犬たちにも暗黙のルールが | タンタンとパパの子犬の社会化ブログ

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ドッグランでの様子です。

 

グレート デーンとアイリッシュ ウルフ ハウンドの仔犬(どちらも1歳弱)が遊んでいたところ、一方的にアイリッシュ ウルフ ハウンドがやられているようで他の犬たちが心配して寄ってきましたが、あまりの体格差になすすべがありません。

 

そこにシベリアン ハスキーの成犬が仲裁行動に入って両者を引き離したという動画です。

 

 

 

 

人間目線から見ると、

「せっかく仔犬たちが楽しく遊んでいるのに、喧嘩していると勘違いした大人の犬が割って入ったんだ」とか、

「ハスキーさんカッコイイ!」くらいにしか見えないかもしれませんが、

犬の行動学的に見るともっと様々なものが見えてきます...

 

犬同士の遊びとはプレイバウというボディ ランゲージから始まり、

「遊ぼうよ」という誘いだけでなく、 

「今から追いかけたり、ちょっと噛んだり、吠えたりするけど本気じゃないからね」という約束がなされます。 

 

決して強さの競い合いではありません。 

 

体格差があっても一方的に攻めるのではなく、

「追いかけるから次は君が追いかけてね」とか

「匂いを嗅いでいいから僕にも嗅がせてね」とか、

自分が勝ったら次は相手に勝たせたり、

というロール・プレイングの転換を楽しむのがルールです。 

 

そういうルールがあるからこそ

ジャックラッセルテリアとサルーキが遊べたりするんですね。 

 

最初はそうやって交互に攻めあって遊んでいたであろうこの2頭ですが、ウルフ ハウンドのほうが疲れたらしく、

身体を伏せて「ちょっと休憩! 落ち着いて!」というカーミングシグナルを送ります。

 

 一瞬、アマガミを止めてそのシグナルに応じようとしたデーンですが、

気分が収まらず続けてアマガミを行い、

ウルフ ハウンドはさらに横になってお腹を見せます。 

 

これは「降参だからもう止めて」という、

より強いカーミングシグナルです。 

 

本当はここでデーンもカーミング シグナルを返し、

気分を抑えなければルール違反と言えるでしょう。 

 

犬たちにとって共通言語のカーミング シグナル(しかも遠目にも分かる明らかな動作)を無視して、一方的に遊びを要求し続ける姿は他の成犬たちからみれば見逃せない無礼な行動に映るはずです。 

 

それで他の犬たちが集まってきたわけです... 

 

それまで礼儀正しく遊んでいたデーンですがあまりに楽しかったらしく自身を制御できなくなってしまったのかもしれません。 

 

通常仲裁に入る犬は、

両者の肛門の匂いを嗅いで興奮度合いを確認するものですが、 シベリアン ハスキーはその必要もないと判断したのでしょう。 

 

チェックなしで自分の身体を両者の間に盾として入れる『インターセプト』を行います。 

 

デーンはハスキーのお尻を嗅いでこのハスキーが大人であることや興奮してはいないことなどの情報を確認しますが、自分の強さを試したい時期でもあるのでしょう。 

 

今度はハスキーに対して前足を地面に叩きつけて挑発します。 

 

しかしハスキーは大人ですからそんなことには応じません。 

 

デーンに離れろとプレッシャーを与えます。 

 

そうこうしていると、能天気なウルフ ハウンドが「えっ、ハスキーさんも遊ぶの?」と立ち上がって2頭に寄ってきます。 

 

ハスキーは「ややこしいからお前もこっち来るな!」とたしなめたところで動画は終わっています。 

 

今回はこのハスキーさんによって仲裁がなされましたが、私から見ればウルフ ハウンドのカーミングシグナルが無視された時点で飼い主さんたちが声かけだけでなく介入(間に入っておだやかに止めさせる)したほうがいいと思います。

 

 それはウルフ ハウンドのためというより、デーンに対するタイムアウトです。 

 

ルールを守れなかったら遊べないよという指導のためです... 

 

(デーンの名誉のためお伝えしますが後日またこの2頭がドッグランで会った時は、礼儀正しく遊べたようです) 

 

もし、みなさんの愛犬にこのようなカーミングシグナルの無視が続くようなら、

一旦ドッグランに連れて行くのは中止して様子を見た方がいいでしょう。 

 

遊びから始まったという状況だけ見ていると、止める必要がないように見えるかもしれませんが、見るべきポイントは状況だけでなくカーミングシグナルが正しくやりとりされているかどうかなのです...