多分理由がない限り
ここにいるわけないと、思ってしまうから。
何人かの男性社員とも話したが、
ここに来た理由やきっかけは誰も聞かない。
面接に行って気づいたら、こんな所で悩んでる。
本社工場から逃れても、悩みは解消されず、
知れば知るほど不安 になる。求人欄の業界屈指
の安定企業見出しにも腹が立つ。
40歳まじかだと仕事が決まらない
焦りもあったり、何かに押しつぶされそうな
気持ちになりどうしようもない。
仕事が決まらないそれだけで死にたい気分
にもなって辛いのだ。

ミホは5月に離婚したばかりだ。
旦那とはずっと一緒にいるつもりだったが
別れるしかなかった。旦那の浮気により相手の
女性が妊娠してしまい、別れる事にならざる
おえない状況だった。相手は、旦那の会社の
若い同僚だ。
家にも遊びに来たりして、ミホも面識があり
挨拶する仲だった。2人が男女の仲だとは
まったく気づかなかった。いつから?
どうして?     私は? いっぱい疑問が溢れて
きた。旦那も32歳の同僚女性にゾッコン
で、「すまない。別れて欲しい。」と
しか言わない。もう自分には、愛情はなくて
精算すべき間柄に落胆した。
元旦那から、弁護士を通じて慰謝料と夫婦の
共有財産の手続きがあった。
すぐに口座に振込まれ、あっという間に
離婚成立した。ミホとの間に子供が居ない
事もあり、元旦那の両親が孫の顔を見たい
という希望もあって、異議を申し立てる
事もせず、ただ嵐が過ぎ去るのを待っていた。
何事も突然にやってくることが多い。
人生のほんの1ページだが、専業主婦として
のんびり構えていたミホとしては、晴天の
へきれきで、しばらくボー然として何も
手がつかなかった。知らない所で自分の
全てが壊され、虚しい気持ちでいっぱい
になった。元旦那は、何を聞いても
「すまない。」と繰り返すばかりで
とりつくしまもなかった。
元旦那は家族として大切な存在だった。
子供が居なくても2人で上手く乗り越えて
きたつもりだった。何が悪かったのだろうか?
きっと妻として至らなかった所はあった筈だ。
毎日の、家事も食事も全力でやってきて
快適につとめた。
思いやりのある人で、毎週ゴミの日は
ゴミ出しを手伝ってくれて理想の旦那だった。
給料も良く夫婦の記念日やミホの誕生日の
プレゼントも用意してくれた。
ミホの両親にも優しく、浮気など疑うところ
は一つもなかった。ただ夫婦関係だけは、なかった。結婚して5年経った頃ピタッとなくなった。
でも、別に何とも思わなかった。
そんな夫婦は日本中に沢山居るはずだ。
離婚成立して1ヵ月もしない間に仕事を探して
なんとかここに辿り着いたが、安住の地では
なかった。悪いことばかり、重なって
精神的に不安定な毎日を送っている。



じつは玲子さんも離婚していた。
大きな子供を育てるシングルマザーだった
2人共に大学生で一番お金のかかるころだ。
新入社員歓迎会の時、酔ったミホが玲子さん
に離婚を打ち明け、互いに暴露しあったのだ。
美味しいお酒の勢いとホッと出来る雰囲気に
酔って、話しは盛り上がった。
玲子さんの旦那は自営業だった。
印刷関係の仕事だが資金繰りが上手く行かず、
あっさり潰れてしまう。
債権者も押し寄せ、家も売って
何もかも精算した。元旦那からは、大丈夫と
聞いていたが、突如潰れてしまい。
元旦那は、逃げる様に地方の実家に帰った。
子供たちは、玲子さんが引き取って育て
る事になった。元旦那は、養育費を払って
いない。実家で家業の農家を手伝いながら
のんびり生活している。
2人の子供にかかる学費も半端なく、ダブル
ワークしてなんとか生活していた。
本当は、玲子さんも一緒に生活したかったが
元旦那の実家の両親とソリが合わず飛び
出してきた。大きくなった子供達と両親との
間でテレビのチャンネル争いが絶えなかった。
玲子さんもほとほと疲れきっていた。
自分の実家で子供を育てようにも、大きく
なった子供たちは、些細なトラブルを起こし
1ヵ月もしないうちに住みずらくなった。
年寄りと大きな子供達は、玲子さんが働いて
る間にトラブルを起こす。
夏休みなりまとまった連休が揉めやすい。
昔の住宅には、プライバシーがなく、
子供達の2階の部屋は洗濯ものを干す時の
通り道で、老夫婦はよかれと思い子供達
に話しかける。子供達は鬱陶しく感じてしまう。
自分の部屋にいる時、通り道としてスッと
去るならいいが、何してるか干渉さてるの
も子供達にとっても迷惑だ。淋しいのか
イヤホンで音楽を聞いていても、こちらを
向き返事するまで待っている。