散り際の葉桜は雪の様だ…
桜の木々を前に、前島は思った。
暖かい春の桜なのに
雪が降っているような感覚は不思議で少し心地いい。
人生初のインフルエンザを経験し
ほぼ、回復し、
明日の出勤を控え
なまり切った体と気分転換を兼ねて
前島は職場の同僚に教えてもらった桜スポットへ来ていた。
しかし、時期が遅すぎて見ごろとは
程遠い桜並木。
それでも、久々の外の空気を吸い込むと気分が良かった。
…しかし、23才の男子が一人花見とは
かなりシュールだ…
この土地にきて、友人と呼べる存在はおろか
知り合いさえいない。
なので、何をするにも1人なのは当たり前なのだが
1人では難しいシチュエーションも多々ある。
そんなことを思いながらも桜並木をゆっくり歩いていると…
「プァープァー!」
後方からのクラクションに
自分ではないと思いつつも、振り向いてしまう。
自分を通りすぎ、近くで止まった車の主は
真砂一郎だった。