my spring #015 (てちりさ)
最寄駅を降りると、雨が止んでいた。
夏は近い。
大学もまもなく夏休み。小さい頃は楽しみだったはずなのに、年々、あの頃のような気持ちが薄れている気がする。
「友梨奈は、どうかな。」
今年は一人で過ごしそうだ。
街灯の明かりがつきはじめて、街は夜を迎えようとしている。今夜は月が雲で覆われて、よく見えない。
そういえば高校時代、東京の大学に行きたいと友人に打ち明けた時、都会は星が見えないと教えられたのを思い出した。確かに、今夜は見えそうにない。
家の裏の公園を踏み入れると一層静けさは増し、キーキーとブランコが鳴く声が聞こえる。
こんな時間に誰かが漕いでいる。
その誰かは、誰かと共にいるのだろうか。
もし1人なら、この孤独を共有できるかもしれない。
その人は誰かを待っている?
今の私のように。
ブランコを漕ぐ、人影がゆらりと伸びて私と重なる。
「友梨奈・・・。」
そこにいたのは、紛れもなく私の探し人だった。
「 やっと、見つけた。」
「あ、理佐。何してるの?」
「友梨奈を探してた。」
「ふーん。」
「そっちは?」
「塾までの暇つぶし。」
「こんな場所で?」
「うん。」
「そっか。」
ポツリポツリと話す、この声が聴きたかった。
私は少し湿った隣のブランコに座り、友梨奈の横顔を覗いてみる。彼女は私と目を合わせるのを避け、真っ直ぐ何もない暗闇を見ていた。
今すぐに抱きしめたいのに、彼女はそれを許してくれない。
「友梨奈。手紙、読んでくれたんでしょ?」
「なんの話?」
「とぼけたって、わかってる。手紙、私が挟んだページと違うところに挟まれてたから。」
友梨奈は手紙を読んでいる。
だから、私は用済みだと判断して回収した。
「私じゃないかもしれないじゃん。」
「かもってなに?それじゃあ友梨奈が読んだってことね。」
鳴いていたブランコは徐々に口数を減らし、揺れるのをやめた。
代わりに友梨奈は重たい口を開いた。
「見たけど。読んでない。」
いまだ彼女は虚な目で、闇を見ている。
闇のずっと先を・・・。