写真は外来種のネズミ、「マスクラット」。本年5月12日、東京都葛飾区水元公園で水路を泳いでいるのを見つけて撮影した。戦前、この毛皮を搭乗員のマフラーにするため北米から輸入したものが野生化した。食害を起こすため、環境省の特定外来生物(つまり悪者)に指定されている。

 

 

 

 

いつまでたってもはっきりしない伯父の戦死地と戦没日時。やむなく時々、中間報告として取りまとめている。2017年にテニアン島に供養にいったときは、テニアンだとばかり信じていたのだが、今はそれもはっきりしない。

 

先述のように戦死地の可能性があると思っているのはテニアン島、サイパン島、海没のいずれか。伯父の戸籍には「マリヤナ」で戦死とあり、最初に見たときには随分あやふやな話だと感じたのだが、今や自分が考えているのに一番近い。

 

 

最初のうちテニアンだと考えていたのは、祖父母や両親にそう聞かされていたのと、県庁から取り寄せた陸軍の軍歴証明書にも「六月九日テニアン島に上陸、九月三十日同島に於て戦死」(原文カタカナ)と明記してあったから、そりゃ信じるわな。

 

さらにアジ歴の検索結果(c12122496300)として、次のPDF資料の47/57頁には、歩兵第百十八連隊(静岡編成の郷土部隊)のうち、伯父の第三大隊のみ「テニヤン島に上陸す」と書いてある。伯父の所属が第三大隊の第九中隊であったと、彼の軍歴証明書に記載がある。

 

 

 

 

これら公式書類を頭から信じるのは危ないと思い始めたのは、戦死日が共通して昭和十九年(1944年)9月30日になっていることで、前述のようにこれはグアムとテニアンの「玉砕発表」が大本営から出された日付。10月1日付の各朝刊に載っている。

 

テニアンの戦いは、同年8月2日から3日にかけての最後の夜襲をもって日本軍の組織的抵抗が終わったと、戦史叢書ほか各戦史に記されている。要するに行方不明者については、戸籍や軍歴証明書は大本営発表に従っただけで、実情は全く不明である。

 

 

これまでのところ、幾つかの史料において、歩一一八の兵隊がサイパンの戦いに参戦していたのを見つけている(その概略は次回に記す)。他方で、テニアンの戦いに関連して、同連隊の名を資料にみたのは三度しかない。どうしたことか。

 

その三件とは上記のアジ歴の記録が一つ目。次に、たまたまネットで見かけた出所不明のテニアン島配置一覧に載っていたのだが、だいたい海没で連隊ごと殆ど戦闘不能状態に置かれながら、第三大隊の輸送船だけがテニアンに向かうだろうか。上記のとおり6月9日テニアンに上陸とあるが、他の船は同日にサイパンに着いている。

 

 

これらの資料は当初の(海難の前に作られた)配置計画ではなかろうか。いずれも戦闘の記録はない。あと一つは後の回で参照する。テニアンの他部隊(長野の歩兵第五十連隊)の記録に、伯父の大隊名が一か所だけ出てくる。ややこしい。

 

 

 

戦史叢書(6)に出て来る伯父の連隊の関連記録も、すべて「サイパンの作戦」という章にある。まずは上記の海没の件で、輸送船三隻が敵潜に沈められ、連隊長伊藤豪大佐、第二大隊長林信夫大尉が戦死。

 

第一大隊長山崎利夫少佐と第三大隊長大塚文吉少佐は救助され、前掲「烈日サイパン島」によると、先任だったのか大塚第三隊長が連隊長代理として指揮をとることになった。このあと戦史叢書では散発的に、戦闘経過の叙述の中に出てくる。

 

 

まず6月15日に始まる敵上陸に備え、第一大隊が戦車第九連隊の第五中隊とともに、チャランカノアの内陸にあるヒナシス山付近に派遣され、第二戦陣地に置かれた。斎藤師団長の司令部がその後方にある。

 

不思議なのは、大隊長が連隊長代理になった第三大隊の戦闘経過が出てこない。連隊長の後任は赴任していないはずだ。のちにこの連隊はサイパンで連隊旗を奉焼しており、それならば第三大隊長はテニアンに渡らず、サイパンで軍旗とともに守備についたはずなのだが、この点は実情不明のまま。

 

 

このあと同連隊は、アメリカ軍が「死の谷」と名付けた戦場、次にタッポーチョ山の攻防、そして最後の突撃の結果、捕虜となった将兵の所属先として、その名が三か所に記録されている。散々な門出であったが、何とか最後まで頑張ったらしい。

 

次回は「烈日サイパン島」およびアジ歴に僅かに残っている同連隊の兵隊の記録を書き残しておく。いずれもサイパンの戦いに参加した人たちの証言記録で、テニアン島での履歴はない。かといって公文書を無視することもできずにいる。

 

 

(つづく)

 

 

 

  

 

シロツメクサとアカツメクサ  (2024年5月14日撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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