三月大歌舞伎/新橋演舞場
【昼の部】11:00~
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※以下敬称略

●江戸絵両国八景
荒川佐吉
('54+'69)
荒川の佐吉 / 染五郎
大工辰五郎 / 亀 鶴
お八重 / 梅 枝
丸総女房お新 / 福 助
成川郷右衛門 / 梅 玉
相模屋政五郎 / 幸四郎
いや~やっぱり今回も涙してしまいました
泣いてない人はいないんじゃと思うほど
周りからすすり泣きが
でも隣りのおばちゃん暗転で鼻ち~んするのやめて(笑)
あまりにも今までの仁左&染の印象が強く
もしかして仁左@佐吉が観劇中浮かんで
・・・なんて思っていたのですが
それが不思議となかったのは
(でも今回教えて頂いたのは仁左衛門さん)
たぶん等身大の染五郎さんの佐吉が
そこにきちんとあったからだと思います
とはいえ 観た事無いものならいざ知らず
ダブってくるのは仕方なし(そこはお許し下され)
変な話 丸総女房が座敷にいるだけで泣けてくる(笑)
その先をわかってるだけに条件反射的というのもあって
ほんとはそんなじゃダメなんでしょうけど

憤慨しないとね 大人の事情で子供をあっちにこっちに
佐吉一家の幸せをある意味壊しに来たんですから
ほとんどうつむいて泣いてるだけではありますが
自分の身勝手さを悔いつつ泣き崩れる
福助さんのお新さんは結構好きです
今度こそ卯之吉を大事にしてくれますか?
今回ツボだったのが
普通理屈を見い出してから?縄張り奪いますかね
何考えてるんだかわからん このオッサン!
って感じなインテリジェンス入った梅玉さんの成川が不思議な存在感(笑)
梅枝さん演じる プライドは高いけれど
真っ直ぐな気性のお八重もよかったな
容姿的にも染@佐吉が惚れても問題なし ←そこ(笑)?
このお芝居は佐吉だけでは成り立たない
特に辰五郎あってのって部分が大きいと思っていて
佐吉と辰の関係がすごく大切で・・・
脚本(演出)の設定は存じませんが
今回ものすごく友達友達してる
二人はあくまで対等な関係でありながら
持ちつ持たれつ的に見える
演じる役者どおしの年齢が近い分
そういう設定なのかとも思えるけれど
(←実はこれが本来なのか?)
・・・で何故そう感じるんだろと考えると
亀鶴さんの辰五郎は 台詞にあるような
“毛が三本足らない”的 辰ではないんだなぁ
芝居が出来る方なので上手いのですけど
その分 隙がないというか佐吉に余裕を与えないというか
毛が三本以上ある(←こだわる(笑))
年は違えど友達で兄貴分と慕い あこがれ尊敬して
その兄貴と卯之吉の為なら たとえ火の中水の中!
世話女房的献身も辞さない!
なぜそこまでして面倒みてるのかがわかる
染@辰五郎が断然好きだったから困ったものです(ゴメンナサイ)
でも明らかに佐吉が違うのだから どっちのアプローチもありか

そして
好きで身幅の狭い着物を着てるという佐吉
仁左@佐吉が三下にしては貫禄があり過ぎたのとは逆に
親分にしては染五郎さんは線が細いだろう事は想定内でしたが
だからこそ 目が不自由なゆえ
卯之吉の中に芽生えた心の目に触れる事で
卯之吉の手足が伸びる毎に
一緒に成長していく その事が手に取るようにわかる
まっすぐな染五郎さんの佐吉でした
卯之吉を守る為 初めて人を斬った事で
真の捨て身になれば恐れるものはない
討とうと思う心が討つんだと
自分の中に眠っていたものに気づき敵討ち
に繋がって行くのも みていてとても自然で
その反面
佐吉が相政親分に諭され卯之吉を手放そうと心に決める場面
ホンがそうなのでしょうが
さっきまでの 苦労や悪態 感情の吐露は何処へ?な感は拭えなくて
それを納得させられるには 染五郎さんのそれはちょっと薄い(弱い?)のか
観ている側が得心出来る心の変わり様(決心)を
一瞬で見せるのはとても難しいとは思うのですけどね
でも実は諭す幸四郎さんの相政にもいまいち説得力を感じなくて
この場面に疑問符が付いてしまうのもあるかもしれません
でもその辺は 染五郎さん自身
きっとこれからも重ねていかれるだろうお役ですし
ぜひ重ねていって頂きたい
そして(等身大が可能な)何年後かの
等身大+α の佐吉で再び拝見出来たらなと思うのでした
でもなんだろ 観終わってみると
たりないんじゃないんだけど
たし算とひき算がまだうまくいかない
優しさと男気 情と優しさ 愛情と潔さ…
その辺の さじ加減?が私の中でしっくり添わないのか?
ひとつひとつの台詞やその姿は心に届くのですが
う~ん優し過ぎるのかな~
でもそれは染五郎佐吉の持ち味なんだよな
ああひとつ書き忘れたことが
(決して明るい場面ではないけれど)
前半ですごく心に残る情景・・・
卯之吉に初めて会った(貰われてきた)日
戸惑いながらも 何の罪もないこの子の先の事を思い
あやしながら静かにそっと頬を寄せる染五郎@佐吉に
得も言われぬ優しさと愛しみを感じ
思わぬところで

