犬の『本能』ってなに? | タンタンとパパの子犬の社会化ブログ

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昔の動物行動学では『動物の合目的的行動のうち生得的・遺伝的に行われる行動』を本能行動と呼び、生後習得した学習行動、まさに習慣化された性質を習性と呼んでいたようです。

 

例えばクモは教えられなくても精密なクモの巣を作ることができますし、

サケは誰についていくこともなく川を遡上し卵を生みます。

 

これらはまさに生得的・遺伝的にその種が持っている本能行動なわけです。

 

 

しかし近年動物たちの研究が進むにつれ、

生得的行動の中にも学習的な要素が関係して変容することが解ってきました。

 

動物行動学者のコンラート・ローレンツは、自分自身が生まれたばかりのハイイロガンの雛に母親と間違われた体験(すりこみ)から本能とは生得的なものばかりではなく生後の学習によって影響され変わっていくものだという『本能ー学習絡み合い説』を唱えました。

 

 

 

一方で習性のなかにも本能に依存して行われている行動もあり、

本能だと思われていたことが実は習性だったという誤解も動物行動学の中には多々見つかっているわけです。

 

 

さて、では犬の本能ってなんでしょうね?

 

『権勢症候群』でググると一番上に出てくる日本警察犬協会のホームページの中の特集の中に、

PD公認一等訓練士 藤井 聡氏が書いたこんな文章があります。

 

犬の本能を大別すると、まず、繁殖本能、社会的本能、自衛本能、逃走本能、運動本能、栄養本能、と大きく六つに分かれます。
 

この六つの本能をさらに分類すると、十五もの多くの本能に分類することが出来ます。


犬との共生にもっとも重要な本能が、大別された六つの中の社会的本能です。


その社会本能を分類すると、八つに分類されます。


まず、群棲本能、権勢本能、服従本能、警戒本能、防衛本能、監守本能、闘争本能、帰家本能などです。

 

この中で正しく理解し、認識しておかなくてはならない重要な本能が、群棲、権勢、服従、の三つの本能なのです。

 

 

 

はぁ、どこの動物行動学者がいつこんな詳細な犬の本能の研究をしたというのですか?

 

出典はなにも書いていません。

 

人間も含めて繁殖という本能は動物全てにありますからいいですが、

他のは全部生後の学習で変わるものでありその傾向が強い者も弱い者もいて、

「犬とはこういう本能を持った生き物だ」などと定義するにはあまりにもエビデンスが足りません。

 

帰家本能なんていうのもマユツバで多くの犬が段ボール箱などに入れられて、どこか遠くに連れて行かれると帰ってこれませんし、そんな便利な本能があれば家から飛び出してしまった犬が迷子になることもないでしょう😞

 

中でも『権勢本能』なんてものは存在しないことが分かっていて、こんな話を根拠に犬のしつけ論を展開されていたら多くの飼い主さんと愛犬の間に誤解と不和を根付かせてしまいます。

 

これは1999年に書かれたことだからもう流石に藤井さん「いやぁ〜すんません!僕が間違ってました🙏」って謝ってるでしょ?って?

 

いやいやいまだに同じこと言ってますよ😅

 

昔のように体罰推奨の訓練は薦めていなくても『権勢本能』は否定していないですよ。

 

日本警察犬協会自体も否定していませんからね。

 

要は、さも明確に判明しているように動物の本能について語る専門家を、そのまんま信じてしまうと大変な誤解をさせられてしまうということです。

 

「犬とはこういうものです! 私は専門家ですから全部知っています!」なんて連中は、

よほどの嘘つきか自分が話していることが真実だと思い込んでいる恥ずかしい人です。

 

動物の本能や習性についてはまだまだ信用に足るほどのサンプルを元に確証がとれている事実は多くありません。

 

肩書きが立派だからとか、歴が長いからというだけで信用すると、後々後悔することになりますよ...