第二十七回
四国こんぴら歌舞伎大芝居
平成23年4月9日(土)~24日(日)
(全32回公演)
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【第一部 11:00~】

(1:25)
●一谷嫩軍記
『熊谷陣屋』
熊谷次郎直実 / 染五郎
藤の方 / 高麗蔵
弥陀六 / 猿 弥
源義経 / 門之助
相 模 / 芝 雀
昨年5月花形に続き
染五郎さんにとって2度目の熊谷
前回と今回とで印象に残る場面が
全く違っていたのも自分でもちょっと驚き
相模・藤の方・・・
周りの役者陣が違う事も大きいでしょうし
ご本人も2度目ということもあるのでしょうが
前回の花形座組みとは
(何となくですが私の中で)安心感が違うというのもあり
すんなり心に染みいるものになりました
実際芝雀さんの相模は
直実の気持ちを妻としてうけつつ
母としての子への思いも切々と感じられ
(熊谷が舞台上から一旦退いてからの)
相模と藤の方2人のやりとりの場も
決して単調にはならずでした
昨年演舞場では染五郎さん初役ということもあり
色々と印象に残ったことはありますが
とりわけ軍扇を手にしての戦物語での
グングン引き込まれる迫力とあの緊迫感や
制札の見得は忘れ難く・・・でしたが
今回は何をおいても最後の引っ込み
よく言われる?最初の花道の出と最後の引っ込みが全て
とはちょっと大げさだとは思いますが
今回僧形になってからが前とは各段違う(と私は思う)
特に幕外花道に立つその姿をみて自然涙が落ちました

さっきまで武将姿で義経を前にしていたその人は
ひと回り小さくなったのではと
武将ではなく一人の人間となった姿を
感じずにはいられなかったからかもしれません
花道(出家)に踏み出そうとする瞬間
戦場の陣太鼓に反射的に
クッと顎を引きその場に身構える
けれど ふと我に返り肩の力が抜ける
この世の無常に声にはならない嗚咽を漏らす
この姿がこんなに愛おしく感じたことはありませんでした

そう感じる事がこのお役のこの場面で
よいのかどうかはわかりませんが
正直前回は熊谷の目に涙が光ろうが
16年はひと昔の台詞を聞こうが
(泣けることが全てではないけれど)
泣けるまでには至らずでした (←いまさら告白

少しお話はかわりますが
ここぞという見得がキマった所で拍手が起こるのは
予定調和のようではありますが
今回 そうではない場面
(本来拍手がしにくいような場面かな?と)
直実が制札を手に相模と藤の方を
“お騒ぎあるな ええ~い騒ぐな
お騒ぎあるな ええ~い騒ぐな・・・”
と一人問答のように制するまさにソコで
(自分も含め)自然拍手が起きたのはうれしかったです
少なくとも前回も合わせ私が拝見した時には無かった事
やはりお芝居は生き物
都会の劇場は快適?ではあるけれど
金丸座にはあの小屋の良さがあって
演目にもよるけれど
それは舞台が小さいことであったり
客席が狭いことであったり(←↑これらは熊谷では
私の場合あまり良さには該当しないような)
今回この演目で
とあるこの小屋ならではの素敵さ
を実感

それは・・・とても不思議な感覚で
なんだかすごく自分にとって宝物な感じがするので
う~ん ごめんなさい ここでは書きません

でも思い出深い観劇となりました
このお役は繰り返し演じ年を重ねていくにつれ
得るものが多いのかと思います
昨年拝見した時は2年後位でいいかと思ったものですが
約1年で再びとなり 今回拝見して
次回はちょっと早く観たいかも~
通常の劇場(演舞場等)でお勤めになる時が楽しみです
それにしても武将な拵えとお衣裳は
前回からお似合いでしたが
今回 法衣を身につけた坊主頭(笑)

もとい剃髮が ことのほかお似合いでびっくり
もちろん私たちが2度目で観慣れた
というのもあるかもしれませんが
鬘きっと変えられましたよね
前は浮いてるところが気になったりしたのですが
今回はものすごっキレイ

と要らぬことも考えたりね(笑)

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→ こんぴら歌舞伎 其の参~鯉つかみ① へ続く