【髪結いの亭主・第15話】鉄板プロポーズ
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「珠水さん?珠水さん、焦げてますよ。」
ぼんやりと昔の思い出に浸っていた珠水だったが、篠原の言葉に、はっと我に帰った。
鉄板を見ると、お好み焼きから焦げ臭い煙が立ち昇ってやがる。
「あっ!あ~~~!!ごめんなさいっ!私ったら、もう!」
慌ててお好み焼きを皿にとる珠水を、篠原は包み込むような笑顔で見つめた。
「意外とオッチョコチョイなとこもあるんですね。」
「あっ、あたし、基本オッチョコチョイですけど。」
「そうなんだ。すごくしっかりした女性だな、と思ってたんだけど。でも、そういう珠水さんも可愛いですよ。」
汗ばんだ額をハンカチで押さえる珠水をじっと見つめ、篠原は続けた。
「僕の周りにいる女の子は、最初から僕を頼ろうとする女の子たちばかりでした。僕の車の助手席に乗って、食事を奢ってもらい、プレゼントもねだって、家まで送ってもらう…そんなデートコースを最初っから求めてくるようなね。珠水さんみたいなタイプは初めてです。」
「あたしみたいな?どういうこと?」
「なんていうのかなあ。しっかり地に足がついてるっていうか、しっかり自分の目で前を見据えて、自分の足でしっかり歩いているっていうのかな。」
「そんな、そんな立派な人間じゃありません、私。」
照れ笑いを浮かべる珠水を見つめ、篠原はひとつ、深呼吸をした。
「珠水さん。僕、あなたとなら、この先の人生、何の不安もなく歩いていけそうな気がするんです。」
「え?」
「その…僕と、僕と結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?」
珠水は飲みかけた生ビールを噴き出しそうになるのを堪え、無理やり喉の奥へと流し込んだ。
いきなり?こんなトコで?
動揺する珠水だったが、あの夜の、ミミとの会話が脳裏をよぎった。
『大吉のこともよ、わかってる?』
オカマのミミの言葉と共に浮かんだのは、愛しいわが息子、大吉の笑顔だった。
そう、自分にはどうしても話しておかなきゃならないことがある。
それを話すまでは、プロポーズなんて、受ける資格もありゃしない。
珠水は意を決して、真直ぐに篠原を見つめた。
「篠原さん、実はあたし、あなたに話さなきゃならないことがあるんです。実は、あたしには…」
10歳になる、大吉っていう息子がいるんです…そう珠水が続けようとしたその時、聞き覚えのあるバカ笑いがふたりの間の緊張感を一気にぶち壊した。
「あーれー?!珠水?なにやってんだよ!こんなトコで」
その声を聞いた瞬間、珠水の表情は凍りついた。
振り返ると、そこには、ベロベロに酔っぱらった幸太郎が、金髪でド派手なおねえちゃんを連れて、ガハハと笑っていた。
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