my spring #017
家に着いて友梨奈が食べたいとオーダーしたオムライスを作る。卵を1番シンプルなスタイルにまいたら、友梨奈がケチャップで仕上げてくれた。
私のオムライスに書いたのは、卵を大きくはみ出して、お皿からこぼれそうな「理佐」。
「ちょっと。名前でかいよ。」
友梨奈のオムライスにも、、、「理佐」
「理佐?なんで、どっちも私なの?」
「漢字、忘れないように。」
料理をしている間に、ノートに私の名前をたくさん書いて練習してくれたらしい。
「ありがとう。」
「でも渡邉は、まだ書けない。だって、理佐の渡邉見たことないもん。私の知ってるワタナベと違う。なんで、あんな難しいの。」
「私に文句言われても・・・。」
友梨奈は、小学校低学年までの文字は読めるらしい。ただ、どこを区切って読めばいいのか、わからないため、読めても理解できないこともあるそう。記号と文字の区別も難しく、考えすぎると文字が泳いでくるという。
高校受験は問題用紙の読み上げが許された、今の学校を選択するしかなかった。
小さな口にいっぱいご飯を含んで、もぐもぐ食べている友梨奈は、一見どこにでもいる女子高生。
いろんな苦労があるんだろうけど、見た目じゃ、わからない。
「美味しそうに食べてくれるね。ふふ。ねえ、寮生ってお泊まり禁止なの?」
「禁止じゃないよ!なんで!?」
「大丈夫なら、今日うち泊まっていかないかなあって。」
「えっ!いいの!」
そういうと、お茶碗を口まで上げて、ご飯を慌ててかきこんだ。
「そんな、慌てて食べなくても。」
「だって、お泊まりセットとりに行かなくちゃ!」
「ふふ。お泊まりセットってなんか、懐かしい響き。着替え貸してあげるから、取りに帰らなくてもいいよ。」
「でも、歯磨きセットが・・・」
「歯ブラシ、新品の余ってるからあげるし、歯磨き粉も使っていいからね。」
夕食を食べ終わり、2人でお片付け。友梨奈は私がお皿を洗うというので、任せてるけど、手から滑らせないか不安。タオルで洗った皿を拭きながら、横目で彼女の手元を見ている。自分でやった方が早いんだろうけど、こういうのはやらせてあげた方が遠慮がなくなるよね。
お皿を洗い終わり、ソファーに座ってテレビを見ようとすると、友梨奈が私の前に立ってモジモジしている。
「どうしたの?」
「あのさ・・・。お泊まりなんだけど・・・。どうしていればいいのかなって。」
「私の隣に座って、テレビを一緒にみよう。好きなチャンネルに変えていいからね。」
お泊まりど素人、平手友梨奈は、なかなかの堅物。リラックスできるよう、宿主が厚くおもてなしして差し上げよう。
お風呂はどれがシャンプーとコンディショナーで、ヘアパックはどれか細かく教えてあげた。ヘアパックは使ったことないらしいけど。
「今あがりました!」と浴室から出てきたのは、髪がベタベタの状態の友梨奈。
「ちょっとべたべたじゃん。髪乾かさないと。いつも、自然乾燥なの?」
「時々、ドライヤー使う。」
「髪傷んじゃうから、なるべくした方がいいよ。」
ドライヤーをリビングまでもってきて乾かしてあげる。熱で次第に眠くなってきたのかコクコクと頭を揺らしている。私の3年前もこんな感じだったのかな?そんなことないよね。
「あ、化粧水してない。友梨奈、化粧水つけなきゃ。」
「ん?しないよ。いつもしてない。」
「今日から、私の家に来たらするの。この透明が化粧水。この白いのが乳液。この丸いのが、そのあとに塗るクリームだけど。まぁ、これは塗っても塗らなくてもどっちでもいいか。」
「理佐の家、いっぱいやることあるね。」
「お泊まりの作法。郷に入れば郷に従わなくちゃね。友梨奈の肌は私が守ってあげるからね。嫌になった?」
「ううん。嫌じゃない。」
ペチペチと化粧水をつけながら、あくびをしている。もうおねむの時間のようだ。