第二十五回 花道会 歌舞伎セミナー
対談
時代を駆ける!市川染五郎

 
日時:2010年10月17日(日)/17時~18時
場所:伝統芸能情報館3階・レクチャー室

出 演:市川染五郎丈          
聞き手:織田紘二氏
   (日本芸術文化振興会顧問)


※以下敬称略部分あり

国立劇場10月公演ご出演中の歌舞伎セミナー
染五郎さんとは旧知の仲で(ってほどでもない?)
かつ今月の演出を手がける織田さんがお相手ですから
どんな突っ込んだお話が聞けるかな
ということで参加してまいりました

レクチャー室は結構狭くてというか
人がいっぱい過ぎて狭く感じた?
席は横が大体12~13席?
前から後ろまでそうだったかは不明ですが
いつも定員120~130で募集してると思うので それくらい sweat*
補助席が出たらしくなのでもっとかも
折りたたみテーブルが出せるようになってる椅子で
メモる方にはもってこいです

まずは織田さんのご挨拶ですが
“差し詰めこういうのって
打ち合わせ段階の方が面白いんですよね~”
と最初に宣言 それって・・・(笑) sweat*

で すぐさま染五郎さんご登場
入って来られ“市川染五郎です”
とご挨拶の そのお姿は・・・

シルバーのピンストライプが映える黒のドレスシャツ
胸ボタンは2つ開けていたかしら(笑)
セクシーな胸元・・・なんて想像しちゃってる
そこのあなた!ダメダメ(笑)
パンツは特にこれといった特徴のないブラックパンツ
御髪はもちろんきちんとセット
眉もキリっと男前でした

この方が 天保遊侠録 では
眉尻ダラリ表情クルクル お口も変化(へんげ)な庄之助~
対する 将軍江戸を去る での山岡は
口周りに黒ひげも精悍なお顔つきの 歴史を背負った男です
だから役者っておもしろい!

それはさておき早速印象に残ったことなどを
おふたりのお話自体 将軍~と天保~
あちこち飛んで入り混じってましたので
わかりやすくする為あえて演目ごとに
順列不同 時系列???です(笑)
私自身その時感じた事も
(独り言のように)書いてますので悪しからず

基本 染五郎さんのおっしゃった内容だとご理解下さい


●将軍江戸を去る

真山作品の中でも大好きな作品であり
実際将軍は30歳くらいで この時をむかえているので
若い時に この役をやりたいというのが目標
その事を真山美保さん御存命時に直接お伝えしたことがあり
子孫の方にも引き合わせて頂いたそう

山岡の台詞はとても難しくやりがいがある
真山作品は気持ちをどうノせるか
音楽的にどう感情をノせるのかがやりどころ
いつも感じるのは どの作品にしても
血がにじんでる言葉というか日本語のチカラというか 
丁寧に一語一語に心をこめてしゃべる事を心がけている 
心に残るのは感情的な言葉だったり 簡単な言葉だったりもする

染五郎さんが思うに 将軍~の凄いところは
日本の為の日本は既に過去となったとか
戦争ほど残酷なものはない なんて事を
世間は戦争に負けるわけがないという空気の
昭和9年に芝居で言わせた事

大詰め・千住大橋の場での山岡
初日から何日かは泣いていたものを
将軍が去るのを見送る時 泣き伏さない事にした
去る事が江戸を日本を救う事になるけれど
去らせる責任は感じてる訳で
あの時代で尋常な人なら見届けて腹を切るだろう
でも山岡自身 (史実で)生きているので
次代を見届けるという選択をしたんだと
なら泣き伏してる場面ではないなと

平成元年・南座で叔父様が演った(山岡/富十郎)のを
京都撮影滞在中に2回観に行ったくらい(好き)で
今回その相手役を出来る事はこの上ない喜び

平成元年って染五郎さん15,6才ですよ~?!
その歳で将軍~に魅了されるって何とも渋いですよね

歴史上の人物をやる時
リアルな緊張感を感じながら演れるのがおもしろく
台本はあるので毎日結末は同じだけれど
今回なら 斬られるかもな覚悟をもって挑んでいる

綱豊卿の時もおっしゃってましたね
もしかしたら綱豊卿に勝てるかもしれない位の気持ちでと
こうやって考えるとそういう面では被りませんか?
山岡と助右衛門 両方とも本来そう やすやすと
直接意見出来そうでない相手に立ち向かう的なところが
観劇中に ふと重なった時があったのです


