途中、映画館のスタッフと思しき人の見回りがあった。
全員あわててぱっと前を向き、私はめくれあがったスカートをずり下ろす。

どう見たって私たちの周りだけぎゅうぎゅうに満席なのはおかしいのに、スタッフはちらっと目をやるだけで帰っていく。

「行った?」
「行った、行った」
「参加できないやつが嫉妬してスタッフに言いつけるんだよな」

修学旅行の夜の見回りみたいにひそひそと囁き交わす男たちに、なんだかクスリと笑ってしまう。
一気に謎の連帯感が湧き起こる。

「もうそれ、脱いじゃいなよ」

伊達さんが私の脚に絡まる下着とストッキングを取ろうとするけど、ロングブーツが見えてないみたい。

「これ、脱ぐの大変なんだよ」

狭い座席の隙間にかがみ込んで苦労していると、数人がライトで私の足元を照らしてくれる。
どうにかすぽんとブーツを脱いだ。
まだ絡まるストッキングと下着をまとわり付かせたまま、片脚を高く上げる。
前の座席の背中から飛び出すように足をもたげて、猫でもじゃらすみたいにぷるぷると振ってみる。


「……」

男たちはじいっと私の脚を見つめて、目の玉がつま先を追ってきょときょとと左右に揺れる。

「…。誰か、脱がせてくれると思ったんだけど。」

不満そうに言ったら、さざなみのように静かに周囲に笑いが広がった。