夏休みの宿題最後です

・・・松竹座・夏芝居回顧・其の4
→ 七月大歌舞伎/松竹座 あらすじ等
芝居前は今回の記念公演の為に書かれた狂言であり
再び上演される事はないという事
それとこれに関しては感想~というものでもないだろうと
思い出せるだけ舞台進行を追ったカタチで書き残す事にした
若旦那中心?の覚え書き描写 です

かなり長文ご注意

(以下敬称略)
◆関西・歌舞伎を愛する会
結成三十周年記念
弥栄芝居賑~道頓堀芝居前
※以下舞台に登場順・登場時並び順にて
舞台上手から
祭りの衆弥八 / 猿 弥
後家おこう / 笑三郎
町娘お春 / 春 猿
花道から
鳶頭治郎吉 / 段治郎
若旦那与兵衛 / 染五郎
芸者おうめ / 吉 弥
丁稚智吉 / 翫 雀
花道から
団子売お臼 / 孝太郎
団子売杵造 / 愛之助
花道から
芝居茶屋主人 / 左團次
芝居茶屋女房 / 竹三郎
本舞台奥から
太夫元仁左衛門 / 仁左衛門
愛する会30周年ということで
生みの親ともいうべき澤村藤十郎さん演出
夏芝居に賑わう道頓堀界隈の様子を
口上を交えてお芝居に仕立てたもの
幕が開くと一気にタイムスリップな芝居小屋前

正面中央には松竹の座紋が抜かれた櫓が掲げられ
大手・笹せと染抜かれた提灯/幕がズラリ

公演中の松竹座前と同じく左右には役者勢揃いの絵看板
その両脇には 狂言が記された まねき
うず高く積まれた祝酒樽
もうこれだけでお祝い気分全開!
小屋の中に次々に吸い込まれてゆく往来の人々
そんな中で上手から

でここで目を引いたのは
猿弥さんの白塗り~??!!
真っ白ではありませんが 珍しくないですか?
猿弥さんの白塗りって
申し訳ないのですが 初日は違和感アリアリ(笑)

あっあくまで観る方の私がですよ
生粋の澤瀉ファンの方なら経験済なのかも
大阪には 愛染さんに住吉さん天神さんと
色々お祭りはあるけれど
やっぱり道頓堀の夏芝居が一番!
ってな具合に舞台中央で手踊り程度にひとくさり
ご見物に一礼となったところで
・・・良い具合に(笑) ← あたりまえ

向うの方(鳥屋)から聞こえる声
鳶頭に導かれ芝居小屋の贔屓ととれる
羽振りの良さそうな若旦那御一行様~
楽しそうに話しながら花外に目をやったり
やって来た花道後方を振り返ったり♪
馴染みの芸者とお店の丁稚を引き連れて
涼しい顔してお扇子操るその姿は
染五郎さん自ら与兵衛と名付けた若旦那

●与兵衛という役名についてのエピソード
長くなるので別記事で → コチラ
お連れの芸者はおキマリで
吉弥さんの胸元には高麗屋格子

丁稚どんはもう まんま(笑)
ものすご~~~~くお似合いです
藤山直美ではございませんとは
のちの舞台口上での翫雀さん

芝居好きな主人と芝居好きな丁稚が
繰り広げる花道七三でのチャリ場
鳶の頭:若旦那の贔屓の役者はどなたでした?
わてが当てましょ:お連れの芸者
ああ~そうや何をやらせても素敵な市川染五郎!
に何を言うてますのや的 恥ずかしそうな笑顔と
まんざらでもなさげな表情が笑える若旦那
↑もちろんお芝居ですよ こういう表情上手いのですよね~
その表情とは裏腹(笑)に若旦那のクチをついて出たのは
わては大っ嫌いじゃわいな~
そこへ間髪いれずの
わても市川染五郎大嫌いでんねん!
との丁稚どんには若旦那もお連れも皆腰砕け(笑)
それにはちょっぴり拗ねたお顔?の若旦那なのでした