●天保遊侠録

何せ出演自体初めてなので
去年の歌舞伎座(納涼/橋之助・勘太郎)や
昭和63年吉右衛門さん(小吉)時の
残っている資料やらビデオで庄之助を研究されたそう
しか~し それらはすべて ≪普通の格好≫ で
今月のように ≪太ってないし醜男でもない≫
じゃ何ゆえに?と思いきや
“身体をビヤ樽のようにして眉毛はもっと下げてくれ”
との叔父様からの注文だそうです
“天保遊侠録始まって以来の醜男ではないか”
とおっしゃってました

これからあと庄之助される方も
資料としてこれを見た時
極端な違いに戸惑うことでしょうね(笑)
これを聞くまでは
なぜそういう扮装で風体にする必要があるのか
疑問だったので これを聞いてそういうことか~でした
でもあの体型結構大変ですよ
転がって下手すれば自分で起き上がれない可能性ありますから(笑)
何度か観ていて転がった勢いで起きてるでしょ!
なところもありましたし(笑)

でなぜ叔父様は醜男を所望されたのかってことですが
染五郎さんが色男なので播磨屋が
“自分は醜男とは言わないが
 → 自分で言うか?って意味を込め(笑)
   染五郎さん・会場共に吹く かわいい
染五郎が醜男と言われて(演ってる)
 じゃあ俺はどうしたらいいんだ?”

ってことで(小吉はこれ以上どうしようもないから)
染五郎さんの庄之助がだんだん ダウンダウン
ああ~(醜男に)なっていったそうです
叔父様ったら~(笑)もう~


天保~はあまり好きじゃないお芝居で
今回演出を断りたかったと織田さんの爆弾発言
3幕構成の長い芝居で全集読んだら疲れたとも(笑)
歯に衣着せない もの言い が潔くて(笑)よいです~
あとから出てきますが他にもそんな事聞く?
って質問や発言があったり この方の場合
それがちっとも嫌味でもなんでもなく鋭いので感心します

しかし織田さんのみならず
吉右衛門さんさえ前回の事を全く覚えてないらしく
錦吾さんに至っては 初めて出ると思っていたら
記録ビデオで自分が出ていて結構セリフを喋ってる(by染五郎)
みなさん そんな感じの天保~らしい
嫌いじゃないけど忘れたい~って
どんな感覚なんだろう(笑) 役者さんならでは?


小吉と麟太郎の関係は
昔テレビドラマ「父子鷹(おやこだか)」で
小吉/幸四郎さん
麟太郎/染五郎さん(21歳くらい)でやっていて
それ以来 小吉に魅力を感じ
今回出るにあたってすごく興味を持っているそう
粋さ無頼さがあるけれど
息子の事となると泣いてすがるような人
メチャクチャな人生だけど ゆるぎない生き方があって
とても魅力的なキャラクターだと

小吉が大詰め近く啖呵を切るところや
最後の八重次との場面 粋ですものね~ キラキラ*
ぜひ染五郎さんにやって頂きたいなぁ ニヤリ
この場面での叔父様いわく
“遊びと切り方と切れ方は染五郎に習いたい”
だそうで(笑) これ聞いた染五郎さん
“遊びはね”って言ったでしょう?
聞き逃しませんでしたわよ(笑)

長い長いお話の(初めの)一部分だけれど
染五郎さん どうにかして上演したい!
と考えられてるようで それも
“息子(金太郎)と出来れば楽しい 5年以内にどこかでやりたい”
と具体的におっしゃいました

今回の 叔父と甥 の関係も本当だし
父子鷹の 父と子 も本当だったし
これも叶えばとても素敵でいいですね~ うれしい
でもなぜ5年なんだ?
要は実年齢近く(麟太郎7歳)でやりたいってことかな


今月は
“庄之助・山岡 どちらも楽しく興味深くやらせて頂いてる” と
“今月 庄之助だけで終わってたら精神的にマズイ!”
とも
でもそれって逆じゃないの?なんて思いませんか?
今月 山岡だけで終わっちゃ精神的に辛いし
やっぱり醜男で終わりたくなくて
カッコイイ方がないとダメ~ってことかしら(笑) アハハ‥


           ・・・つづく