北京オリンピック最終日、男子マラソンで優勝したサムエル・ワンジル 選手(ケニア)の
走りは驚異的でした。従来のオリンピック記録(2時間9分21秒:1984年ロサンゼルス五輪)
を3分近く更新する2時間6分32秒のオリンピック新記録!
ウサイン・ボルト 選手(ジャマイカ)の100m9秒69や、200m19秒30のような世界新記録では
ありませんが、ワンジル選手の2時間6分32秒は、マラソン界に衝撃を与えました。
真夏に開催されるオリンピックや世界陸上のマラソンでは、暑さのため、記録よりも勝負優先
のスローペースになるというのが”常識”でした。前半はスローペースで大集団で推移し、
途中で誰かが仕掛けて飛び出してレースが動くというものです。
しかし、今日のワンジル選手はスタートから先頭に立ち、最初の5kmを14分台という、
まるで冬のレースのようなハイペースの流れを作りました。その後も、14分台のスプリット
タイムを刻み続け、先頭集団はスピードに勝るアフリカ勢だけという展開に持ち込み、
後半、そのハイペースから一人、また一人と脱落させていき、結局終盤のスパートで
そのまま金メダルを獲得しました。終わってみれば、ワンジル選手の生み出したハイペース
に最後まで付いて来れたのは2位のシャウアド・ガリブ選手(モロッコ)だけで(2時間7分16秒)、
3位以下の選手は後半大きくペースダウンしていました。
戦略、実力ともにワンジル選手は圧倒的だったといえます。
2時間6分32秒は、記録を出させるためにペースメーカーが先導して初めて出るようなタイムです。
真夏のオリンピックで14分台のペースでレースを展開するというのは、誰も予想していなかった
でしょうし、事実、日本の尾方剛 選手(中国電力)もそのハイペースにはついていけず、自分の
ペースを守って後半追い上げましたが13位に入るのがやっとでした。
ワンジル選手はマラソンの”常識”を軽々と壊してみせました。
その点では100mで後半流しながら9秒69を出して、短距離の"常識"を壊したボルト選手も同じ
ですね。ボルト選手もワンジル選手もあっさりと”常識”を壊すさまは小気味いいものがありました。
両者ともに21歳での快挙。やはり”常識”を壊していくための要素の一つは若さなのかも知れません。
しかもワンジル選手は日本育ちですから(仙台育英高校→トヨタ自動車九州)、日本のやり方で
このような結果が出せるのかという意味でも衝撃的でしたね。
北京オリンピック閉幕。
たっぷり楽しませてもらいました。