Nのために 小説から抜粋②希美編 | 千の夜を越えて
きっと安藤は、この先私が手を伸ばしても届かない世界へ行くことができるんだろうな。
それは羨ましくもあり、嬉しくもある。
ぐらついた拍子に作業服の裾を掴んでしまったけれど、こうやって捕まっていれば私が一人では行けないところにまた連れて行ってくれるだろうか。
いや、ゴンドラの上だからこうやってつかまっていても何も言わないけれど、地上で寄り添えば、自分で立てと怒られるに違いない。
野バラからここに連れてきてもらえただけなのに、それでも私はこんなにも幸せな気分だ。
安藤のために私にできることは、手を離しがんばって。と見送ることなのだと思う。
誰も安藤の邪魔をしてはいけない。