腰を落ち着ける前に、ロウさんはカウンターの中にいる店主らしき男性に声をかけた。

恰幅の良いガタイを作務衣に包んだ、なんだか1人だけ和風の男は、ロウさんに気がつくとすぐにこちらに向き直った。


どうやら知り合いらしかった。

ロウさんの界隈での顔の広さは驚くばかりだ。どこに行っても店主と古い付き合いがある。


少し上体を傾けてカウンターの中の店主と話すロウさんの姿を眺めた。

日本人離れした長身はやたらに手足が長い。

身長で男を選ぶつもりは無いけど、近頃背の高い男ばかりと関係するせいか、やはりすらりとした姿は飛び抜けて格好良く見えるのだった。



「今日は好きに飲めばいい」


「えっ、お酒飲んでもいいの?」


囁かれたのを聞き返したのが野暮だった。

注文を取りに来た女の子が、


「縄床を使われる方はノンアルコールでお願いします」


とたどたどしい口調で告げる。


せっかくだけど、バレちゃったら仕方ない、ウーロン茶にしておいた。