思い立ったが吉日。
今回の帰省ほど、そう感じたことはなかったです。
実家には三匹のこぶたならぬ、三匹の猫がいる。
長男のケンは、今年の夏で19才になる、なかなかの長寿猫です。
そのケンが危篤状態で、母も落ち込んでいると妹からのメールがきた。
母に電話しても、かなりの凹みよう。
気になるけど帰る予定ないしな~と諦めていたのですが、
思いきって土日の予定を返上、帰省することにしました。
ケンが生きているうちに帰りたい。
ただただその思いで家路を急ぎました。
「ケンちゃん!」駆け寄ると、ピクリとも動かない猫の姿。
やせ細って、目も開けられず、耳も聞こえなさそう。
ケンちゃん…。
そっとしておくことしかできず、呼吸を確かめるだけ。
生きてる生きてる…それだけを確認する1日目。
でも、急変することもなさそうで、ちょっと安心しました。
ケンという猫。
生まれはうちの庭。
わたしが大学を卒業した年の夏に、庭で拾った猫です。
真夜中に小さなミューミューという声が聞こえる。
起きていた妹と庭に出て、声の発信源らしき穴倉を見つけた。
妹に手を入れさせて様子を見させたところ、
「お姉ちゃん、こんなん出てきた」と手のひらに卵サイズの茶トラの猫が乗っていた。
ひょえ~。
とりあえずは、家の中に。
夜中に騒いでいたからか、母も起き出した。
自然のおもむくままに、翌朝、病院に連れて行くことになった。
その間、母が「ケンちゃん」と猫のことを呼んでいる。
もう名前つけてる…。
「ちなみに、ケンって漢字はどう書くの?」と聞くと
「犬!」と返ってきた。
あとで名前の根拠を聞くと、
「この子のことを可愛がりすぎて、犬のことを忘れないように」とのこと。
絶対うそやわ…
なんやったら、犬というのもノリで言ったに違いない…
でも、面白いからそのままにしている。
ケンちゃんはそのせいでグレたのか、ちょっぴり凶暴です。
その猫、凶暴につき。
ここにも書いていたけれど、亡き父も母もわたしも、
ケンに噛まれて病院送りにされている。
ケンはケンなりに主張があるんだと思うんだけど、
鋭い歯と強いアゴを持っているもんで、
それがなかなかの凶器になるってことですな。
拾ったのは7月。
そして、わたしは9月にイギリスへ留学&流浪の旅へ出た。
スーツケースに荷物を入れていると、
ふたにずっと寝て、わたしの邪魔をしていたケン。
まだまだちっちゃくて、いつもわたしの近くで寝ていたけれど、
わたしの旅立ちに気付いていたのかな…。
イギリスへ行ってからも、エアメールで送られてくる母からの手紙は、ほぼケンの話。
食器棚から落ちて歯が抜けたとか、外に逃げたとか、
他愛もないけど嬉しかった。
半年後帰国。
玄関先に迎えに来てくれたのは、でかい猫を抱いた妹。
「はい、ケンちゃん」と手渡されたのはいいものの、
あまりにも重くて落としてしまった。
ケンはめっちゃ怒っていたけど、
あのケンちゃんが立派に育って…と
半年の月日をなにより感じる出来事でした。
その後、赤ちゃんの姪っ子の背中で爪研ぎをした事件があり、
その結果、リビングに大きな猫の家が建った。
ヘーベルハウス三階建てとわたしは呼んでいる。
危害を加えそうな小さな子供はもちろん、
ケンが宿敵のように狙っている妹の旦那さんが来た時は、
ヘーベルハウスの扉を閉めて警戒をする。
この話をした友達には「トラでも飼ってるの?」と言われた。
ケンは、ずっと人間の言葉を聞いて育ったからか、
言葉を理解している節がある。
そして、なにより自分が家を守っているという意識が強い。
父と犬のヤマトが亡くなってからは、男手がケンだけになり、
より一層、家長的になっていった。
お母さんは、オレが守るんや!と言っているよう。
頼むで~と、忙しくもないのに猫の手を借りていた。
新しく来た猫たちにも、とても厳しいケン。
人間の年齢でいうと、もうオーバー80なのに、
うら若き乙女な猫たちを追いかけまわして、しばく。
教育なのか、全然分からない。
多分、イラっとしただけだと思う。
そんな強い強いケンが弱っている。
腎不全という病気だし、老衰だと言われたけど…。
ちょっと動いただけで、嬉しい。
祈りつつ見守っていた。
今朝、衰弱していたケンが、食べ物の匂いに誘われてか、
こたつ机の上に乗ってきた。
目も見えていそう。
なんとなく生気が出てきた。
そんな中、わたしはまた東京に出発。
安心はできないけど、確実にケンはがんばっている。
そんなケンの姿を見て、勉強させてもらったよ。
わたしもがんばるわ。
もうちょっと長く生きて…というのは人間のエゴかもしれないけど、
やっぱり祈ってしまう。
頼むわ~。