あっちこっちを知らない男たちの手で好きにされて、もっと興奮するかと思ったのに、やっぱり想像したほど感情の動きは無かった。
無茶苦茶にされることはない。むしろおっかなびっくり触られている。
動きが強いときは、そっと男の手の甲を押さえて「ちょっと痛い」と言えば、「あっ、すみません…」と申し訳なさそうに謝られた。

そうか、私は男たちに好きにされる獲物ではないんだな。
むしろ、私が主役なんだ。

感じているのかいないのか、ちらちらと男たちは私の顔色をうかがう。
こちらは両脚を投げ出して、夏目漱石のプロフィール画みたいに肘をついてぼんやりと自分の体を這う手を眺めている。
スクリーンでは花芸といって、女性器を使って芸をする女たちのシーン。あそこで綱引きすることのどこにエロスがあるのかな。
あぶれた誰かが私の服を引っ張って上を脱がせようとするのだけど、タイトなワンピースなのでうまくいかない。背中のジッパーを探す手もある。
女の服を脱がせた経験値の少ない男性たちにはきっと、サイドジッパーの存在は分からないんだろう。

このひとたちがあと残りの人生で触れる女の中で、私がいちばんいい女なんじゃないだろうか。
もう何か、今日みたいな幸運でもなければ、このひとたちは女に触れることはないんじゃないだろうか。
片手を私の腿に乗せて、もう片方の手で自分の股間を弄っている左の男性に目をやる。
伊達さんからは見えない角度でそっちに手を伸ばし、彼が自分で握っていたものを取った。
勃起しているのに驚くほど柔らかくて小さい。


「ああ、ありがとうございます」

感極まったように呟かれた。

なるほど。
私の考えていたシナリオとはどうやら違うみたい。

まあ、それならそれで、方向転換すれば良いか。