ベタとはいえこんな楽しいやり取りに
もちろん客席もオオウケです
しかしこの丁稚どん千穐楽には
わて市川染五郎大好きですねん!
このひと月をかけ?
染五郎さんの魅力に気付いたのでしょうか

でも遅いよ気付くの!とは心の叫び(笑)
花道間近で拝見!した時の
見上げる若旦那ったら もう
ウォータープルーフしてますか?な なが~いキラキラ睫毛


爪のお手入れしてますか?
透明マニキュア塗ってますか?な薄桃色の手元(爪)
そして少女マンガよろしくな愛らしいつぶらな瞳


等身大パノラマでそこにいらっしゃるのですから
しっかり見つめさせて頂きました


ここから後は基本上手にいってしまわれるのでね(笑)
花道でのやりとりが終わっていよいよ本舞台
4人揃ってお扇子使いの舞をひとくさり
右へ左へ蝶が如くひらひらと浮遊する若旦那(笑)

今にも つっ転びそうなその風情

そこで支えてあげたいと思ったあなたは立派な染贔屓

染五郎さんが手にされていたお扇子ですが
初日だけ?は墨絵でしたが(舞台写真で確認出来ます)
2日目から?は黄色い可愛い菜の花柄に
お考えがあっての事でしょう この方がお似合いです

舞台写真はレアものですね

召しませ召しませ言うてまっせ~
と鳥屋へ話を振る丁稚どん
それに促されるように 花道から団子売り夫婦が
目にも鮮やかな浅葱色の揃いの衣裳で
屋台を背負って仲良く登場~
んん?何かが違う
千穐楽界隈で拝見した時には
夫婦共々頭巾?みたいなのを被ってなかった
どうも孝太郎さんが調子を崩されて以降被らなくなったよう
舞台写真や筋書きの写真は被ってますから貴重かも
花道でひとくさりの後 本舞台へ
そこで団子(餅)を搗くのですが
これがなかなかお上手!本物みたい(笑)!
客席も湧いてました~

丁稚どんが 腹すいてしょうないから
買おておくれやすと 若旦那におねだりすると
ぜ~んぶ買うさかい皆さんに振る舞おて差し上げて
ということで振る舞い団子ならぬ手拭い撒きとなるのでした
撒き手拭い公演途中からは當たりクジまで入って
さすが若旦那大盤振る舞いです(笑)

若旦那は手拭いを撒く時も ちゃ~んと若旦那(笑)
袂を気にしつつね

だから遠くへ思いっきりなんてのはなかったような
よく飛んでも とちり 辺りかなぁ(笑)
中にはどなたか下手2階バルコニーに投げ込んでた方も
でもね~當たりが入ってるからって
一人で2つも掴んじゃいけません
そこのおばさま!!!

皆さんを太夫元さんに紹介なさったら?
という茶屋夫婦の進言で
いよいよ仁左衛門さんの出番!
待ってましたと言わんばかりの大向うと拍手に迎えられ
芝居小屋奥(舞台奥)から 目がなくなるほど
ニコニコの太夫元さん登場 笑顔が可愛いのなんの!
見てるだけでこちらも顔がほころびます

仁左衛門さんの
~これほどの沢山のお客様を前に
お芝居が出来る事とても嬉しく思いますと
関西歌舞伎の不遇時代のお話
澤村藤十郎さんのご尽力
当時の松○労組の方々にご協力頂いた事など
“今日来て下さってるお客さんは
皆さん ええ~ひとばっかりで~”とご挨拶され
翫雀さん 孝太郎さん 染五郎さん 愛之助さん
・・・と順に口上に入るわけですが
染五郎さん
“中座の頃から出させて頂いております
30周年というこのような記念すべき公演に
出させて頂くこと有り難いことと存じます
こののちも関西での歌舞伎が隆盛でありますように
またその折りは
(ここまでは普通の口調でここからいきなり口上口調に(笑))
“市川染五郎をよろしくお願い申し上げまする~””
ときちんとしつつ笑いもとりつつ〆ておいででした
自分のピーアールで笑いをとる事狙ってましたね(笑)
茶目っ気たっぷり口調でした

