シングルマザーで息子2人がいること
ぐらいだ。


ボーリングが終わって、飲み会が始まった。
和風料亭でお酒も出してる落ち着いた
雰囲気のお店。皆んな食べたい物を
頼みくつろぎモード。
ビールを飲んでボーとしてる。
理事長の奢りということもあってか
ペースが速い。理事長は、ミホの隣
にいてニコニコしてる。お酒はあまり
飲めないらしく食事をしながら少し
づつ。理事長は、他の人とは話を
しない。社員と少し距離を置いている。
こういうところも社員を見下してるとか
思われるんだろうなぁ。
そっけない態度とか、けっして輪の中には
入らないところ。私生活の話もしないから、
皆んな気を使う。

そういえば玲子さんが変なことを言って
いた。「会社の条件を書いた紙に、試用期間
があるはずなのに、初日から社員だった。
もとから、秘書にする予定で採用していた
のかもしれない。」

「ミホさんには特別優しい。」
ミホは知っている。理事長は事務所では
穏やかにしているが、一歩外に出ると
鬼のように怒り散らす。ミホに聞かれ
ないように、廊下に出て電話したりして
正体がバレないように気を使ってることも
気づいてる。
郵便局から帰ったときに、顔を真っ赤にして
怒る理事長がいた。鉢合わせすると気まずい
ので、電話が終わるまで、じっと待っていた。
本社工場の営業担当に怒ってるようだ。
原材料が高騰していた。昔は無料で引き取って
感謝までされていたのに、最近は、有料に
なり値上がりまで提示してくる所もある。
捨てるにもそれなりの料金がかかるのに
引き取り業者の足元を見てくる。
どこも厳しい経営状態になっている。
ペットや動物の死骸、食べられない骨や
皮  内臓などを引き取る業者はここだけだ。
それでも、どこかが有料ならうちも
となり約8割の業者にお金を払うこと
になってきた。スマホの時代だけに
隠し事もしずらくなってきている。
それに求人募集にも業績好調、屈指の
安定企業などと広告を載せるとやっかみ
も出るはずだ。実際の所は火の車で
借金返済がキツくなってきている。
取引業者の注文も減っている。
海外から輸入した方が安くて、しがらみ
がない分いいのかもしれない。
営業サイドからお願いされることもないし
無事に届いて安ければ、多少の事は目を
つぶるのもありらしい。



つくづく理事長も気の毒な人だと思う。
親の仕事を継いで、借金もあるし、人で
不足も解消されそうにない。
80近くても定年退職出来ない。
借金が多すぎて、次に理事長になる人
が見つからない。
この工場で原材料にするまでの過程に
時間もかかるし、今のニーズに合ってない。
取引も減ってきつつ、原材料も高騰して
昔のようにはいかない。
おそらく理事長の代で終わるに違いない。
いつか、誰かが気づいて税金の無駄使い
となりそうな気もする。

工場は、視察なんて有り得ない程、
凄まじい所だと思う。
営業部長が、本社事務所に上がって
来た時、暑いのにブルーのビニール
ジャンバーを羽織って、マスクして
防御していた。咳をして、むせていた。
本社事務所内では、マスクを下げてた
から、匂いだけの理由でマスクをしている
訳ではないと思う。白ではなく
ブルーのジャンバーというところも汚れ
が凄いことをうかがわせる。
臭い脂が飛んできたり、尋常じゃない程の
ヌルヌルした油がついたベタベタ埃まみれ
の工場であることの想像がつく。
ここに来て工場でずっと過ごすのって
信じられないというか、凄いなあと
ミホはつくづく思う。
かなり特殊な仕事だと思うし、仕事は
他にも沢山あるし、ここにしがみつく
理由が思い当たらないのだ。
ただ、何でこの仕事を選んだかは聞け
そうにない。多分理由がない限り
ここにいるわけないと、思ってしまうから。