国分寺崖線の清流

 

 

今回より、方面はビスマルク諸島、時期は昭和十八年(1943年)の9月ごろから、翌年3月ごろまでです。まずはグーグル・マップで、位置や主要な地名を確認します。真ん中辺りの赤いピンが立っている場所がラバウルです。

 

最大の島がニューブリテン島で、北端にラバウルがあります。すぐそばにココポ。島の西方にダンピール海峡を挟んで、ニューギニア島のフィンシュハーフェンやラエが見えます。このニューブリテン島の南部にも連合軍が上陸してきます。

 

 

 

 

北隣りの細長い島が、ニューアイルランド島。北端に日本海軍が基地を置いたカビエンがあります。南端はセントジョージ岬です。両島の南東にソロモン諸島があり、地図ではブーゲンビル島が見えます。比べると、ニューブリテン島はかなり大きい。

 

もう一つ、地図の左上にロレンガウという都市名だけが見える島がマヌス島。戦後、今村均司令官が自ら入獄したところです。周辺の小島と併せて、アドミラルティー諸島といいます。ここも重要な戦場となります。

 

 

PNGの国旗

 

 

今回はビスマルク諸島の初回ですので、ラバウル関連の変化球で始めます。先の大戦のフィルム(写真も動画も)は、残念ながら太平洋では勝ったほうのものが、ずっと数多く私の目に付きます。きちんと探せば、在るところには在るはずですが。

 

兵器や戦闘場面のフィルムが多いのは当然ですが、私が興味を持っているのは、軍人や軍属がどういう顔付きや服装をしていて、どんなふうに働いていたのかといったあたり。なかなか撮影されない下働きの人たちの姿。

 

 

ニューギニアには、日本赤十字が派遣した日本人女性の看護婦がいました。途中で本国に還したそうで、複数の資料をみましたが、写真がありません。船員も整備員もなかなかお目にかかれません。

 

この点、動画サイトで軍歌を選ぶと、背景の映像に当時のフィルムがよく使われていますから、例えば作業着姿で離陸する航空機に帽子を振っているのは、きっと整備員たちだろうと思いつつ眺めています。先年、国内便に乗ったときも、整備等の地上勤務のみなさんが後ろで帽子を振っていたのが見えました。

 

 

先日は軍歌鑑賞中にイアフォンを付け忘れ、帰ってきた家人が、「うちが右翼の家になっている」と叫んでおりました。最近はたまに街宣車で聴くくらいですか。昔はパチンコ屋でも遊就館でもガンガン流しておりました。

 

 

 

 

さて、これまでも歌詞の一部をときどき使ってきた「ラバウル小唄」ですが、ネットで検索すると、ジャンルは軍歌と書かれていることが少なくない。しかし、あの歌詞と曲調は、軍歌と呼ぶべきものか。

 

だいたい曲名に「小唄」とあるではないか。私の学生時代の持ち歌だった「お座敷小唄」と風情がよく似ています(当時すでにカラオケはありましたが個室はなく、飲み会の席上で総員、個々に歌わされます)。小唄は男と女の小粋な世界です。

 

 

確かにラバウルが日本の統治下にあったのは、太平洋戦争の期間のみで、南洋では重要な軍事拠点の一つでした。でも帝国軍人だけ居た訳ではない。豪州の統治下時代からチャイナ・タウンがありましたし、本邦の民間人も出入りし、娼館もございます。

 

歌詞の設定でいうと、これを歌っている者は性別が男、職業は「船乗り」です。海軍軍人の可能性はありますが、「また来るまでは」、「しばし別れの涙」とありますから、この人物は輸送船や漁船などの船員ではなかろうか。海軍の出陣や本土への異動ではなさそうな雰囲気です。

 

 

「ラバウル小唄」には、昭和十五年(1940年)に世に出た「南洋航路」という元歌があるそうです。大東亜戦争の開戦前年です。そして南洋航路という言葉遣いは、客船を彷彿させます。あるいは遠洋漁業か。

 

後にこのラバウルから帰還兵を載せて日本に向かうことになる「氷川丸」は、徴用される前は本邦とシアトルを往復する北米航路の大型客船でした。戦時中は、ラバウルに病院船として何度か来航しています。最後は引揚船になった。

 

 

伯父の戦死地テニアン島には、沖縄出身の民間人が数多く移植していて、サトウキビづくりが上手いのだろうと思っていたのですが、証言の中に、かつてマリアナ諸島へは沖縄から盛んに漁業で出かけていて、身近に感じる島々だったとありました。

 

椰子の葉陰に十字星。多くの回想録に出てくる決まり文句も、ちゃんと歌詞に入っています。ビスマルク諸島は大戦当時、日本陸軍の方面でいうとソロモン諸島と同じ第十七軍の担当でしたが、今はパプアニューギニア国の国土です。国旗に十字星あり。

 

 

 

 

 

 

 

(おわり)

 

 

 

ホシゴイ  (2022年8月24日撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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