この演目に関してはもっともっと思うところもあって
もっと上手く書ければいいのですが
だんだん収拾つかなくなってきてるので
なんだか中途半端ですが この辺ですみません
●仮名手本忠臣蔵
~九段目 山科閑居
('95)
戸無瀬 / 藤十郎
大星由良之助 / 菊五郎
小 浪 / 福 助
大星力弥/ 染五郎
お 石 / 時 蔵
加古川本蔵 / 幸四郎
今月思っていた以上に楽しめたのがこれ
来月の花形忠臣蔵へのプロローグで大顔合わせ
その日の自分のコンディションもありますが
下手すると本蔵が出てくるあたりまで
夢の中~って事も過去あったり

直近拝見は2007年歌舞伎座 もう5年も前
観る方も ちっとは成長出来たかしら(笑)
本蔵・力弥が今回と同配役
芝翫@戸無瀬 吉@由良之助・・・
配役が違えばこうも違うかというのが
顕著だったのが由良之助女房お石
今回 時蔵さんの“お石の存在感”が半端なかったなぁ
これによって物語の進み方が違ったと言ってもよいかも
時蔵さんのお石がカッコ良いこと!
由良之助女房だという自覚を持ち
意思の強さが見える女性はキリッと美しい
冷たくあしらうように見えるけれど
実は・・がちらりと垣間見えるのも わかりよくて私は好き
他にも今回印象が強かった事といえば
藤十郎さんの戸無瀬がものすごく“母”だった事
そんなこともあってか
歌舞伎座のそれは どちらかといえば
“男世界”な記憶(←お石が・・・だったから)でしたが
今回は“女の物語”みたいな

藤十郎@戸無瀬 vs 時蔵@お石
幸四郎@本蔵 vs 時蔵@お石
火花散るやり取りに見応えがあり面白く拝見出来ました
男性陣はといいますと
由良之助が少し印象弱かったような
菊五郎さん出てきた瞬間 流石に大きさはあるけれど
なぜか すごく優しく見えちゃって
本蔵 vs 由良があんまり感じられなかったのは残念
初役って事ですので単に観る側が慣れてないからでは?
と言われれば完全否定は出来ない

幸四郎さんの本蔵はもう
“娘大好き!娘命!”みたいな感じ(笑)
由良邸にやってきたのは(判官を抱き止めてしまったという)
自分の後悔を晴らす為もあるでしょうが
小浪を力弥に嫁入りさせる為の方が絶対強いなと思える(笑)
染五郎さんの力弥 前髪まだまだ大丈夫ですね
(←失礼な(笑)) でもあの舞台写真は気にいらないの

母の危機に颯爽と登場する姿は
前髪な若者らしくキリッと勇ましく
・・・かと思えば小浪とのやりとりは
恥じらいも楚々として~(←これ本来女性に使う言葉(笑)?)
討入りへの気持ちの高まりが見えるような
雪持ち笹での雨戸外しのお手並みもお見事でした!
九段目は視覚的にも
戸無瀬の 緋 / 小浪が 白 / お石の 黒
由良が 茶 / 本蔵は 茶の虚無僧姿
力弥の 黄八丈 ・・・と
何気に観ている舞台面ですが鮮やかで楽しめました
満足~満足~

三月大歌舞伎/新橋演舞場 続く・・・
