音の記憶 3.低音から高音へ、山なりにゆっくりと伸びわたる。工場の鐘。平日、夕方5時。いつも同じ時間、同じボリューム。枝で休む鳥も、一斉に反応して飛び立つ。10秒あるかないか。いつしかそれが工場の業務終了の知らせだと知った。私にとっては、そろそろ家に帰るべき時間。もう5時。まだ5時。街中の人のそれぞれの5時。夜の訪れを知らせる合図。今はもう鐘の音は響かない。街に響き渡る工場の鐘の音は、共有。