実際、ヒント無しでも経験値と想像力で謎解きはどんどん進んだ。

謎解き慣れしてしまっているので、たいていの問題は傾向が予想できてしまう。

これが今、東京で遊べる謎解きゲームの中で最高難易度らしいのだが、S氏は舌を巻くスピードで進んでいくから、私はついていくのに必死になった。


間に合わなければそれはそれで、次回に持ち越せるからいいかと思っていた期待はどうやら叶わなさそうだった。





そもそもが今回のゲームは街おこしのために作られたものなので、やっぱり現地に行かなければならない謎もいくつかあって、食事を終えるとそれらをかたっぱしから潰していくことにした。


先に進むS氏の背中をこっそりと動画に撮りながら着いていく。

今日はゆったりしたシルエットのカットソーとパンツだ。スニーカーはニューバランスだと思ったから合わせてきた。

髪が風になぶられるので、荷物を私に持たせたら手首につけたゴムで結ぶ。そんな仕草を後ろからいちいち見ているのが面白かった。






ハイペースで進んだ序盤の謎から後半に入って一気に難易度が上がり、どうしてもつじつまの合わない最後の1問に手こずっていた。気づけばタイムアップまで残りあと10分だ。


「とりあえずカジノに向かいながら解こう」


提携先のホテルのロビーで解いていた最後の謎に制限時間が迫り、さっぱり手がかりがないまま歩き始める。

もう間に合わないだろうけど、最後の1問のためにS氏はまた会ってくれるだろうか

1人で行ってきて、と言われそうな気もする。


謎解きはS氏に任せて、私にとってはもっと重要な問題について考えこんでいると、冊子とにらめっこしながら歩いていたS氏が「はっ」と声を上げて立ち止まった。


「これ、そうや。ここに当てはめて

「ちょ、危ないからとりあえず隅っこに行こう」


道路の真ん中に立ち止まったS氏を引いて、安全な場所で改めて問題を開く。

行き詰まっていた1問をS氏のひらめきで解き、するとそれで最後だったはずが、そこから怒涛のリスタート。

1ページ目に戻ってもう1周の謎解きが始まった。

残り10分を切って、歩きながら恐ろしい回転の速さでS氏が進む。

すべて解き終えてカジノに到着したのはタイムアップの3分前だった。