引き取り屋で生きるということ | タンタンとパパの子犬の社会化ブログ

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わたしには名前がありません…

 

ここにくる前に覚えていることは、

ペットショップで周りの子犬たちが優しそうな人たちに

抱かれて連れていかれるのにわたしだけはいつまでも

ガラスケースの中で誰か遊んでくれないかと

待っていたことだけ。

 

「売れ残った...」

そんな声が何度か聞こえてきました。

 

ある日お店の人がわたしを段ボールの箱に入れて、

タバコ臭いおじさんに渡してから、この薄暗い建物に

連れてこられました。

 

ここではペットショップのように綺麗にしてはもらえません。

ここにきてから洗ってもらったことなどありません。

 

食べ物も1日に1回もらえるかもらえないか...

 

鳥カゴみたいなオリの中で針金のすのこの上に乗せられて

暮らしています。

そのせいで針金が肉球に食い込み、つねに血がにじんでいます。

 

ウンチはすのこの上に溜まり、たまにしか掃除はしてくれません。

いつも気が狂いそうな悪臭の中で暮らしています。

 

わたしはここから出たことがありません。

ここから見える地面というものがどういう感触なのかもわかりません。

 

ここに来てからおもちゃで遊んだこともありません。

 

柔らかな寝床で寝たこともありません。

 

ショップでお姉さんが抱いてくれて以来、

誰かに優しく抱かれたこともありません。

 

なにより愛されたことがありません。

 

ただここで死ぬのをまつだけ。

来る日も、来る日も…

 

 

平成24年の動物愛護法改正によって保健所や愛護センターは、

ブリーダーやペットショップなどの業者から殺処分目的の動物持ち込みを拒否できるようになりました。

 

それまでは、保健所や愛護センターは「引き取ってくれ」と言われると拒否できなかったのですが、動物たちを安易に殺させないため、責任を持って終生飼育をさせるためなどという理由をつけて行政が動物業者の尻拭いをしないで済むよう法律を改定したのです。

 

しかし、その結果殺処分は免れても地獄のような『飼い殺し』を引き受ける業者『引き取り屋』が現れました。

 

ブリーダーやペットショップなどは売れ残った動物たちを『引き取り屋』に一頭1万円前後で引き取ってもらい、『引き取り屋』は死なないギリギリの環境で動物たちを生かし続けます。

 

身動きのできない小さなカゴの中で、わずかな食べ物しか与えず、糞尿の処理もせず、暖房も冷房もせず、運動もさせず、手入れもせず、病気になっても手当せず、ただ死ぬのを待ちます...

 

こんな苦しみを与え続けるくらいなら、安楽死させてあげた方がどれほど 慈悲深いことか...

 

そんな実情を知っていても政治も行政も動きません。

民間の保護団体が『引き取り屋』に足繁く通い、なんとか説得して引き出すしか方法がない現状です...

 

関連記事: 『引き取り屋』の実態