ひと月通したこのご挨拶もさすが千穐楽には
ピーアール部分は自ら省かれておりました 真面目ね~

不遇時代を経験されている竹三郎さんの
思い入れのあるご挨拶にもジ~ン
左團次さんの
“歌舞伎座が無くなりお仕事が無く非常に困っております
1年中では皆様にご迷惑になるので
せめて半分は興行が打てるように”とのご挨拶は
次なる〆言葉を述べる仁左衛門さんへのネタふり(笑)
それを受けての仁左衛門さん
“無くなったというのは響きが悪うて好きと違います
建替え中の最中でございまして
(左團次さんを差し)この方は東京の役者さんなので
半分とか呑気な事言うてはりますが
半年と言わず1日でも多く歌舞伎がかかりますよう
そして関西歌舞伎の隆盛 歌舞伎の末永い繁栄を願って
皆様と一緒に手締めをしたいと思います”と
拍手喝采でありました
ああ~これ(仁左衛門さん部分)全部京都大阪言葉混じり
イントネーションで読んで下さいね(笑)
ほとんど素のおしゃべりになってましたから(笑)
それを聞く客席も思わずクスクス でもなんとも微笑ましくて
仁左衛門さんのお人柄でしょう
手締めは「大阪〆」と呼ばれる独特の作法





祝ぉうて三度



もうこの一節は仁左衛門さんの声でしか
リフレインしなくなってます(笑)
役者さん観客がひとつとなって
芝居前は幕を閉じるのでありました
20分弱ではありましたが
舞台上にも役者さんにも客席にもご見物にも
とってもいい空間



最後の仁左衛門さんのお話で手締めに入る前に
初日に続き千穐楽にも
(舞台中央セリにて)澤村藤十郎さんがお顔をみせられ
そのお姿を 言葉を ひとつひとつ噛みしめる
仁左衛門さんと竹三郎さんの姿
藤十郎さんに寄り添い支えてらっしゃる
國矢さんの目が涙に滲んで真っ赤になっているのを拝見し
このひと月 ご活躍頂いた役者さんの姿を重ね
この会が30年続いている事に対する感謝も込み上げ
思わず胸が詰まり涙が

客席にはひと月の間何度となく足を運ばれた方も多く
そんな思いが一層強く劇場中に満ちていたように思います
藤十郎丈には松竹株式会社から感謝状が贈られました
お話はちょっと変わりますが
おもしろかったのは これほど観客の視線が
舞台と花道を交錯する芝居はないかなと
皆さん各ご贔屓の方向へ釘付けですから(笑)
たとえば 口上の時はまだしも
他の方が花道で登場されても
舞台上の若旦那!(が気になる)
下手でお話されていても上手の若旦那!(が気になる)
一応他の方をチラ見し申し訳ないと思いつつも
やっぱり若旦那~!!!

若旦那の箇所をご贔屓の役名に変えて頂ければ
皆さんきっと該当しますよね
えっあっ?私だけ?すみませ~ん

全体を観るのは3階からって事でお許し下さいまし役者の皆様方~
そうそう若旦那が買占め
大盤振る舞いして下さったお団子(手拭い)
ご相伴に預かりました お食事券はなかったけれど
この夏のご褒美


だらだらと夏休みの宿題を持ち越し
ここでやっと秋の気配を感じる準備に入れる
そんな気分の今日この頃
このような駄文に長々お付き合い下さった皆様
ありがとうございました
松竹座・夏芝居 完
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→ 握った拳 通じ合う瞬間
松竹座・夏芝居回顧・其の2はコチラ
→ はなみず・泣きべそ・よばあたれ
→ そうだったの?ちょっと番外篇
松竹座・夏芝居回顧・其の3はコチラ
→ 握ったその手①
→ 握ったその手②