「?!痛ったい!まだやるのっ?」




けっこうな深夜なのだ。

もう寝るって言ってたやんか。


振り返ることも出来ずにS氏の様子は知れないけれど、なんかスイッチ、入っちゃってる。


仰向けで太腿を打たれるよりは、うつ伏せのお尻を打たれる方が心理的には耐えやすい。

それでもどうやらS氏は手加減とかは忘れたらしく、思いきり打ち下ろしてくる。

皮膚の痛みを感じると同時に、最初から肉に深く響く。

大声を上げないと我慢できない。


たぶん狙いを定めずに、肩から大きく振り下ろしている。ピッチも早い。

たまに的を外してベッドを打つ。自分の身体すれすれの場所でシーツに当たる鞭を感じるのは怖い。ビクッとする。S氏はあはは、と笑っている。

射的でもしているみたいに、当たった、当たらない、で本当に声を出して笑っているのだ。

窓の外の線路を走る貨物列車の音が聞こえる。たぶん窓が開いている。

S氏とホテルに入ると窓が開いていることが多い。もしかして、わざわざ開けているんだろうか。

自分のあげる、大きな悲鳴が通報されないか、痛みに耐える頭の片隅で心配になった。





「これで最後な」 

「怖い!」


笑いを含んだままで言われて、全身を硬くする。思いっきり振りかぶって打ち下ろされただろう鞭の先端が、バスッ!と妙にくぐもった重たい音でシーツを殴った。


「くっそぉ


渾身の一発を外して心底悔しそうに、可笑しそうにS氏が笑う。バスッ、バスッと続けて左右のシーツを交互に試し打つ。

その一撃が当たらなくて本当に良かったと全身の緊張を解くと、


「もう一回。」


さっきので最後って言ったやん!と反論する暇もなく、今度は見事に当てられて大きく叫ぶ。




ベッドから降りながら、S氏が片手で尻をぎゅっと鷲掴んだ。


「弱い肌やなぁ。治るまで2週間くらいか。

これやったらレイジさんの撮影会でも残ってるやろ」