいいけど、やっぱり早く顔がみたいなあ。平手はどう?」


「あ。理佐!理佐!」


「ふふ。なあに、友梨奈ちゃん。」


「靴、置いてきちゃった。」


「・・・もう、大好き。」





守って、守って、守られて、守って・・・。












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短編は、こんな感じでいいのでしょうか。

長編は、どうしても小説になってしまいます。

いつも読んでくれる方、嬉しいです。

結末つまらなかったら、すみません。