ジョウビタキ ♂

 

 

前回の航空戦力の状況に続いて、今回は海上戦力の概況を再び戦史叢書(12)で確かめよう。大きく二つのグループに分けて書かれており、片方が軍艦を主力とする艦隊。もう一つが「先遣部隊」という役割を担う潜水艦部隊の「第六艦隊」。

 

後者が簡略なので先に取り上げる。以前、潜水艦関係者の意見具申として、分散配置せず、集団で活用すべきであるという現場の声を聞いた。それが届いていない。個別にマーシャル、アドミラルティ、ニューギニア、マリアナ、トラック、内地。

 

 

マーシャルに配置された先遣部隊は、「あ」号作戦の本文によると、航空部隊とともに敵状偵察を任じる。敵軍のレーダーは格段に進歩しており、5月下旬から6月上旬の間に、米軍資料によると日本海軍の潜水艦6隻が、護衛駆逐艦「イングランド」ただ一隻により全部撃沈された。

 

潜水艦の最期は、その性格上、資料も残らず、目撃者もいないだろう。随所に「未帰還」、「消息不明」の文言を見る。また、特に南西方面の潜水艦はすべて失われ、連合艦隊は電令作第一二号により、ブカおよびブーゲンビルへの輸送を打ち切った。

 

 

それでは今回後半、連合艦隊主力のマリアナ沖海戦直前の概要を戦史叢書(12)の第522頁に見る。旗艦「大淀」は柱島に在泊。戦闘部隊は大きく二手に分かれており、一方はタウイタウイに集結中で、他方は渾作戦に従事していた。

 

加えて、一部は比国中部にある給油地のギマラスに待機中。補給部隊は第一がダバオに、第二がギマラスに待機していた。補給部隊とは、輸送船団およびその護衛役の駆逐艦。

 

 

タウイタウイと渾部隊は、第一機動艦隊の両主力、第二艦隊と弾三艦隊からなる。戦艦、巡洋艦、駆逐艦などからなる第二艦隊には、この時点で六つの戦隊があった。①第一戦隊、②第三戦隊、③第四戦隊、④第五戦隊、⑤第七戦隊、⑥第二水雷戦隊(ほか駆逐艦隊)。

 

このうち、渾作戦に出陣中だったのは、①第一戦隊のうち「大和」「武蔵」および④第五戦隊の「妙高」「羽黒」そして⑥二水戦の一部。前述のとおりで、間もなく渾作戦が中止され、これらは6月12日にバチャンに転進した。

 

 

上記以外がタウイタウイに在泊中で、まず①第一戦隊「長門」。②第三船隊「金剛」「榛名」。③第四戦隊「愛宕」「高雄」「摩耶」「鳥海」。⑤第七戦隊「熊野」「鈴谷」「利根」「筑摩」。6月14日にギマラスに進出する。

 

「あ」号作戦すなわちマリアナ沖海戦の主力となった第三艦隊は、⑧一航戦、⑨二航戦、⑩三航戦、⑪第十戦隊からなる。⑧第一航空戦隊は「大鳳」「翔鶴」「瑞鶴」。⑨第二航空戦隊は「隼鷹」「飛鷹」「龍鳳」。⑩第三航空戦隊は「千代田」「千歳」「瑞鳳」。

 

 

⑪第十戦隊は軽巡洋艦「矢矧」および護衛が主任務の駆逐艦群。同戦隊の駆逐艦は、このころタウイタウイと渾部隊に分かれている。なお、これまで駆逐艦の遭難が相次いだと書いてきたのもこの第十戦隊で、この時すでに「舞風」「秋雲」「谷風」を喪っていた。

 

以下、既出の情報と若干重複するが、6月11日に米軍がサイパンに敵機動部隊が到来したのをみて、マリアナ攻略間違いなしと判断したのに対し、大本営軍令部は、攻略の有無につき判断を下しかねていた。

 

 

 

コゲラ アカゲラ

 

 

それぞれの判断根拠や事情などが書かれている。「大淀」の連合艦隊司令部では、例の中島親孝情報参謀が、敵はマリアナに来ると主張してきた。彼の論拠は本人の回想によると次のとおり。

 

ビアク来攻時、マッカーサーの部隊とニミッツの部隊と通信上全然関連がないので、近くニミッツによる攻略作戦がカロリン諸島より北方にておこなわれるであろうと判断していた。

 

 

暗号が解読できなくとも、通信の行き来が全く無いとなれば、連携はないだろうと見た。当初、中島参謀の意見は司令部に取り上げられなかったが、6月11日の時点で長井作戦参謀が同意し、軍令部との電話連絡を頻繁に行い始めた由。

 

その軍令部は、当時の山本親雄第一課長の回想によると、「軍令部は単なる機動空襲との判断が強く、燃料の関係から慎重に対処すべきであると考えていた」。13日に聯合艦隊が決戦用意を発令しても、なお懐疑的であったと述べている。この間、タウイタウイの艦隊は足止めを食らっていた。

 

 

 

(おわり)

 

 

 

 

カワセミの背中  (2023年12月13日撮影)

 

 

 

 

谷中霊園の木瓜 2月18日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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