新しい「アジア・太平洋の世紀」、いよいよ、その幕開けです。
日本とアメリカがリードして、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった価値を共有する国々と共に、このアジア・太平洋に、自由と繁栄の海を築き上げる。TPP協定について、昨日、大筋合意に至りました。
かつてない規模の人口8億人、世界経済の4割近くを占める広大な経済圏が生まれます。そして、その中心に日本が参加する。TPPは正に「国家百年の計」であります。
TPPは私たちの生活を豊かにしてくれます。
それは、貿易に国境がなくなり、世界のバラエティーあふれる商品を安く手に入れることができるというだけではありません。
海賊版、偽物の商品を買わされて後悔する。そのようなことは、なくなっていきます。海外に旅行をしたときの電話代も安くなるかもしれません。サイバーの世界を飛び交う皆さんの個人情報もしっかりと守られるようになります。
TPPのメリットは、単に関税をなくすだけにとどまりません。安かろう、悪かろうは認めない。サービスから知的財産に至るまで、幅広い分野で品質の高さが正しく評価される、公正なルールを共有し、持続可能な経済圏をつくり上げる野心的な取組であります。
TPPは、私たちにチャンスをもたらします。
その主役はきらりと光る技を持つ中小・小規模事業者の皆さん。そして個性あふれる、ふるさと名物を持つ地方の皆さんであります。
10%近い眼鏡フレームの関税がゼロになる。福井の鯖江ブランドをもっと世界に広げていく絶好の機会であります。
日本茶にかかる20%もの関税がゼロになる。静岡や鹿児島が世界有数の茶所と呼ばれる日も近いかもしれません。
国によっては30%を超える陶磁器への関税がゼロになる。岐阜の美濃焼や佐賀の有田焼、伊万里焼。日本が誇る伝統の陶磁器は、海外の人たちを魅了するに違いありません。
意欲あふれる地方の皆さん、若者の皆さんには、是非TPPという世界の舞台でこのチャンスを最大限いかしてほしいと思います。
海外の成長著しいマーケットへと果敢に飛び込む。そうした皆さんには投資を守る新たなルールができます。
TPP参加国への投資であれば、その国の政府から技術移転を行ってほしいといった不当な要求が行われることは今後一切なくなります。粘り強く交渉を行った結果、我が国の主張が協定に盛り込まれました。
攻めるべきは攻め、守るべきは守る。TPP交渉に臨んで、私は繰り返しこのように述べてまいりました。
世界に誇るべき我が国の国民皆保険制度は今後も堅持いたします。食の安全・安心にかかる基準もしっかりと守られます。正当な規制を行うに当たって我が国の主権は全く損なわれることはありません。投資家と国との紛争処理、いわゆるISDSに関して、そのことを確認する規定を盛り込みました。
自由民主党がTPP交渉参加に先立って掲げた国民の皆様とのお約束はしっかりと守ることができた。そのことは明確に申し上げたいと思います。
中でも、聖域なき関税撤廃は認めることができない。これが交渉参加の大前提であります。
特に、米や麦、さとうきび、てんさい、牛肉・豚肉、そして乳製品。日本の農業を長らく支えてきたこれらの重要品目については最後の最後までぎりぎりの交渉を続けました。
その結果、これらについて、関税撤廃の例外をしっかりと確保することができました。これらの農産品の輸入が万一急に増えた場合には、緊急的に輸入を制限することができる新しいセーフガード措置を更に設けることも認められました。
日本が交渉を積極的にリードすることで、厳しい交渉の中で国益にかなう最善の結果を得ることができた。私はそう考えています。
それでも、TPPに入ると農業を続けていけなくなるのではないか。大変な不安を感じておられる方々がたくさんいらっしゃることを私はよく承知をしております。
美しい田園風景、伝統あるふるさと、助け合いの農村文化、日本が誇るこうした国柄をこれからもしっかりと守っていく。その決意は今後も全く揺らぐことはありません。
私が先頭に立って取り組んでまいります。全ての大臣をメンバーとする「TPP総合対策本部」を設置します。政府全体で責任を持って、できる限りの総合的な対策を実施してまいります。甘利大臣が帰国し、報告を受けた後、具体的な指示を出すこととしています。
新たに輸入枠を設定することとなる米についても、必要な措置を講じることで、市場に流通する米の総量は増やさないようにするなど、農家の皆さんの不安な気持ちに寄り添いながら、生産者が安心して再生産に取り組むことができるように、万全の対策を実施していく考えであります。
農業こそ国の基であります。しかし、戦後、1,600万人を超えていた農業人口は現在200万人。この70年で8分の1まで減り、平均年齢は66歳を超えました。
TPPをピンチではなく、むしろチャンスにしていかなければならない。若者が自らの情熱で新たな地平線を切り開いていくことができる農業へと変えていく起爆剤としなければなりません。
TPPでは、多くの国で、農作物にかけられていた関税がなくなります。
北海道のメロン、大分の梨、日本にはほかにはないような甘くてジューシーな果物がたくさんあります。新潟にはコシヒカリ、宮城にはひとめぼれ、青森にはつがるロマン。日本が誇るおいしいお米にも、世界のマーケットという大きなチャンスが広がります。
アメリカでは最近、とりわけ流行に敏感なニューヨーカーたちの間で霜降りの「wagyu beef」が人気を集めています。
しかし、26%もの関税がかかり、価格がどうしても高くなる。大きな壁として立ちはだかってきました。
この壁がTPPによって取り払われます。最大で現在の輸出実績の40倍まで関税がゼロとなります。そして、将来的には全ての制限が取り払われます。米国の皆さんに日本のおいしい和牛をもっと知ってもらい、もっと食べてもらう大きなきっかけとなる。私はそう確信しています。
政府としてTPPにチャンスを見出し、世界のマーケットに挑戦しようとする皆さんを全力で応援したいと考えています。
この20年近く、日本経済はデフレに苦しんでまいりました。
頑張っても報われない。収入が増えない。全ては日本の隅々にまで内向きなマインドが蔓延し、私たちが新たな挑戦を恐れてきた。その結果ではないでしょうか。
少子高齢化の進展、経済のグローバル化、新興国の台頭。内外の経済情勢は絶えず変化を続けています。
改革を恐れるのはもうやめましょう。勇気を持ってチャレンジすべきです。イノベーションを起こし、そして、オープンな世界に踏み出すべきときであります。
TPPは、そのスタートにすぎません。その先には、RCEP、さらにはFTAAPと、アジアの国々と共にもっと大きな経済圏をつくり上げていく。ヨーロッパとのEPA交渉も、年内の合意を目指し、加速しなければなりません。日本はこれからもリーダーシップを発揮していく決意であります。
70年前、日本は全てを失いました。
しかし、アジアでいち早くGATTに加入し、貿易の自由化を進めました。自動車やエレクトロニクスといった新しい産業を果敢に興し、世界の競争へと打って出ました。そして、わずか20年ほどで、アメリカに次ぐ世界第2位の経済大国に上り詰めました。
先人たちの血のにじむような努力によって現在の繁栄がある。今を生きる私たちもまた、力の限りを尽くして、日本を更に成長させ、子や孫の世代へと引き渡していく大きな責任があります。
その責任を果たすため、国民の皆さんと共に、今日、ここから新たな一歩を踏み出したい。TPPへの参加について、国民の皆様の御理解と御支援をお願いする次第であります。
私からは以上であります。