遅くなってしまったけど、ようやくロウさんの話をしよう。
念願叶って、また彼を誘い出すことに成功した。
この日はいつもの歌舞伎町じゃなくて、別場所に新しく出来た大箱のSMバーに行こうとロウさんが提案してくれていた。
曰く、
「ああいう大箱はすぐに潰れてしまうから、営業しているうちに見に行こう」
とのこと。
界隈きっての大箱ということで、もともと噂はよく耳にしていた。
いつか行こうと思っていたけど、私の行動範囲の圏内を外れるので後回しにしていたのだった。ロウさんがエスコートしてくれるなら心強い。
当日は夕方に待ち合わせた。
指定された駅の指定されたカフェに向かう。全て一人で決めてくれるところがいい。
ロウさんは渋滞で10分遅刻との連絡が来た。
カフェに入って、あたたかいハニーカフェオレを注文し、ふうふう冷ましていると連絡。
「店前に車を横付けしたので、適当に出てきてもらっていいですか」
ロウさんはメッセージでは敬語のことが多い。
思っていたより早く着いたな。
ほとんど飲まなかったカフェオレに胸の中で謝って、すぐに席を立った。
ほんとにカフェの真ん前に横付けされていた車の運転席を覗き込むと、ひらりと手を振ってくれたので乗り込む。
車でのデートはあんまり経験がないから、こういうのはけっこう嬉しい。
ロウさんは今日は休みだったんだろうか。少しいつもよりおしゃれしてきてくれた気がする。
アースカラーで切り替えた暖かそうなフーディー。アクセルペダルを踏む長い脚はゆるめのレザーパンツに包まれていて、マットな光を反射していた。