疲れた~。今日も夜遅くまで働いたな…。報告書の修正量が多すぎたんで、レベルを下げて提出することになり、作業量的には楽になった。
心理的には気楽になったが、相変わらず俺は飲み込みが悪い。相手の話の解釈は出来ない。
感覚的には、脳の前の部分が欠けてるような…そんな気分。
ちょうど、おでこの少し上あたりだ。髪の毛の生え際あたりと言ったらわかりやすいだろうか。
脳の前の部分が、虫に喰われてるような…そんな感覚なんだ。頭の中がハッキリしてなくて、相手の気持ちや言葉、ニュアンスやジョークが解釈出来ない。
文字通り言葉そのままの意味で受けとってしまうんだ。なぜだろう。
この頭の『虫喰い』が何か関係しているんだろうか。
手前勝手な解釈だが、脳はいくつかのパーツに分かれてて、連携して思考をまとめたり、感覚器官からの情報を受け取る仕組みになっている。例えるならコンピュータのアーキテクチャみたいなものだ。
もし俺の『虫食い』が、文字通り頭のどこかが欠けてるんだとしたら…。ちょっと嫌な気分になるな。人間として本来備わっているべきものが生まれつき欠如していることになる。まぁそれが、俺が日々感じている他人との『ズレ』の原因だとしたら、説明がつくんだが。
やっぱり、休みがとれたら病院に行ってみるか。
『疲れてるだけ。』それでも『虫喰い』の説明は出来る。
だけど、思えば小学生の頃から『ズレ』が生じていた気がする。その頃は、単純にユニークなのが好きな子供、で解釈出来たんだが。
でも歳をとるにつれ、『ズレ』は大きくなっていった気がする。一人で考える時間が増えた。普通の高校生ならTVゲームだの音楽とかに興味を持つのが普通だ。だけど、俺は違った。
一人で過ごし、ひたすら勉強に打ち込んだ。受験があるからとかではない。ただひたすら数学という世界に踏み入れたかった。TVゲームよりもスポーツよりも、なによりも素晴らしい世界に思えたんだ。
実世界で起こる物理現象が数学で説明出来るところも素晴らしいと思ったし、その数式や定理がどんな芸術品よりも美しいとすら感じた。どんな歴代の芸術家が束になっても敵わない、一切の無駄のない美しさがそこには確かにあった。
今でも数式を見ると興味が沸くし、ワクワクするんだ。でもあんまり理解されなかったな…。周りのみんなは数学や物理なんて敬遠するし、つまらない、眠いとか言われる。
こんなに素晴らしい世界なのに、なぜ分からないんだろう…。問題を解くことが数学じゃなくて、解くまでの思考そのものが数学なのに。
ズレはどんどん大きくなっていった。無理矢理周りと合わせようとした時期もあったけど、今はどうしていいかがわからない。
こんな生き方をしていたから他人の気持ちが分からない人間になったんだろうか。自分勝手な人間に見えてしまうんだろうか。
『虫喰い』の正体は、なんだ?